シーツブランコとは
シーツブランコは、丈夫なシーツや布に子どもを寝かせ、両端を大人2人で持ち上げて揺らす遊びです。まずはやり方から確認しておきましょう。- 床に敷いたシーツに子どもを寝かせる
- 大人2人でシーツの四隅をゆっくり持ち上げる
- 子どもが怖がらないことを確認してから揺らす
- 高さや揺らし方やスピードは、子どもに応じて変える
シーツブランコの効果
シーツブランコには次のような効果があります。①シーツに包まれる感じ、揺れる感じの心地よさが子どもの喜びになる
シーツブランコでは、子どもはシーツに包まれる感じ=触覚、揺れる感じ=前庭覚を楽しむことができます。触覚や前庭覚は基礎感覚と言われ、一般的な教具やおもちゃなどがまだ楽しめない発達初期の子ども、知的な発達がゆっくりな子どもでも、感じ、理解し、楽しむことができます。
また、運動発達の障害がある子どもも、安全に、気軽に体験できます。
②前庭覚の発達を促す
前庭覚は重力や加速度、さらに揺れや回転、スピードの感覚です。前庭覚の情報は、三半規管や耳石などの耳の中のセンサーがキャッチします。そして、この前庭覚の情報に基づいて人間は、筋肉の張りを高め(筋緊張)、バランスを調整して、姿勢を一定に保ちます。
シーツブランコでは、「揺らされる」ことで繰り返し前庭覚を使ってバランスをとることになります。その結果、前庭覚を使ってバランスを調整する力が付いてきます。
③覚醒レベルを適切な状態に調整する
前庭覚は、バランスの調整以外にも身体のさまざまな活動に関わっています。一つは眼球運動です。
前庭覚は視覚と連動しており、視覚情報が入ってくるとその情報を基にして前庭覚が働いて眼球を動かす筋肉を調整します。だからこそ人は、動きながらも物を見続けられるのです。
もう一つは、覚醒レベルとの相関です。
覚醒は「目が覚めて意識がはっきりしていること」で、覚醒レベルとは「目が覚め、意識がはっきりしている度合い」です。
ざっくり言うと、覚醒レベルが低い=「まどろみ、意識がはっきりしない、眠いような状態」、覚醒レベルが高い=「少し興奮した状態」ということです。
この覚醒レベルと前庭覚には相関があります。
例えば、「電車で揺られると眠くなる」「眠いと頭を振って目を覚まそうとする」などは前庭覚と覚醒レベルの相関を示す例です。
遊園地でジェットコースターに乗ったら、強い前庭覚の刺激で覚醒レベルが高くなってしまい、夜、眠れなかったということもあります。
このように前庭覚は覚醒レベルと深い関係にあります。
発達障害の特性のある子の場合、覚醒レベルを適切な状態に調整する必要があることがあります。その点、シーツブランコでは、前庭覚を刺激して子どもの覚醒レベルに働きかけることで、覚醒レベルを適切な状態に調整することができます。
④状況やことばの理解を促す
「いくよ~」や「3.2.1~」や「せーの」の後にシーツが揺れる、「おしまいだよ~」のあと「3.2.1~」「おしま~い」の後に活動が終わるなど、シーツブランコには一定の「型」があります。「型」のある活動は、発達初期の子どもでも状況やことばが理解しやすく、状況やことばの理解が促されます。
⑤要求表現を引き出す
子どもが能動的に表現する力を育てるには、子どもからの要求場面を作ることが大切です。しかし、障害の状況によっては、そもそも楽しいと思える場面が少なく、もっとやりたいという要求場面を作るのが難しいことがあります。
この点、シーツブランコの活動は、障害の程度や種類を問わず楽しむことができる遊びであり、子どもの「もっとやりたい」という思いを掻き立て、子どもからの要求表現を引き出しやすいのです。
⑥人への意識を高める
「楽しい」と感じると、子どもは、その場面を共にする人や状況を楽しい感情とセットで記憶します。シーツブランコでは子どもは毛布やシーツで包まれており、周囲からの視覚刺激も少なく、関わり手である保育士の顔や手だけが見え、保育士の声だけが聞こえます。
そのため子どもは、視覚などの他の刺激ではなく、関わる保育士の「この顔やこの声」を楽しい感情とセットで記憶することになります。
関わる保育士の顔や声が自分の心地よさ、楽しさと関係があると感じることは、子どもの、「この声好き」「この先生好き」という感覚を育てることに繋がります。
発達障害特性のある子の場合のシーツブランコの遊び方のポイント
次に発達障害特性のある子とシーツブランコで遊ぶ場合のポイントを見ていきましょう。
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