保育現場で出合った『かこ作品』
前回のコラムでかこさとし氏と保育の繋がりについて書かせていただきました。今回は俺が実際に保育現場で出合った、かこ作品についてのエピソードを綴らせていただきます!
夏のある日、クラスの子どもたちと園庭でボディペインティングで体中に絵の具を塗って遊んでいた時のこと。体に絵の具を付けるのが苦手な子どももいるので、机に紙を貼り筆で描くことができるよう準備していました。
男の子が一人、筆で紙に色を塗っています。そのうちにいつの間にか園庭の塀へ…とことこかけだして…塀に線を描きながら歩き始めました。このままどうなるかなと楽しみにして見ていた俺は、もうひとりの保育士に「(絵の具持って)一緒に着いていってみて。」とお願い。
その男の子は、一心不乱に塀に線を描きながら進んでいきました。あるところまでくると行くと「よし!」とひとこと言ったかと思うとみんなのいる方に帰ってきました。何が彼を納得させたのかはわかりませんが、最後描ききるまでしっかりと付き合った保育士さんに拍手です。
その絵の具はどろんこ絵の具で、雨に濡れると流れるのでそのうち消えるかなと思っていました。………ん?あっ!この話はあれだな!!
『だるまちゃんととらのこちゃん』
かこさとし 作・絵
福音館書店 1987年
>>本の紹介はこちら
だるまちゃんは、とらのこちゃんのお家に遊びに行きました。とらのこちゃんの家業はペンキ屋さん。ペンキ塗りに憧れただるまちゃんは、林に行き、泥を練ってオリジナルどろんこペンキを作り、お互いの体に塗った後、街中をペイントして遊んでいきます。楽しさのあまり夢中になっただるまちゃんととらのこちゃんはやりすぎてしまい…強面のひげとらどんに呼び止められます。ここから怒涛の展開が!!
「ほら!絵本みたいにどろんこ絵の具塀に塗ってる!」と興奮する俺。この絵本がかこ作品の中でもトップクラスに大好きで、保育士になってからよく読んでいました。
しかし、男の子に最後まで付き合ったステキな保育士は、その絵本を知らないという…。ならば家から持ってきて読もう!とクラスで読みました。読んでいくと後ろの見返しにこんなものが。 なるほど!俺が子どもの時にリアルタイムで発売され、一番絵本を読んでいた(読んでもらっていた)時期の絵本だから心の中にしっかり残っているのか! 32年前の母さんどうもです。良い誕生日プレゼントだなぁ♪ この絵本を知らなかった保育士さんには同書の新刊をプレゼントいたしました。
生活発表会で使われる『かこ作品』
そして! かこ作品で忘れちゃならないのが、発表会の題材です。特に『かこさとし・おはなしのほんシリーズ』は、群を抜いて繰り返し生活発表会で使用されています。「俺のまわりだけ?」と思って全国の保育士に聞いてみたところ、やはり見たことがある、もしくは使用したことがあるという返事でした。『からすのパンやさん』
かこさとし 作
偕成社 1973年
>>本の紹介はこちら
これは結構定番かな。数々のパンを工夫して子どもたちと作る準備も楽しい♪ 鳥取県には『からすのぱんやさん』のような国内外で有名なパン屋さんがあります。
『あかいありとくろいあり』
かこさとし 作
偕成社 1973年
>>本の紹介はこちら
これはあまり見たことない題材。後輩男性保育士が年長クラスの子どもたちと発表していました。協同性を協同的に発表していて上手だなって思いました。子どもたち保育士が一緒に作り上げてきた過程も見えるようでした♪
まだまだありますが。いい作品がありすぎるのでここまで。
子どもたちが『かこ作品』を喜ぶ理由
子どもたちが、かこ作品を喜ぶ理由は明快です。○起承転結がハッキリしている。
かこ氏がセツルメント運動の中で子どもたちと直に触れ合い、紙芝居やお話を最後まで見てくれるためにはどうしたらよいかを考え作られていきました。
そこが発表会でも使用される理由だと思います。絵本の出版から45年以上経った今でも色褪せることなく読み続けられている作品の数々。いつの時代も子どもの本質は変わりません。楽しいことを求めている。
子どもの幸せを願って生みだされた、かこさとし絵本を俺も読み続けていきます!
▼その他の関連記事