絵本の読み聞かせの正解とは?
絵本の読み聞かせって、感情を入れるのが正解? 淡々と読むのが正解?連載2回目にして今後、何度も出てくるであろう核心に迫る内容です。俺の考えをまとめてここへ綴ります。
俺は保育士17年目。16年以上絵本を子どもたちに読んできました。一年間の勤務日が250日、絵本2冊×保育士16年=8,000回。保育園以外でも絵本を読んでいるので、2,000回を足すと、単純計算で10,000回の読みあいを行ってきた保育士です。おそらく2冊だけってことはないのでもう少し増えるかな。「内田先生のクラスの子どもは本が好きだわ~」と同僚からよく言われます。
絵本の読みあい10,000回、その経験を通して一度として同じ読み方だったことはありません。1年間(中には持ち上がりで2年間)クラスの担任をしていて、同じ絵本を同じ俺が同じ子どもに読んだとしても、その日の体調、メンタル状況、子どものメンタル状況で届け方も受け取り方も変わります。
読み聞かせで見られる子どもの“ノリ”
現場にいると「あれ、なんか今日は子どものノリが良くないな」と感じることがあると思います。絵本を読むのにノリは要らない! と突っ込まれそうですが、ここで言いたいのはお笑い的なノリではなく、絵本を媒介にして、先生と子どもが織りなす響き合いでしょうか。こんな経験はありませんか? 子どもたちが好きだからと選んだ絵本を読み始めたところ、子どもたちはなぜか注意散漫。でも読み始めたから最後まで読みたいし、中にはこちらを向いて楽しんでいる子どももいる。絵本にも子どもたちにも申し訳ない気持ちになる。おかしいな。この前は喜んだのに…。そして、まったく逆もありますよね。何を読んでもノリのいい時が。
ここで考えたいのが「絵本の読み方」です。
絵本の授業で習ったこと
話は俺の保育学生時代に遡ります。絵本の授業でのこと。当時の先生は「絵本を読む時は淡々と読みましょう」と教えて下さいました。そして授業の中で、一人ひとりが順番に絵本を読むことに。俺は『おたまじゃくしの101ちゃん』を読みました。 『おたまじゃくしの101ちゃん』
作:かこさとし
出版社:偕成社
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ザリガニの親分は親分ぽく、お母ちゃんが死んじゃったときは悲しくなり、生き返ったら大喜び! ノリノリで読んだところ…
先生は一言だけ「それは演劇ですね。」と。
落ち込みました。俺の母さんも結構そんな感じで読んでたんだけどな。
そうか、そういうものなのか…と。
学生時代に履修したことは「絵本は淡々と読む」でした。
想定外の世界が広がっていた保育現場
そんな経験を持って保育現場へ出ていくと、そこには想定外の世界が広がっていました。母校の卒業生が多い職場で、同じ教えを受けたはずの先輩方の「絵本を感情豊かに読む」姿が多いこと多いこと。もうパニックでした。あれから16年。10,000回の経験を積んだ結果、ハッキリと言い切ることができます。
「絵本は自然に読む」ことが、いちばん子どもと絵本の時間を楽しむことができる。
「絵本は淡々と読む」こともあれば、「絵本は感情豊かに読む」こともあります。絵本の読み聞かせについて、ある演奏家は「それはライブと同じだな」と言い、ある作家は「合気道だよ合気道」と言いました。的を射たいい例えだと思います。
子どもたちとの響き合いの中で、自然とゆっくり読んだり、抑揚をつけたり、声色を変えたり、感情が入ったり、静かに淡々となったりする。それがいちばん、絵本を好きになってくれる読み方なんじゃないかと。いろいろあって良い。みんな違ってみんな良いんです。
テーマが大きいので今回はここまで。
次回は、実際に俺が感じた現場での読みあい事例を紹介したいと思います。
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