「棒を持って戦いごっこをするので怪我をしないか、人に当てないかとヒヤヒヤしています。」
最近、こんな話をよく耳にします。今流行りのアニメの真似をして、“戦いごっこ”をする子どもたちの姿に困っている保育者の皆さんです。
もちろんこれは、今に始まったことではなく、いつの時代にも見られる子どもたちの姿でしょう。時代によって、その子どもの“戦いごっこ”の仕方は変わっていくものです。
ウルトラマンのように、何かビームが出るような戦いの遊び方だと「真似をしているのね」と少し安心して見ていられますが、棒を剣などの武器に見立てて遊ぶ姿には私もハラハラします。
この“戦いごっこ”は、他の遊びを経験して、それが楽しくなってくると、止めなくても自然となくなっていくものだと私は思っていますが、保育者の皆さんにとっては悩みのタネのようです。
園によっては、棒を持って遊ぶこと自体を禁止しているところもありますが、最近では、棒で遊ぶことも子どもたちにとっては楽しいことなので、遊ばせてあげたい…というところも増えています。
けれども「危なっかしくて見ていられない…」というのが本音でしょう。
棒を持つことと戦いごっこは、別の問題なのかもしれません。
自然の中では、子どもたちの“見立て遊び”がよく見られます。自然物に想像力をかき立てられるのでしょう。子どもたちは、生活の中で体験しているものを見立てていることが多いように思います。
その一つが、戦いごっこの武器に見立てられているのでしょう。みなさんはこのことについて、どう思いますか?

子どもの中に残酷さや粗暴さが表現される時、私たち大人が今一度、自分たちの生活や社会を振り返る必要があるのではないかと思います。
世の中には、何かを悪者にして、攻撃する…というもので溢れています。その中で育つ子どもたちは「何か悪いものが存在し、悪いものは攻撃する」という行動に自然になってしまいます。
私は、子どもたちには優しさを表現して欲しいと願っています。
その優しさから、思いやりが生まれ、人の気持ちがわかる子に育ちます。人へ貢献することに喜びを感じ、人と協力することを厭わない子に育つのではないかと思います。
社会に優しさが表現される時、“戦い”は遊びの中に出てこないのではないでしょうか。優しさが溢れる場の中で、戦いが存在するでしょうか…。

『小さな木 あるがままに子育て 』
著者:野村直子(のむら・なおこ)
絵:小林マキ(こばやし・まき)
出版社:雷鳥社
発売日:2021/3/6予定
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