3要領・指針の改定から7年目の現在地
2017年(平成29年)に、いわゆる“3要領・指針”と呼ばれる、「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が改定され、翌2018年(平成30年)4月に施行されました。この改定では、3要領・指針を同時に見直すことで、それぞれ共通する部分についての整合性がより図られました。また、幼児期の終わりまでに育んでほしい資質・能力に関して、子どもたちの具体的な姿を基に示しためやすとして、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」が提示されました。
現在、これらの指針・要領を基礎として保育が行われていますが、2024年で改定から7年目を迎えました。保育現場では内容の理解が進む一方で、課題感も出てきているのではないでしょうか。また、これまでの改定スパンが10年前後ということもあり、次回の改定に向けてどのような議論がされているのかも保育者・関係者としては気になるところです。
そこで今回は、前回の改定で中心的な役割を果たした白梅学園大学名誉教授の無藤隆先生に、『保育所保育指針の現在地と今後』というテーマでお話を伺いました。
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現行の要領・指針の検討プロセス
まずは、保育所保育指針を含めた現行の3要領・指針の改定がどのように進められのたのか教えていただけますでしょうか。
はい、要領・指針の改定は、小学校の学習指導要領も同じですが、概ね10年刻みで行われています。なぜ10年かと言うと、改定後には最初に広報・解説をする段階があって、その中でいろんな角度から問題がないかチェックするんですね。幼稚園・保育園でもヒアリングをたくさんやりますが、どう急いでもこれに5年はかかるんです。今もまさにやっている最中ですが、前回の改定後はコロナ禍もあり、予定より1年ぐらいはずれてしまっています。
前回の改定では3要領・指針が同時に改定されています。こういう形になった経緯について教えてください。
初めて幼稚園教育要領と保育所保育指針が同時に改定されたのが、前々回の2008年(平成20年)から。それ以前は、幼稚園教育要領が先にできて、翌年に保育所保育指針ができるという流れでしたが、徐々に要領・指針を繋ぐということに努力をしてきました。その結果、2008年の改定時には、双方を対等の位置付けに変えて、並行して議論するようにした訳です。それはそれで良かったのですが、実際のところ幼稚園は学校教育法、保育所は児童福祉法というように、それぞれ異なった法体系の下での議論になる訳です。中には、法律的な部分で改定されない限り実現できない調整もありました。何とかしなきゃいけないという問題意識はその時からあるのですが、その根本が変わっていないので非常に難しい部分もありましたね。
ちょうどその時期に、認定こども園の制度ができました。その時に、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」を作った訳ですが、内容を幼稚園・保育園と合わせる形で進めていく過程で得た経験から、要領・指針をある程度揃えることができるという見通しが出てきたように思います。
そんな経緯もあり2017年(平成29年)は、幼稚園・保育園・認定こども園を同時に改定するために細かく調整を図ることで、ある程度相互に内容を近付けることができたかなと。いくつかの用語や組み立ての違いは残ったのですが、8割くらいは共通化できたというところでしょうか。
2017年改定の重要ポイント
2017年の要領・指針改定では、どんなところが重要ポイントだったのでしょうか?
いくつかありますが、ここまでお話しした通り、3要領・指針でかなり内容を揃えているというのは一つの特徴です。特に小学校との繋がりを強調していて、育みたい資質・能力と10の姿(幼児期の終わりまでに育ってほしい姿)で基本的に揃えている点が最大のポイントと言えるでしょう。ただし、これについてはいきなり出来た訳ではなく、それまでの改定の考え方を踏まえてより明示的に言語化した結果だと考えています。実際、2008年改定の時にもその方向性は出ていたと思いますが、幼保を揃えていくとか、小学校と足並みを揃えていく部分は弱かったのかなと。
その前々回の評価を踏まえて、2017年の改定ではどのような点が変わったのでしょうか?
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