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保育指導計画の「養護」を解説|書き方・内容・教育との違い

手をつないでいる子どもと大人の手
保育は「養護」と「教育」で成り立っています。2つの違いを頭ではわかっているつもりでも、文字にして書くと混乱してしまうことも。今回は、保育指導計画を作成する前に整理しておきたい「養護」について詳しく解説します。

「養護」の概要〜指針での位置付け

養護とは、ひとことで言うと「子どもの心身の健康を守る保育」のことです。保育所保育指針には、以下のように書かれています。
第1章 総則
2 養護に関する基本的事項
(1) 養護の理念
保育における養護とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであり、保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とするものである。
 
出典:保育所保育指針(平成29年告示)/こども家庭庁 >>詳細はこちら
養護は、子どもを保育する上でのスタートラインでもあり、土台でもあります。教育を行う上でも常に養護の意識は必要となります。

養護の2項目とは

隅に座って見つめている女の子
養護について、さらに細かく見ていきましょう。養護には、「生命の保持」と「情緒の安定」という2つの項目があります。保育所保育指針の以下の内容を見てみましょう。
第1章 総則 
2 養護に関する基本的事項
(2) 養護に関するねらい及び内容
ア 生命の保持
ねらい
①一人一人の子どもが、快適に生活できるようにする。
②一人一人の子どもが、健康で安全に過ごせるようにする。
③一人一人の子どもの生理的欲求が、十分に満たされるようにする。
④一人一人の子どもの健康増進が、積極的に図られるようにする。
 
イ 情緒の安定
ねらい
①一人一人の子どもが、安定感をもって過ごせるようにする。
②一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。
③一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。
④一人一人の子どもがくつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されるようにする。
 
出典:保育所保育指針(平成29年告示)/こども家庭庁 >>詳細はこちら
「生命の保持」とは、子どもの命を守ることだけに限らず、健康増進を図り、生理的欲求を適切に満たすことも含まれています。また「情緒の安定」とは、大人に守られ、個として尊重されることにより得られる心の安定を指します。

「生命の保持」と「情緒の安定」は子どもたちが生活していく上で欠かせない要素です。この2つが保証されて初めて、子どもは安心感をもって、保育園でさまざまな挑戦ができるようになります。

「教育」との違い

ダンベルのようなおもちゃを持った男の子を抱える保育士
養護と共に保育を構成する「教育」との違いについてはどうでしょうか。養護と教育の違いに関しては、保育所保育指針の第2章 保育の内容の序文にこう書かれています。
第2章 保育の内容
保育における「養護」とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであり、「教育」とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助である。
 
出典:保育所保育指針(平成29年告示)/こども家庭庁 >>詳細はこちら
養護とは、子どもにとっての「安心感」であり、教育とは、その安心感を土台に子どもが身につけていく「資質・能力」です。

木に例えるならば、養護は土の下に隠れた根っこで、教育は枝の部分です。枝を伸ばそうとしても、根っこが弱っていたら木は育ちません。人間も同じで、まず養護の部分を大切にしてこそ、教育が生きてくるのです。
水に浮かぶ花を指さしている男の子とそれを見る子どもたち
では、養護と教育それぞれの内容について確認してみましょう。養護の内容は「生命の保持」と「情緒の安定」の2つでしたね。教育の内容は、以下の3視点と5領域(五領域)になります。

◎教育
【乳児(3視点)】
  • 健やかに伸び伸びと育つ
  • 身近な人と気持ちが通じ合う
  • 身近なものと関わり感性が育つ
【1歳以上児(5領域)】
  • 健康
  • 人間関係
  • 環境
  • 言葉
  • 表現
3視点と5領域の観点から、子どもの生活がより豊かになるよう保育を展開していきます。「教育」といっても、小学校以降の学習を先取りする「早期教育」とは別物です。保育所保育指針にも明記されていますが、さまざまな遊びや体験を通して「生涯にわたる生きる力の基礎を培う」ことが保育園における「教育」となります。

保育指導計画を書く時のポイント

パソコンの前でノートにメモを書いている保育士
指導計画を作成する際に「あれ?このねらいは養護?それとも教育?」とわからなくなってしまうこともありますよね。特に教育の「健康」の項目は養護と重なる部分があるので、迷うことが多いのではないのでしょうか。
例えば以下の2つのねらいを見てください。「健康」の欄に書くのは、どちらの文章でしょうか。

①新しい環境に親しみ、安定感をもって過ごせるようにする
②保育者に見守られ、安心して生活を送る


答えは②です。ポイントは「主語が誰か」です。

養護のねらいは、主語が「保育士」になります。生命の保持と情緒の安定は、保育士によって保証される内容だからです。

対して教育のねらいは、主語が「子ども」になります。保育士が準備した環境の中で、子どもが主体的に獲得していく内容だからです。

試しに主語を補足で入れて文章を完成させてみましょう。

①(保育士は子どもが)新しい環境に親しみ、安定感をもって過ごせるようにする
②(子どもは)保育者に見守られ、安心して生活を送る


2つの違いが分かりましたか? 指導計画で「健康」の欄にねらいを書く際は、主語を「子ども」にして記入してみましょう。養護の場合は「保育士」が主語です。実際には「子ども」「保育士」の主語は省略しますが、ねらいの書き方に迷った際には主語を付けて考えてみることをおすすめします。
ピアノの椅子に座っている子どもたちと保育士


養護と教育の違いを理解しよう

いかがでしたか? 養護の主体は保育士で、保育士が子どもの心身の健康を守ります。教育の主体は子どもで、子どもが体験や環境からさまざまなことを学び、身に付けていきます。まずはこの違いの理解から始めてみましょう。

指導計画は主に教育の観点から作成するので、「子どもは・・・」で始まるねらいを考えるのが基本。養護と教育の書き方の違いに慣れるまでは難しいかもしれませんが、目指す子どもの姿をイメージしながら取り組んでみてくださいね。

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佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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