保育のなかでの性教育って?
2018年(平成30年)に施行された保育所保育指針で新たに示された「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」 のなかに「健康な心と身体」や「生命尊重」という項目があります。これは日々の保育の考え方の基本となるもので、心や体の健やかな成長、自然や身の回りの生命の尊重という側面もありますが、一方で自分や周りの人の体について考える側面も含まれていると言えるでしょう。参考:保育所保育指針/厚生労働省 「性教育」といわれるとなんだか身構えたり、ちょっと難しそうな印象を持つかもしれません。そのため、保育をしていくうえで子どもたちと性のトラブルを目の当たりにしながらも、十分な知識がないがゆえになんとなくで対応してしまうことも。
そんな保育現場での性教育について、「今」と「これから」について見てみましょう。
保育者として知っておきたい性教育の知識とは?
保育者が知っておきたい「性教育」の知識についてはさまざまな側面があります。- 保育者として知っておきたい性教育の知識
- 保育者として子どもに伝えたい性教育の知識
- 保育者として保護者に伝えたい性教育の知識
アンケートから見える性教育の知識の今
まずはほいくisで実施したアンケートの結果を見てみましょう。ほいくisでは、保育者の方々にアンケートを行い、保育の中での性教育、性にまつわるお悩みを聞いたところ、いろいろなポイントが浮かび上がりました。アンケート①質問「保育中に、子どもたちからの性的な発言や行動、または子どもの体についてどう扱っていいか分からず困ったことはありますか?」
はい | 710件( 66.7%) |
いいえ | 354件(33.3%) |
はい | 177件( 13.8%) |
いいえ | 1,103件( 86.2%) |
はい | 72 件( 5.5%) |
いいえ | 1,236 件(94.5%) |
アンケート④「保育中に“性”についてが理由・原因で困ったこと、対応が分からないことがありましたらお書きください。」
※編集部にていただいた回答を分類しカテゴリ別にご紹介しています(原文そのまま)
<多様性について>
- 多様性が求められる今の時代でどこまで男女別で括って良いのか、難しいです。
- 男の子をさん付けで呼ぶと、子どもから「先生違う。男なのになんでさん付けで呼ぶの?と指摘されます。
- パンツをめくってお股を見せ合う、みようとするのが流行っています。大事なところだから見せないと言ってはいますがなかなか伝わりませんね。
- 興味本位で体を触る、見るなど注意した方がいいのか… 注意するとしてどう話をしたらいいのか
- 子どもの自慰行為に対してどのように声掛けを行えばいいのか悩みます。
- 自慰行為をする子どもの対応に困っています(無理に止めさせるのもストレスになりそうで…)
ほいくisのアンケートによると、保育者の多くは子どもたちからの発言や行動、または子どもの体についてどう扱っていいか分からず困ったことはありながらも、子どもへの性教育、保育者自身が性教育を学ぶ時間や機会を持てていないということが分かりました。
また、子どもたちの行動もさまざまでそれに対して正しい知識を持ち合わせていないため、どう対応していいのかわからないというご意見も寄せられました。
保育者が性教育の知識を獲得するには
アンケートの結果から、性教育についての具体的な活動をしている園はまだ少なく、十分な知識を備えた保育者が少ないのが現状のようです。ここでは、現在行われているさまざまな取り組みについてご紹介します。生命(いのち)の安全教育|文部科学省
文部科学省では、子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」を推進しているのをご存じですか?この取り組みでは、生命の大切さを学び、正しく理解する目的で動画や教材が作られています。実際に導入されている園も多いようですね。要領・指針で実施するように記載はないものの、子どもたちが「生命(いのち)の安全」を理解するうえでとても重要な内容となっています。
子どもたちが分かりやすいようにと年齢別に内容が分かれており、保育園、幼稚園問わず「幼児向け」としての教材もあります。
こちらの教材は、園や施設の環境や状況によって、自由にアレンジすることが可能ということで、現場のニーズに合わせて使うことができます。
この「生命(いのち)の安全教育」は、令和5 年度から令和7年度までの3年間を「更なる集中強化期間」と位置付けて、「教育を普及していく」とされています。
しかし実際の運用は園に任されていることが多く、取り組みをまだ知らない園や実施していない園も多いかもしれません。自治体の保育課などには周知が行われているため、問い合わせしてみるのもいいかもしれません。
生命(いのち)の安全教育/文部科学省
家庭でできる性教育サイト|命育
日本で唯一の性教育に特化した保護者向け情報サイト”命育”(めいいく)。医師専門家の協力のもと、専門的な情報をわかりやすく届ける保護者向けのサイトとして誕生しました。最近では、厚生労働省と協力して『「乳幼児期の性に関する情報提供」―保健師や親子に関わる専門職のための手引き』を発行するなど、保護者以外へのアプローチも活発に行っています。
この手引きの中で紹介された内容は保育者にとっても有益な情報で、子どもたちからの「なぜ?」や保護者からの問い合わせにも対応できる内容となっています。
「乳幼児期の性に関する情報提供」―保健師や親子に関わる専門職のための手引き
家庭ではじめる性教育サイト「命育」
ほいくisが命育とコラボして性教育について考えます
今保育者が知りたい、困っているお悩みを命育とコラボして、3回シリーズで学んでいきたいと思います。第1回 基本的な性知識の考え方~ からだ・男と女って何だろう(2023年9月公開予定)
第2回 プライベートゾーン どう伝える?どう守る?(2023年12月公開予定)
第3回 子どもの自慰行為 していい?しちゃダメ?どう対応する?(2024年3月公開予定)
保護者の関心も高まっている性教育。信頼関係にも大きくかかわる繊細ですが大切な内容です。ここで正しい知識を身に着け、保育者として適切な対応ができるといいですね。