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日案の“保育のねらい”はどう設定する?【日案先生コラム】

手に持った双眼鏡を覗いている男の子
インスタグラムで日案のノウハウと保育の楽しさ・奥深さを発信している「日案先生」の連載コラム。今回のテーマは、日案における「保育のねらい」です。理解しておくべき考え方と、作成や振り返りの際のポイントについて解説します。

保育の“ねらい”とは

「AIM」と書かれた積み木とスケッチブック
ねらいは、充実した生活や活動ができるよう、保育を通じて育みたい資質・能力を子どもたちの姿から捉えたものです。保育の目標を具体化したもので、子どもたちが望ましい心情や意欲、態度などを身に付けることを示しています。

ねらいを明確に設定することによって保育の方向性が定まり、具体的な保育者の援助や環境構成が考えられるようになります。日案においては、保育者個人の考えではなく、園の方針や年間計画、月案や週案などをもとに、日々の子どもたちの姿や成長から、ねらいを設定しましょう。

ねらいの設定で変わる保育

まずは、ねらいの設定が保育に与える影響や、その捉え方がどう変わるかを考えてみましょう。具体的には、生活、遊び、製作の場面で保育者の援助や環境構成がどのように変わるかを見ていきます。

生活の場面でのねらい【1歳児】

着替えをしている男の子
「保育者の援助を受けながら、自分で着替えようとする」

というねらいに対して、以下のようなアプローチが考えられます。
  • オムツやズボンの履き始めは保育者が一緒に向きを確認し、上に引き上げることを自身でできるように援助する。
  • オムツやズボンを履く時には、座り方や足を通す手順を子どもの行動に合わせ言葉にして知らせていく。
保育者が完全に着替えの援助をしてしまうと、「援助を受けながら自分で着替えようとする」という意欲が減退してしまいます。また、衣服の畳み方や片付け方など、細かい所を言われると子どもたちは嫌気がさすかもしれません。

このような場合には、別の機会に畳み方や片付け方に焦点を当てると良いでしょう。

遊びの場面でのねらい【3歳児】

自然豊かな環境の中で遊ぶ女の子
「身近な自然物に触れ、自然遊びの楽しさを味わう」

というねらいに対して、以下のような準備や援助が必要です。
  • 自然遊びが十分に楽しめるよう、園内外の植物や生き物などの場所を把握し、安全性を事前に確認しておく。
  • 自然物が苦手な子や、あまり興味がない子への個別配慮・かかわりを考えておく。(複数の保育者がいる場合は打ち合わせをしておく)
  • 自然物を見付けたり触れたりができるよう、保育者が子どもたちと一緒に楽しみながら援助する。
自然物に触れたり楽しんだりができる環境作りや、援助・個別の配慮などの準備が必要です。ねらいの設定をしたにも関わらず、“子どもたちが十分に楽しめるだけの自然物がない”ということになっては本末転倒です。

製作の場面でのねらい【5歳児】

ハサミを持って工作に熱中している男の子
「友だちとイメージを共有しながら、協力して活動を行う」

というねらいに対して、以下のような準備や配慮が考えられます。
  • 友だちとイメージを十分に共有できるよう、導入を丁寧に行う。
  • 協力して製作ができるよう、話し合いの場を設けたり、役割分担を提案したりする。取り組みの様子や過程を見守りながら、必要に応じて援助や補足をする。
  • 製作途中で作品全体をみんなで見られるよう声をかけ、さらに作るところや工夫が考えられるよう、きっかけ作りの援助をする。
保育者は一歩引いた立場で子どもたちの活動を援助し、時にはヒントや方向性を提案することがあります。また、子どもたちが自ら話し合ったり協力したりすることができるようになるために、保育者はその時々の“子どもの姿”を見極めながら適切な援助や声かけを行います。

ねらいを振り返りのヒントに

「REVIEW」と書かれたメモ帳
続いては、保育の振り返りの視点から見てみましょう。ねらいの設定は、生活や活動など、日々の保育を振り返る時にも大きな役割を果たします。子どもたちの姿や活動への取り組みから、「ねらいが適切であったか」、また「ねらいが達成されたのか」などといった保育を振り返る軸にもなります。

ここでは、「ねらいに対してどうだったか」を振り返るために、具体的な例を見ていきましょう。

ねらいの設定が子どもの興味や育ちに合っていたかどうか

活動内容と子どもたちの姿(活動への興味や関心、意欲)を照らし合わせ、ねらいが適切であったかどうかを振り返る、最も基本的な視点になります。

子どもの姿や取り組みはどうだったか

エピソードや子どもたちの声、気付きや学びなど、生活や活動の中でどのような姿に現れていたかを考えます。

保育者の援助や配慮、環境構成はどうか

子どもたちの活動を見守る保育士
ねらいに対して考えた保育者の援助や配慮が十分だったかを振り返ります。個別の配慮が必要だった部分や、環境構成の改善点などが見出せます。

今後のねらいをどう設定していくか

ねらいの継続が必要なのか、または子どもたちの興味や関心の広がり・取り組みの過程を見守っていくか、もしくは違ったアプローチで計画を立てていくかなど、目標や課題設定ができます。

保育者間の連携や共通理解ができていたか

園全体、クラス、学年、異年齢、さまざま場面で保育者間の連携や共通理解・認識がねらいを基にできていたかを評価します。

以上のような振り返りを通じて、ねらいの適切さや成果だけでなく、専門的な考察や課題を見出すことができます。

ねらいを確認するタイミングについて

「When?」と書かれた積み木と時計
最後に、ねらいを確認する(共有する)タイミングについて考えてみましょう。

保育学生の実習日誌や、複数の担任で保育をする場合に保育者間のやりとりなどでよく聞かれる「ねらいは何ですか?」という質問があります。注目すべきは、そのねらいの確認が行われる"タイミング"です。ケース別に見てみましょう。

ねらいの確認を後日した場合

「昨日の活動のねらいって…?」

活動が終わった後にねらいの確認をするということは、ねらいを設定していない保育をすることと同様です。後から付け加えるねらいは形ばかりのものに過ぎません。

そのため、保育の観察ポイントや、保育者のかかわりなどの方向性が曖昧になります。子どもたちにとっても、保育者によって言うことややることが違うと戸惑う可能性があります。

ねらいの確認を当日した場合

「今日の活動のねらいは…?」

活動を行う当日にねらいの確認をするということは、保育者の留意点や環境の構成を予測したり準備したりする時間が十分ではありません。

保育者の援助や配慮、活動の準備が不足しがちになります。

ねらいの確認を前もってした場合

メモ帳とカレンダーと付箋
「◯日に予定している活動のねらいは…?」

この場合は、事前準備や活動の流れを確認し、それらに必要な保育者の心構えや環境構成の準備をすることができます。予測や準備に余裕を持って不足なく行うことは、ていねいな保育に繫がります。

このように、「ねらいを確認する」タイミングは非常に重要です。また指導する側やクラスの主となる保育者も、事前にねらいを伝える重要性を理解することができますね。

まとめ

いかがでしたか? 今回は、日々の保育を計画して実践し、振り返る際に「ねらい」を明確化する重要性についてお伝えしました。

このことは、日案の作成だけでなく、保育実習日誌についても共通のポイントとなります。日々の保育や人材育成の場面では、“ねらい”を大切にしていきましょう。

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