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保育の『育みたい資質・能力』三つの柱を解説|概要と指導案への活かし方

三本の指を示している保育士
「育みたい資質・能力」は、子どもたちの生きる力の基盤を育むことを目的として保育所保育指針の中で定義された三つの要素のことです。保育を行う上で常に意識したい要素ですが、保育士はどのように指導案や活動に活かしていけば良いのでしょうか。今回は、「育みたい資質・能力」の三つの柱について解説します。

育みたい資質・能力とは

まずは、「育みたい資質・能力」がどのようなものなのか見ていきましょう。

概要

戸外で手を広げている女の子
「育みたい資質・能力」とは、保育所保育指針に明記されている、保育を通じて子どもたちに身に付けてほしい力のことです。大きく三つの要素で構成されていることから「三つの柱」とも言われており、子どもたちの生涯にわたる生きる力の基盤を育むことを目的としています。

保育所保育指針の第1章には、次のように書かれています。
4 幼児教育を行う施設として共有すべき事項
(1) 育みたい資質・能力
ア 保育所においては、生涯にわたる生きる力の基礎を培うため、1の(2)に示す保育の目標を踏まえ、次に掲げる資質・能力を一体的に育むよう努めるものとする。
(ア) 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技能の基礎」
(イ) 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」
(ウ) 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」
イ アに示す資質・能力は、第2章に示すねらい及び内容に基づく保育活動全体によって育むものである。
出典:保育所保育指針 >>詳細はこちら

育みたい資質・能力は、「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」の三つの要素で構成されていることが分かります。

保育士は、これらの力を一体的に育むことができるよう、環境を準備し、必要な支援を行っていくことが求められています。

10の姿・五領域との関係性

カラフルなジグソーパズルと子どもの手
「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱が育つと、どのような子どもの姿が見られるのでしょうか。それを具体的に表したものが「10の姿」です。 そして、この「三つの柱」や「10の姿」を育むために必要な保育内容が「五領域」に示されています。つまり、五領域の視点で保育を積み重ねていくことにより、「三つの柱」が育っていくことが期待できます。

このように、「育みたい資質・能力」と「10の姿」「五領域」は分けて考えるものではなく、関連性を理解しながら保育に生かしていくことが重要です。

就学前施設における共通の目標

テーブルに置かれた「3」の文字の積み木
2017年(平成29年)に保育所保育指針と幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育要領が同時に改定された際、 「育みたい資質・能力」は共通の目標として盛り込まれました。つまり、保育園、幼稚園、認定こども園のいずれにおいても、三つの柱を意識した教育・保育を行うことが必須となっています。

三つの柱とは

「育みたい資質・能力」を構成する三つの柱は、具体的にどのようなものでしょうか。それぞれの内容を見ていきましょう。

知識及び技能の基礎

絵本を一緒に見ている子どもたち
「知識及び技能の基礎」とは、子どもが生活や遊びの中で、さまざまな体験を通して感じたり、気付いたり、できるようになったりする力のことです。

例えば、絵本を読んでもらったり、自分で読んだりする体験を通じて、言葉の意味や使い方、文字の形などを獲得します。

新たな知識や技能が増えていくことで、世の中に対する理解が深まり、子どもの世界が広がっていきます。

思考力、判断力、表現力等の基礎

頭の中で想像を巡らせている女の子
「思考力、判断力、表現力等の基礎」とは、自分で考え、判断し、そしてそれを表現する力のことです。

例えば、ごっこ遊びであれば、役柄をイメージしながら動きやセリフを考え、なりきって表現する姿が見られることでしょう。

このような経験は、社会を生きていく上での問題解決能力や創造性の基礎となります。

学びに向かう力、人間性等

庭で植木鉢を運んでいる女の子
「学びに向かう力、人間性等」とは、子どもが主体的に学ぼうとする力や、他者と協調しようとする態度のことです。

例えば、野菜の栽培を行う中で、植物の生長に興味を持って調べたり、友だちと協力して水やりなどのお世話をしたりする姿が見られるかもしれません。

このような活動から、学ぼうとする意欲や、人との協力、思いやりなどの姿勢が​​育まれていきます。

指導案や活動への活かし方

ノートパソコンを操作している保育士
「育みたい資質・能力」を日々の保育に活かしていくにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、指導案の作成と活動での考え方について見ていきましょう。

最初に、「育みたい資質・能力」の三つの柱を育むためには、五領域の視点で保育計画を考える必要があります。健康、人間関係、環境、言葉、表現というそれぞれの視点で指導案を作成し、実践していくことで、三つの柱が育まれていきます。

三つの柱は、別々に育つものではありません。一つの活動を通じて、同時に育まれることも多くあります。

かけっこを例に見てみましょう。
  • 早く走る方法や身体の使い方を身に付ける(知識及び技能の基礎)
  • どうしたらもっと早く走れるか試行錯誤する(思考力、判断力、表現力等の基礎)
  • 友だちと一緒に何度もかけっこに取り組む(学びに向かう力、人間性等)
かけっこという一つの活動で、それぞれの力が育まれていることが分かります。

指導案を作成する際に、子どもが得られる学びや育ちについて「三つの柱」の観点で考えてみましょう。その上で活動を行えば、成長を促す意図的な言葉かけや支援を行うことに繋がります。
フィンガーペインティングで遊んでいる子ども
保育所保育指針に書かれている三つの視点(乳児期)や五領域(幼児期)をもとに、子どもの年齢や発達に合わせた指導案を作成しましょう。各年齢区分のねらいを達成していくことで、「三つの柱」や「10の姿」が育まれていくことが期待できます。

生きる力の基盤を育もう

子どもたちにとって保育施設の卒園は人生のゴールではありません。小学校以降も豊かな時間が過ごせるよう、乳幼児期には「三つの柱」を大切にしながら、生きる力の基盤を育んでいきたいですね。

「育みたい資質・能力」について理解を深めたい方は、参考にしてみてくださいね。

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佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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