新シリーズ「絵本で広がる保育の世界」スタート!
保育・幼児教育に絵本は欠かせません。絶対にそばにある存在です。そんな保育と絵本の「縁」について、いろいろな絵本を取り上げながら紹介していきたいという想いから、この新シリーズ『絵本で広がる保育の世界』を考えました。それでは、開幕!記念すべき第一回は鳥取から
さて、記念すべき第一回は、我が鳥取を代表する絵本と、保育を通して子どもから出てきたとっても子どもらしさ溢れる一言をご紹介します。絵本の中の出来事が実際にあったら楽しくなりませんか? 例えば、『おおきなカブ』のお話を読んだ後に、給食にカブが出てきたら「これ、みんなで抜いたカブじゃない?」と、ちょっと盛り上がる。みたいな話。今回はそんなエピソードの最上級のひとつだと思っています。
『こんとあき』
林明子作
福音館書店
1989年
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保育園で楽しむ絵本の中に、林明子氏の作品はたくさん。いつか「愛する絵本作家」シリーズでも取り上げたいな。その中でも名作の中の一冊がこの作品。表紙に描かれたのは女の子の「あき」と、きつねのぬいぐるみ「こん」、そして鳥取駅です。林明子氏のおばあちゃんが鳥取におられ、そこを舞台にこの作品が作られました。この絵本のすばらしさは、書ききれないくらいたくさんありますが、それは名のある絵本研究家の方々の著書を読んでいただくとして、俺はもっとリアルなエピソードを綴っていきたいと思います。
絵本の世界とリンクする鳥取砂丘
『こんとあき』に登場する砂丘は、紛れもなく鳥取砂丘。ある日、保育園の園外活動で砂丘に行きました。絵本の「あき」が初めて砂丘を見た時のように、初めて砂丘を見た男の子。その後姿をパノラマで撮影。(ぜひ画面一杯にして見ていただきたい鳥取砂丘の大きさを感じられる一枚) そこで一言。「砂場、おっきーーーーい!」
ですって。大人には絶対に言えないセリフだと思います。この後、写真奥に見える馬の背(馬の背中のように見えるから)と呼ばれる日本一の勾配を誇る坂を登っていきました。遠近法で小さく見えますが、ものすごく大変です。そして、馬の背を登りきると向こうに見えるのは…くじら島。 「あき」もこの風景を見たのでしょうか!? それとも、「こん」が行方不明でそれどころじゃなかったのでしょうか!? ちなみに、絵本の中で登り切った所に埋められていた「こん」は、馬の背頂上、写真に写っている辺りに埋まっていたものと推理いたします。
休日や観光シーズンになると、砂丘には人だらけ。平日だからこそ味わえるこの大自然。地元ならではの楽しみ方です。
さらには、絵本に出てくる駅弁『あげどん弁当』なるものも、鳥取オリジナルで存在します。油揚げや炒り卵のまぜご飯に、鳥取市民のソウルフードのひとつ≪とうふちくわ≫を添えた弁当。
絵本から始まる保育の広がり
絵本を読んで、保育の中でその出来事が出てきたらさらに保育が広がり、そして絵本も好きになる…。そんな好循環でどんどん園生活が楽しくなってきます。でもこうなるには、実はいくつかの要因があり…。保育士の物的空間的環境への働きかけと、「ピンッ!」と張り巡らされた、保育の一場面や子どもたちの一挙一動や言葉を捉えるアンテナが大切なのです。
- 子どもたちが気づきにくかったり、自分たちでは作り出しにくかったりすることに対しては、〔補償的 環境への働きかけ〕
- 子どもたちが夢中になっていること、アイデアやつぶやきに「おっそれいいね!」と促していく〔助長的 環境への働きかけ〕
- 『こんとあき』を子どもたちと一緒に読んだり、園外保育で一緒に出掛けたりする〔補償的 環境への働きかけ〕
- 子どものつぶやきや、「あそこ登りたい」という声に「やってみよう!」と保育士がのっていく〔助長的 環境への働きかけ〕
- 更には、帰ってきて写真をプリントアウトして掲示し、おたよりでお伝えする〔補償的 環境への働きかけ〕
このシリーズでは今後、保育の具体的な場面で絵本が保育の世界を広げていく一例をお伝えしていきたいと思います。ぜひお楽しみに!
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