“自然”とは?
みなさんは”自然”と聞くと何を思い浮かべますか?多くの人は、どこか外国のおとぎ話に出てきそうな”森”やアルプスの山々が青い空に映えているような壮大な景色、自分の家の近くにはないどこか遠くの美しい自然・・というものを浮かべるのではないでしょうか。
元々自然が好きな人は、虫や草花など身近な自然を思い浮かべるかもしれません。
私は時々、「最近、自然の中にどっぷり浸ってないな〜」と思います。
保育園の散歩に行き、子どもたちと一緒にいるときも、自然の中にはいるのですが、やっぱり「仕事」として行っているので、上記のような思いが出てくるのは、「自然の中に静かに身をおいていない」というときです。
海での豊かな時間
先日、私を訪ねてきてくれた保育者の方々と一緒に、久しぶりに近くの浜辺に行きました。よく晴れて、風が強い日でしたが、その割には暖かく、しばらく思い思いに浜辺で過ごしました。
本当は、焚き火をして、ゆっくりお茶でもしながら、保育の話をしようと思っていたのですが、あまりに浜辺が心地良すぎて、何か話をする気持ちにはなりませんでした。
ある人は波打ち際ギリギリのところを子犬のように走りながら、あっという間に遠くへ行き、ある人は浜辺にゴロンと寝転がり、ある人は「こんな貝殻あった!」と両手いっぱいに集め、ビニール袋を渡すと子どものように嬉しそうにそれに入れて、眺めていました。
私もシーグラスを見つけると宝物を見つけたような気持ちになり、それをポケットに拾い集め、ついでにマイクロプラスチックも拾いながら浜辺を裸足で歩き、時々海の水面のキラキラとした太陽の反射に心を奪われ・・
そのとき、ふと「なんて豊かな時間なんだろう・・」と、気づきました。子どもたちが遊びに没頭しているときの体験ってこういう感じなのかもしれないなと。
それは、大人が「こうやって体験するんだよ」と教えられるようなものではなく、むしろ逆で、大人は何もせず、子どもがそのまま自由に”自然”と対峙する時間を作るだけで、このような豊かな時間が生まれるのだと思います。
「何をするか?」よりも大切な「自然を体感する静けさ」
大人が子どもと「海に行こう!」となったとき、どうしても「じゃあ、砂場の道具を持っていこう」「BBQをやろう」「カニを探しに行こう」などと計画を練ります。それも悪い訳ではありません。
でも大切なのは、ただ”海”を感じ、砂に触れ、寄せては返す波の様子や音を体感し、その子なりに過ごすことのできる静けさなのです。
波が寄せてくるのを見ていると、太陽の光がキラキラと反射していることに気づきます。
波が引いていくとき、今度は引いていく波が砂浜で、キラキラと光が転がってるように見えます。
波を体感している様子は、一見”遊び”には見えません。
頭で考えた理由や理屈は抜きで、無意味にも思えるような行動や一見”遊び”には見えないことが、子どもたちには大切な時間なのです。
私たち大人は、「何をして遊んだの?」「何をして遊びたい?」そんな風に聞いてしまうことが多いけれど、子どもたちは言葉では説明できないような豊かな体験を心の中でたくさんしているのだと思います。
でも、「何を?」と聞かれた途端に、何か説明できるような遊びをしていなければいけないような気分になってしまうかもしれません。
「何をさせるか?」「どうやって遊ばせるか?」「どこに連れていくか?」ではなく、「ここで子どもたちはどう過ごすかな?」「これを見せたら、子どもたちはどんな風に関わるかな?」と、子どもが大人の想像の枠を超えていく姿にワクワクする方が遥かに面白くて、子どもにとっても、大人にとっても、新しい体験が生まれるのではないでしょうか。
自然を感じて、自分の感覚・感性を取り戻す
”自然”という大きな懐の中で、ぜひみなさん自身も静かな時間を過ごしてみてください。冬空の夕焼けの色に自分が溶け込むくらい、静かに見つめる時間をとってみてください。
しんしんと降り積もる雪の舞い落ちる様子をただ見つめる時間や高い木によじ登りそこからの景色を眺める時間、綺麗な落ち葉を無心で拾い集め、ただそれを並べてみる時間・・
このような静かな時間を過ごすことで、自分の中の「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」が呼び起こされ、子どもたちと自然の中で過ごすとき、子どもの体験が手にとるように伝わってくるでしょう。
〜わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもと一緒に再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、少なくともひとり、そばにいる必要があります。〜
レイチェル・カーソン著 ”センス・オブ・ワンダー”より抜粋
自然を感じる時間こそ、豊かな時間であり、日々の喧騒の中で忘れていた自分の感覚・感性を取り戻す時間なのです。
そしてそれは、新しい発見や感動、アイディアなどが湧いてくる“豊かな体験の源泉”となると信じています。
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