集団生活の中でのルール
集団生活である保育園や幼稚園では、一斉活動などやるべきことを決めるのは、ほとんどが大人です。子どもは、大人が決めた1日のルールの中で楽しむ日々を過ごしています。
しかし、中にはルールの理解が難しかったり、相手の意図に沿うことが難しかったり、感覚的な偏りから着席し続けることや、集中することが出来ない子どもたちがみんなと一緒の活動が出来ない、やりたくないと伝えてきたらどうしますか?
「みんな一緒」が正解とは限らない
「1回だけやってみよう?」や「頑張れば出来るよ」、「みんなやっているんだから、○○君もやりなさい」と言っていませんか?
行動には必ず理由があります。「やりたくない」にも理由があるのです。
今の遊びを止める事が嫌? 何をするか言葉だけの説明では理解出来ないから嫌? 失敗するのが不安だから嫌? 等々、理由は様々です。
また、拒否の伝え方も言葉で伝えられる子もいれば行動で示す子もいて、対応に追われることも多々あるでしょう。
そんな時、先生たちの頭の中で「みんな一緒」という考えが根付いていると、一人だけやらないことが悪い事と感じています。
しかし、子どもにとって大切なのはみんなと一緒に何かが出来ることよりも、自分の気持ちを誰かに伝えられる事、嫌なものを嫌だと伝えられる事ではないでしょうか?
子どもの気持ちに寄り添った声かけについては、こちらの動画でも詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
イヤにはちゃんと理由がある
イヤにはイヤの理由があるので、まずは理由を聞いてみる、想像して問いかけてみる、参加しなくても良い方法を提案してみる等、皆と一緒に参加とひとくくりにせずに柔軟な対応方法を考えてみてください。
言葉から何をするのか理解できない子には「見学」という方法もある事を提案してみてはどうでしょうか?
言葉で理解出来なくても見て理解出来れば2回目からは参加したいと伝えてくるかもしれません。また、一人で参加することが不安な子には、先生が横についていたら参加できそう?等、理由にあった方法を提案してみましょう。
提案してみても拒否をするようなら、そこで無理に参加させることはせずに、自分の気持ちをよく伝えられたと褒めましょう。
大切なのは自分の気持ちを表現し、受け止めてもらうこと
活動を提案するのは大人であっても、やるかどうかを決定するのは子ども自身です。楽しそうと感じられれば参加するでしょうし、ほとんどの集団活動が参加出来ないのであれば、それはその子のレディネスが整っていないのです。
※レディネスとは、学習の為に必要な準備状態
大切なのは、乳幼児期から自分の嫌と言う気持ちを適切な表出方法(言葉やノンバーバルコミュニケーション)で正しく表出できることが大切です。
また、困った時には誰かに手助けを求められる援助要求(「手伝って」「やって」等)、やりたい事を上手に伝えらえる要求(「ちょうだい」「取って」等)、そして自分の事は自分で決める自己決定を身につけておきたいですね。
幼児期は、どうやってそれを伝えれば良いのかまだ分からないため、間違えた手段で表出してしまう事もあります。そんなときは、正しい手段を具体的にモデルで示しながら伝えていく必要があります。
せっかく拒否を上手に出せても、大人が「いやでも良いから、1回だけやってみない?」と拒否を受け入れないと、子どもは勇気を出して伝えても受け入れてもらえないんだ。と次から伝えるのを止めてしまいます。せっかく出せたコミュニケーションは成立させることで次につながります。
出来る事だけを評価するのではなく、やりたくない、できない、いやだという自分の気持ちを誰かに伝えられたというコミュニケーションそのものを評価することで、豊かなコミュニケーション能力が育ちます。
井上さんからアドバイス
子どもの成長を強く思うばかりに、何かが出来るようになるという”行動”の見えやすい成果を求めたくなりがちですが、自分の気持ちを正しい手段で伝えるコミュニケーション能力を育てる事も大切です。
「何かが出来た私・僕」だけが認められるのではなく、何かが出来なくても“自分”を上手に伝えられる“私・僕”が認められる社会が拡がっていくことを期待しています。
これがまさに自己を肯定する力に繋がっていくと考えています。
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