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椅子に座る習慣が無かった子どもたち【みんなで作るカノア保育園・その7】

ブラジルのカノア保育園
2000年、ブラジル北東部にある人口300人の小さな漁村“カノア・ケブラーダ”に保育園を作った鈴木真由美さんのストーリー7回目。カノア保育園は、そもそも「子どもたちが部屋の中で過ごせるようにする」という課題からスタートしました。保育園としての形を作るところから毎日が試行錯誤の連続といっていい日々を迎えました。
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小学校に通うために必要なハードル

ようやく部屋の中に入ってくれるようになった子どもたち。しかし、部屋に入ってくれるだけでは、「子どもたちを小学校に通うことができるようにする」という私たちの目標を達成することはできません。保育園では、床に座って遊んだり、お話を聞いたり…と、椅子に座らずに活動することが良くありますが、小学校では基本的に椅子に座って授業を受ける必要があります。カノア保育園では、少しずつでもいいので、椅子に座ることを習慣づける方法の模索が始まりました。「小学校に通う」という目標のためには、必要なハードルでした。

そこで私たちは「子どもたちが椅子に座って食事ができるようになる」という目標を掲げることにしました。子どもたちが活動自体を椅子に座って行うことはまだ難しく、絵を描いたり、小麦粉粘土で遊んでいても、椅子に座る子どももいれば、床に座っている子どももいました。




椅子に座ってもらうための試行錯誤

「全ての子どもが椅子に座ってくれるようにするには、活動ではなく、お昼を食べるときにすればいいのでは?」

そう考えた私たちは、子どもたちが椅子に座ってお昼ご飯を食べるよう促すことにしたのです。多くの子どもたちは、家で食事をするときに土間に鍋を置き、その周りに胡坐をかいて座って食べていました。そのため、椅子に座って食事をすることも習慣として身についていない子どもたちがほとんどだったのです。

以前、「子どもたちが部屋の中で楽しく遊べるようになる」という目標を掲げた際には、実現するために段階的な計画を立て、少しずつ子どもたちを誘うように促していきました。そのため、全員が部屋に入ることができるようになるまで、かなりの時間がかかりました。子どもひとり一人が自分で考え、決め、部屋に入るようになるまで見守っていたからです。

今回、「子どもたちが椅子に座って食事ができるようになる」という目標を実現するために私たちは、お昼ご飯をテーブルに並べ、椅子を用意しました。そして、「椅子に座って食べようね」と声をかけ、全員が座ってから、「“Boa Appetite para nos todos, Amem.”(ブラジルでは、お祈りをしたのちこのように言います。これが日本の“いただきます”にあたる、食事の前の感謝の言葉なのです)」と言いました。

ただそれだけでした。

小さな前進

それでも、初日から子どもたち全員で椅子に座って食事をすることができたのです。2000年当時は、保育園での食事が唯一のご飯という子もいました。そのため、子どもたちにとって、「ご飯を食べる」ためには、どんなことであってもするという気持ちが強かったのではということも否定できません。しかし、日々の試行錯誤の中で、少し前に進んだのかなと感じた瞬間でした。

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