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複雑な家庭背景を持つ子、ブルーノ。カノア保育園の子どもたち

ブルーノメイン写真
ブラジル・カノア保育園の設立ストーリーと並行してお届けする新シリーズ「カノア保育園の子どもたち」。今回は、ちょっと気になる子、ブルーノについてです。


ブルーノのお母さんは、17歳の時に彼を産みました。シングルマザーでした。ブルーノのお母さんは13人兄弟の一番上。母親は若い時に彼女を産み、育てることができないために生まれてすぐ、実の両親に預けていました。ブルーノの母親は、祖父母に育てられたのです。

カノア保育園のあるカノア・ケブラーダ地区は、今では観光地として名高い場所です。1990年代当時、そこには多くのヨーロッパからの観光客が訪れており、日々街並みが変わっていくようだったといいます。物々交換をしながら生活していた彼女たちにとって、突然の貨幣経済の訪れや、見たこともないものがあふれていく様は、きらびやかで、憧れの存在でしかなかったといいます。そんな時に10代であったブルーノの母親は、外国人と過ごすことが一番の喜びだったといいます。

そして、ブルーノが生まれました。

ブルーノ顔写真


ブルーノは、砂地の村のど真ん中に産み落とされました。彼女も意図していない場所で、生まれてしまったのです。その後ブルーノは、曽祖父母に実の子どもとして育てられました。

ブルーノは感情の起伏が激しく、暴力的な子どもでした。いつもどこか怒っているようなその顔に、笑顔はなかなか見られませんでした。それでも、保育園に通い始め仲間ができると、一緒に悪さをしながらも大きな声を出して笑うようになったのです。そんな彼が学童教室に通うようになった時に言った言葉が、今でも忘れられません。

「自分を信じてくれる大人にあった。だから、自分も信じてやろうと思ったんだ。」と。





まだ保育園に通っていた時、彼に弟が生まれ、その後すぐにまた母親は妊娠しました。

「僕、またお兄ちゃんになるんだよ」

そう喜んでいたブルーノ。でも、そのもう一人の弟は彼の家にはやってきませんでした。母親は、妊娠が分かった時にはもう、養子に出す手続きをしていたのです。

母親ひとりが家に戻った日、5歳のブルーノが家出をしました。それからも保育園には通っていましたが、そばに寄ることもできないほど、体全体で怒りを表現しているようでした。

そんな状態が続く中、私たちはブルーノの声を聴きたいと、寄り添い続けました。そしてある日突然、ブルーノは泣き出したのです。そんな彼が言った一言。それは、

「弟に会いたい」

母親と話をし、養子縁組をした親と連絡を取り、ブルーノは弟に会いに行くことになりました。
帰ってきた彼は、

「ありがとう」

と一言いい、それ以降、そのことについて話すことはありませんでした。

そんなブルーノは、その後も麻薬の売人になるなど、紆余曲折の人生を送っています。そんな中、2018年には恋人との間に男の子が生まれました。この先、彼がどんな人生を歩んでいくのか。今でも心配でなりません。カノア保育園には、ブルーノのようにさまざまな家庭背景を持つ子どもたちがやってきます。精一杯子どもたちに寄り添ってあげること。それが、私たちにできることなのではないかと思います。

>>甘えん坊のアンジェリーナ。カノア保育園の子どもたち
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鈴木真由美

この記事を書いた人

鈴木真由美

保育士。ブラジル・カノア保育園 園長。2000年にブラジル北東部にある漁村カノアに渡り保育園の運営を始める。2006年にカノアでの支援を目的にした「光の子どもたちの会」を設立(2015年にNPO法人となる)。現地の地域力向上を目指して活動中。2児の母。
<光の子どもたちの会HP>
http://criancasdeluz.org/quem_somos_nos/quem_somos_jp.html

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