カーニバルよりも大切なお祭り
ブラジルと言えば何を思い浮かべますか? という質問をすると、間違いなくあがってくるのが「アマゾン」「サッカー」「カーニバル」の3つです。その中でも特にカーニバルは、「クリスマスよりも何よりも、ブラジル人はカーニバルが好きだろう。どこの地域に行ってもみんな、サンバを踊っているのだろう」そう思っている方もいるかもしれません。でも、私が住むブラジル北東部では、カーニバルよりも大切にされているお祭りがあります。
それは、「フェスタ・ジュニーナ(Festa Junina)」。名前の由来は、その名も、“フェスタ=お祭り”、“ジュニーナ=6月の”という意味で、直訳すると「6月のお祭り」となります。
「6月のお祭り」とは
6月には、聖ジョアン・バチスタの日(6月24日)を中心に、聖アントニオの日(6月13日)と聖ペドロの日(6月29日)と、3つの聖人の日があります。この3つをあわせてお祝いする6月は、小さな村でも必ず行われるほど、大切な伝統文化なのです。「カーニバル」「クリスマス」、そして「フェスタ・ジュニーナ」の3つのイベントはどれも、ポルトガル政権時代にキリスト教の教えの中でブラジルに来たものです。特にフェスタ・ジュニーナは、私が住んでいるブラジル北東部の伝統的なお祭りとして、全国でも知られています。
お祭りで欠かせない3つの要素
このお祭りの日に欠かせないのは、トウモロコシ料理、踊り(クアドリーリャ)、気球(装飾)・焚火の3つ。カーニバルはリオ・デ・ジャネイロやサンパウロが有名ですが、フェスタ・ジュニーナは私が住むブラジル北東部で一番盛んに行われています。その理由の一つは、農業にはあまり向いていない土地や気候であるブラジル北東部にあります。
この地域において、6月の乾季に雨が降り、土地が肥沃になるよう願い、焚火を囲んで踊りを踊ったのがフェスタ・ジュニーナの始まりだからと伝えられているのです。
ブラジルがポルトガル統制時代のときから始まったといわれる聖ジョアン・バチスタのお祭り(6月24日)。ブラジルが南半球であることで、この時期の冬至祭と結びつき、ブラジル北東部で特に盛んにお祝いされるようになりました。
このお祝いの日には必ず、トウモロコシで作った食事が出されるのも、特徴の1つです。ポップコーンにコーンケーキ、「モグザ」と呼ばれる、コーンを甘く煮たオートミールのようなものなど、とにかく、トウモロコシ料理をたくさん食べるのです。
そして最後には焚火を囲んで踊ります。
カノア保育園のある村での祝い方
カノア保育園のあるエステーヴァン村でも、毎年行われるこのお祭り。保育園でも行い、村でも行います。ブラジルはこのお祭りを合図に、学校の前期授業が終わり、長期休みと入るため、子どもたちやその家族も参加する、大きなお祭りとなります。保護者の皆さんはトウモロコシ料理、ポップコーンやコーンケーキ、モグザなどを提供してくれ、それを販売します。売り上げは全て保育園及び学童教室の運営費となるため、保護者の皆さんの参加は本当にありがたいものです。
子どもたちはこの日のために歌や踊りの練習をします。そして教職員は会場の装飾や、日本の夏祭りを思わせる出店(魚釣りやボール投げなど)を行い、保育園や学童教室の子どもたちだけではなく、地域の人たちがたくさん集まる、素敵なお祭りとなるのです。
ブラジル北東部はブラジルの中でも貧しい地域と言われる、農漁村地域です。近年では観光業が盛んになりましたが、それまでは、自然に左右される日々を過ごしていました。6月の聖人の一人、聖ペドロは雨の聖人です。6月29日に雨が降ると、豊穣となると言い伝えられています。乾季の時期に降る雨。めったに雨が降らない時期に雨が降るように祈って踊る人たち。そして、雨が降ると、老若男女問わず外に飛び出し、走り出す姿は、今でも私の脳裏に焼き付いています。
こうした伝統的なお祭りは失われる傾向にありますが、フェスタ・ジュニーナは、この地域の人たちにとって暖かな光をもたらしてくれるとても大切なものです。
ぜひ日本の皆さんにも「ブラジルと言えば、フェスタ・ジュニーナ!」と言ってくれる日が来ると嬉しいです!!
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