【最新データ】保育士の平均給与は?
2022年3月25日に公表された最新の統計データによると、2021年度における保育士の平均給与は月額256,500円、年間賞与等744,000円、年収に換算すると3,822,000円でした。※出典:令和3年度賃金構造基本統計調査/e-Stat
保育士の給与は年々上昇傾向にあり、過去3年間で月収は約2万円、年収は約24万円アップしています。
背景には、保育士の人材確保や処遇改善にむけた国の制度導入があり、2022年現在においてもその取り組みは続いています。
【過去3年間における保育士の平均給与の推移】
年度 | 決まって支給する 現金給与額※ |
年間賞与その他 特別給与額 |
年収 |
---|---|---|---|
2020年(令和2年) | 24.98万円 | 74.74万円 | 374.5万円 |
2019年(令和元年) | 24.45万円 | 70.06万円 | 363.4万円 |
2018年(平成30年) | 23.93万円 | 70.77万円 | 357.9万円 |
なお、平均給与は全国かつ男女合計の平均的な数値であり、細かく見ていくと「性別」や「年齢」、「経験年数」、「各都道府県」、「役職」、「私立・公立」などの条件によって大きく異なります。「令和3年度賃金構造基本統計調査」を基に詳しく見てみましょう。
性別による違い
男女別の平均給与および労働者数は以下の通りです。性別 | 決まって支給する 現金給与額 |
年間賞与その他 特別給与額 |
年収 | 労働者数 |
---|---|---|---|---|
女性 | 25.51万円 | 74.19万円 | 380.3万円 | 230,690人 |
男性 | 28.54万円 | 78.48万円 | 420.9万円 | 11,400人 |
年齢による違い
続いて、年齢別の平均給与を見てみましょう。年齢(男女計) | 決まって支給する 現金給与額 |
年間賞与その他 特別給与額 |
年収 |
---|---|---|---|
20~24歳 | 22.14万円 | 46.83万円 | 312.5万円 |
25~29歳 | 24.29万円 | 71.08万円 | 362.5万円 |
30~34歳 | 25.48万円 | 74.46万円 | 380.2万円 |
35~39歳 | 26.88万円 | 83.86万円 | 406.4万円 |
40~44歳 | 26.47万円 | 80.73万円 | 398.3万円 |
45~49歳 | 27.97万円 | 85.53万円 | 421.1万円 |
50~54歳 | 28.35万円 | 94.13万円 | 434.3万円 |
55~59歳 | 27.55万円 | 87.67万円 | 418.2万円 |
60~64歳 | 25.85万円 | 67.34万円 | 377.5万円 |
65~69歳 | 25.51万円 | 65.50万円 | 371.6万円 |
70歳~ | 28.19万円 | 84.51万円 | 422.7万円 |
その後も年齢が上がるほど給与はアップしていき、40代で若干下がるものの50~54歳でピークの434万円に。
経験年数による違い
次に、保育経験年数による給与の違いを見てみましょう。経験年数(男女計) | 所定内の給与※ | 年間賞与その他 特別給与額 |
年収 |
---|---|---|---|
0年 | 21.34万円 | 8.78万円 | 264.8万円 |
1~4年 | 22.63万円 | 61.45万円 | 333.0万円 |
5~9年 | 23.76万円 | 72.36万円 | 357.4万円 |
10~14年 | 25.17万円 | 79.54万円 | 381.5万円 |
15年以上 | 28.44万円 | 97.03万円 | 438.3万円 |
最初の5年間で年収は約80万円アップしており、以降は5年ごとに20万円、30万円、50万円と、経験年数が増えるほど上がっています。
保育士の給与は経験年数が重視される傾向があり、長く働くほど給与アップが見込めるといえるでしょう。
役職による違い
保育施設における役職のトップは園長(施設長)、続いて主任保育士であることが一般的です。それぞれの給与は下記となります。役職 | 平均勤続年数 | 月額(賞与込み) | 年収 |
---|---|---|---|
施設長 | 25.8年 | 56.58万円 | 679.9万円 |
主任保育士 | 21.7年 | 42.29万円 | 507.4万円 |
※私立保育園の場合
施設長は年収679万円、主任保育士は507万円、勤続年数はどちらも20年以上とベテランが多く、長く働き役職を持つと更に給与が高くなることがわかります。
また施設長、主任保育士以外の役職としては「専門リーダー」「職務分野別リーダー」「副主任保育士」などがあります。これは、国が実施している「処遇改善等加算Ⅱ【保育士等キャリアアップ研修制度】」により設定が推奨されている役職で、各役職によって月額5千円~最大4万円の手当が支給されるため、一般的な保育士よりも給与は高くなるでしょう。
制度について詳しくは後述します。
※参考資料:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】/内閣府
各都道府県による違い
各都道府県によっても平均給与は大きく異なります。給与水準が高い都道府県順に、1~10位まで紹介します。都道府県 | 決まって支給する 現金給与額 |
年間賞与その他 特別給与額 |
年収 | |
---|---|---|---|---|
1位 | 東京 | 29.86万円 | 89.74万円 | 448.0万円 |
2位 | 愛知 | 28.78万円 | 92.84万円 | 438.2万円 |
3位 | 新潟 | 29.31万円 | 85.84万円 | 437.5万円 |
4位 | 奈良 | 28.11万円 | 96.17万円 | 433.4万円 |
5位 | 広島 | 27.62万円 | 84.41万円 | 415.8万円 |
6位 | 千葉 | 29.24万円 | 64.28万円 | 415.1万円 |
7位 | 京都 | 26.95万円 | 84.71万円 | 408.1万円 |
8位 | 大分 | 23.90万円 | 111.5万円 | 398.3万円 |
9位 | 長野 | 25.98万円 | 81.92万円 | 393.6万円 |
10位 | 神奈川 | 26.93万円 | 68.10万円 | 391.2万円 |
最も低いのは島根県で年収307万円。東京都と比較すると140万円程度の差があります。
保育施設数や利用児童数、待機児童数が多い都道府県は保育士の需要も高く、独自の支援制度も充実している傾向にあると考えられます。
※参考資料:「保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)」/厚生労働省
私立と公立の違い
最後に、私立と公立の保育士ではどのくらい給与の違いがあるのか見てみましょう。職種 | 私立 | 公立 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
勤続年数 | 月額(賞与込み) | 年収 | 勤続年数 | 月額(賞与込み) | 年収 | |
施設長 | 25.8年 | 56.58万円 | 679.9万円 | 31.8年 | 63.29万円 | 759.4万円 |
主任保育士 | 21.7年 | 42.29万円 | 507.4万円 | 25.1年 | 56.17万円 | 674.0万円 |
保育士 | 11.2年 | 30.18万円 | 362.1万円 | 11年 | 30.31万円 | 363.7万円 |
しかし、「主任保育士」や「施設長」といった役職がつくと公立保育士の方が月額13万円以上、年収は80万円以上高くなっていることがわかります。
公立の保育士は地方公務員であることから、私立のように経営状態が給与や賞与に影響されることはありません。給与はすべて各自治体の規定にのっとって支給されます。
長く働き役職を得た場合、公立保育士の方が大幅な給与アップが見込めると言えるでしょう。
※参考資料:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】/内閣府
保育士の給与引き上げへの取り組み
保育士の給与が年々上昇していることはお伝えしましたが、ここではその要因となっている保育士の賃金改善に向けた制度について紹介します。処遇改善等加算Ⅰ
全職員の平均勤続年数やその他要件によって加算率が決まり、国から保育施設に一律で手当が支給される制度です。保育士の給与アップおよび人材確保を目的として、2015年(平成27年)から導入されています。基礎分、賃金改善要件分、キャリアパス要件分の3つの要件で構成され、各保育施設によって加算率が異なります。
基礎分 | ・職員1人当たりの平均経験年数に応じて2~12%加算される ・経験年数が長いほど加算率が上がる ・1日6時間以上かつ月20日以上勤務する非常勤職員を含む |
賃金改善要件分 | ・基準年度を起点として、職員の賃金改善を行っている施設に対し加算される ・加算率は6%(平均勤続年数が11年以上の施設は7%) |
キャリアパス要件分 (賃金改善要件分に含まれる) |
・役職や職務内容に応じた勤務条件や賃金体系の設定、資質向上の具体的な計画策定、計画に沿った研修の実施等を適切に行っている施設に対して加算される ※満たしていない場合は賃金改善要件分から2%減算 |
どの職員にいくら支給されるかについては各保育施設に一任されているため、詳しい金額や支給方針については勤務先に確認が必要です。
処遇改善等加算Ⅱ【保育士等キャリアアップ研修制度】
各都道府県で実施される「保育士等キャリアアップ研修」を修了し、要件を満たすことで「処遇改善等加算Ⅱ」の対象となり、手当が支給される制度です。2017年(平成29年)に厚生労働省が定めた「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」に基づき、新たに「専門リーダー」「職務分野別リーダー」「副主任保育士」が設置されました。役職によって毎月5千円~最大4万円の手当が支給され、経験年数3年~7年程度の保育士のキャリアアップや処遇改善を目指しています。
研修内容や要件についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
処遇改善等加算Ⅲ【給与の3%(月額9,000円)引き上げ措置】
保育士や幼稚園教諭等の賃金改善を目的とした措置で、2022年2月から収入の3%(9,000円)引き上げが実施されています。2022年(令和4年)10月以降は公定価格の見直しにより「処遇改善等加算Ⅲ」として継続されることとなりました。給与明細には「処遇改善手当Ⅲ」として記載されていますが、各保育施設により異なる場合があるため、詳細は勤務先の施設に確認してみましょう。
※出典:特定教育・保育、特別利用保育、特別利用教育、特定地域型保育、特別利用地域型保育、特定利用地域型保育及び特例保育に要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(内閣府告示第98号)/内閣府
その他の支援制度
直接手当が受け取れる制度ではありませんが、国による有益な支援の1つに「保育士等住居借り上げ支援事業」があります。いわゆる家賃補助のようなイメージですが、例えば東京都の場合は一戸あたり最大82,000円の補助を受けることができます。ただし、採用から8年以内の保育士が対象で、令和5年度(2023年度)からは7年以内に縮小予定となっています。
各市区町村により上限金額が異なるため、公式サイトで確認するとともに、勤務先で制度が利用可能かどうかも確認しましょう。
その他にも、各都道府県や各保育施設で実施されている独自の手当や支援制度について把握し、給与アップはもちろん「手元に残る額を少しでも増やす」ことを意識したいですね。
※参考資料:令和5年度 保育関係予算概算要求の概要/厚生労働省
給与アップに欠かせないことは?
保育士の給与アップには、経験年数を積み、知識や技能を身につけていくのが確実です。解説した保育士等キャリアアップ研修制度は、一度要件を満たせば全国どこでも有効になるので、対象の方はチャレンジすることをおすすめします。また、各都道府県や民間で開催されている研修に参加して見識を深めたり、先輩保育士や専門書から保育を学んだりして、日ごろからスキルアップに努めることも大切。
保育に関わる民間資格を取得することで、施設によっては資格手当が受け取れる場合もあります。
専門的な知識や技術を持つ保育士は、保護者や同僚、上司からも信頼され、昇給や昇進の可能性も高くなります。
一度身につけたスキルは、例え転職や長いブランクがあいても武器になります。いつでも給与アップのチャンスをつかめるよう準備しておきましょう。
まとめ
保育士の平均給与は右肩上がりに上昇しているものの、全職種の平均と比較するとまだまだ低い水準です。今後も、国による保育士の処遇改善にむけた取り組みをしっかりチェックしていきたいですね。日々保育の知識や技術を磨いていくことも忘れずに、給与アップ・キャリアアップを目指していきましょう。
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