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保育の年間指導計画の立て方

机の上に置かれたカレンダーとボールペン
新年度で受け持つクラスが決まったら、最初に作成する書類が「年間指導計画」。1年間、充実した保育を展開できるような計画を立てたいですよね。今回は、子どもの発達を保証する年間指導計画の作成について解説します。

年間指導計画とは

葉っぱを持って笑顔になっている女の子
年間指導計画は、クラスごとに作成する1年間の計画です。どんな保育をして、どんな力を子どもから引き出していきたいか、全体の見通しを立てることを目的として作成します。

年間指導計画の位置付け

年間指導計画は、全体的な計画に基づいて作成する1年間の長期計画です。園の方針や保育所保育指針、子どもの人権など、さまざまな要素を踏まえて作成していきます。

園によって書式は異なりますが、代表的な例では1年間を2〜4ヵ月ごとに「 I期、II期…」と分けて、期ごとにねらいや内容を作成しているところが多くあります。

作成した年間指導計画を踏まえて月案や週案、日案など、より具体的な指導計画を作成していきます。

年間指導計画を作成する目的

年間指導計画は、子どもの発達を保障するために作成します。行き当たりばったりの保育や子ども任せの活動ばかりでは、専門性を有する保育士が保育をする意味がありません。

保育士は、専門的な知識や技術を用いて適切な環境を準備することで、子どもの発達を促す役割を担っています。乳幼児期にふさわしい経験ができるよう、子どもの発達と保育の展開をイメージしながら年間指導計画を作成する必要があります。

年間指導計画を立てる前の準備

年間指導計画は、「さて、書こう」と思ってすぐに書けるものではありません。計画を立てる前に準備しておいた方がいいことを2つ解説します。

現在の子どもの姿を捉えておく

芝生の上で手をつないでいる3人の子ども
年間指導計画を立てる前に、現在の子どもの姿を捉えておく必要があります。現在の姿が計画のスタート地点になるからです。

年齢ごとの発達は、年度によって大きく変わることはありません。しかし子どもが変われば、クラスの在り方も変わります。新しいクラスに合った計画を立てる必要があります。

新年度が始まる前に、子どもたちの様子を見に行ったり、保育に携わったりできると良いでしょう。現在の担任に話を聞くのもオススメです。

発達過程を確認する

子どもたちの発達過程を確認しておきましょう。年間指導計画では、1年の発達を見据えながら計画を立てる必要があります。そのため、発達過程がわからなければ、計画を作成することはできません。

保育の専門家として、0歳〜就学前の発達過程を一通り理解しておくことが望ましいです。もし難しいという場合は、最低限、受け持つクラスの1年間の発達過程は必ず確認しておきましょう。

年間指導計画の書き方

指導計画の作成については、保育所保育指針に以下の通り明記されています。
保育所保育指針
第一章 総則
3 保育の計画及び評価
(2) 指導計画の作成
ウ 指導計画においては、保育所の生活における子どもの発達過程を見通し、生活の連続性、季節の変化などを考慮し、子どもの実態に即した具体的なねらい及び内容を設定すること。また、具体的なねらいが達成されるよう、子どもの生活する姿や発想を大切にして適切な環境を構成し、子どもが主体的に活動できるようにすること。
 
出典:保育所保育指針(平成29年告示)/こども家庭庁 >>詳細はこちら
上記の内容をもとに、年間指導計画の書き方を解説します。

子どもの姿

英語の本を指出している2人の子ども
まずは現在の子どもの姿を記入します。集団としての子どもの姿を書くことに迷いを感じたときこそ、一人ひとりの姿をよく見てみましょう。

子どもは集団で生活しているとお互いに影響し合い、共通の姿が見られるようになります。以下の視点をもって、子どもの共通点を見つけてみましょう。
  • 興味や関心
  • 経験や育ち
  • 課題
子どもの成長しようとしている姿を捉え、肯定的な表現で記入しましょう。

ねらいと内容

子どもの姿が書けたら、ねらいと内容を作成します。「ねらいと内容の違いがよくわからない」という方は、以下の考え方を参考にしてください。
  • ねらい…「こんな姿に育ってほしい」という保育士の願い
  • 内容…ねらいを達成するために子どもが経験する保育の内容
年間の計画なので、季節や行事を考慮に入れたねらいと内容を考えましょう。また、子どもの発達や興味関心も移り変わっていきます。変化を予測しながら作成しましょう。

環境構成と保育士の援助

保育士と保育士の膝の上に座っている子ども
次に環境構成と保育士の援助の項目ですが、まずは環境構成について考えるようにしましょう。保育士の援助を優先すると、子どもが主体的に行動する機会を奪ってしまうことにもなります。

環境構成を考える上で大切なことは、以下の2点です。
  • 安心・安全に過ごせる
  • 子どもが主体的に活動できる
保育は「環境を通して行う」ことが、保育所保育指針にも明記されています。安心・安全を基盤として、子どもが自発的に取り組める環境を設定することが大切です。

発達過程を踏まえた環境を用意することで、「やってみたい」という意欲を引き出します。生活に必要な物や日常的に使うおもちゃを手にとりやすい場所に配置し、子どもが主体的に行動できる環境を計画しましょう。

次に、保育士の援助について考えます。

保育士の役割として、子どもの安全を守り、情緒の安定を図ることが第一に挙げられます。また、できない部分を手伝ったり、子どもの気持ちを受けとめたりする役割もあります。

保育士は「人的環境」です。子どもの発達に必要な援助を、専門的な視点のもとで行えるよう計画しましょう。

反省・評価と改善

斜め上を見て考えごとをしている保育士
年間指導計画には、反省や評価の欄が設けられています。年度の終わりに自分の保育を見直して記入しましょう。課題が明確化されることで、専門性の向上など自身のスキルアップにも繋がります。

また、年度の途中で子どもの姿が予想とずれる場合もあります。その時は年間指導計画を修正し、子どもの姿に合った計画を立て直しましょう。

年間指導計画で保育の質を高めよう

いかがでしたか? 年間指導計画は、子どもの発達を見据えて保育の見通しを立てるために必要なものです。発達過程を繰り返し確認することで、保育の質の向上にも繋がります。

これから新年度に向けて年間指導計画を作成する方は、参考にしてみてください。

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佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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