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保育園での食育活動の進め方を解説〜基礎知識と計画・実行の手順

おりぎりを持つ子ども
「食育」については、2008年(平成20年)に改定された保育所保育指針から項目が導入されています。生涯にわたって健康で文化的な生活を送れるよう、乳幼児期から「食」の基礎力を育む保育を展開していきたいですね。今回は、食育に関する知識と保育園における活動の進め方を解説します。

食育とは

田植えをする子どもまずは、食育の定義について確認しましょう。2005年(平成17年)、食生活の乱れにより生活習慣病を招き、健康寿命が短くなっている状況を受け、食育基本法が成立しました。​​
この法律を管轄している農林水産省は、「食育」について以下のように定義しています。

食育は、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けられるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの。

出典:農林水産省「食育」とは

また厚生労働省では、以下のように「食育」を説明しています。

食育とは、国民一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図れるよう、自らの食について考える習慣や食に関する様々な知識と食を選択する判断力を楽しく身に付けるための学習等の取組みです。

出典:厚生労働省「食育」とは

食育は生きる上で基礎となる営みです。価値観や暮らしの在り方が多様化する中で、食に対する意識を高め、健康的な生活が送れる社会の実現を目的としています。

 



保育園における食育

子どもの食育
厚生労働省は保育園における食育の目標として、2004年(平成16年)に以下のような子どもの姿を挙げています。

【食育の目標 〜具体的な子どもの姿〜】
  1. お腹がすくリズムのもてる子ども
  2. 食べたいもの、好きなものが増える子ども
  3. 一緒に食べたい人がいる子ども
  4. 食事づくり、準備にかかわる子ども
  5. 食べものを話題にする子ども
出典:「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~」/厚生労働省

これを見ると、食を楽しみ、食べる意欲を育むことが保育園に求められているとわかります。

また、保育所保育指針の第3章にも「食育」に関する項目が設けられています。そこには以下のように書かれています。(一部抜粋)

保育所における食育は、健康な生活の基本としての「食を営む力」の育成に向け、その基礎を培うことを目標とすること。


保育園での食育の目標は「食を営む力」の育成です。戦後のように食べ物が不足している時代は「栄養摂取」が目的でしたが、食べ物が豊富にある現代では「どのように食と向き合っていくか」が大切になっています。

子どもが生活と遊びの中で、意欲をもって食に関わる体験を積み重ね、食べることを楽しみ 、食事を楽しみ合う子どもに成長していくことを期待するものであること。


ここでは、保育園での食事は無理やり食べさせられるものではなく、友だちや保育士と一緒に楽しみながら食べるものだということがポイントになっています。

子どもが自らの感覚や体験を通して、自然の恵みとしての食材や食の循環・環境への意識、調理する人への感謝の気持ちが育つように、子どもと調理員等との関わりや、調理室など食に関わる保育環境に配慮すること。


食育とは、保育士が子どもに口頭で教えることではなく、物的・人的環境を整えることで、子どもが自分なりに感じたり、考えたりできる体験を保証することですね。

体調不良、食物アレルギー、障害のある子どもなど、一人一人の子どもの心身の状態等に応じ、嘱託医、かかりつけ医等の指示や協力の下に適切に対応すること。栄養士が配置されている場合は、専門性を生かした対応を図ること。


子どもによって食べられる食材や量が異なります。集団の中でも個別の配慮が欠かせません。一人ひとりに応じた専門的な対応が必要です。

以上のことから保育園における食育は、体験を通して楽しく取り組むものであり、保育士や栄養士は専門性を生かして、子ども一人ひとりに合った対応を行うことが大切だと言えます。

出典:保育所保育指針(平成29年告示)/厚生労働省

 

計画の立て方

枡に入ったお米
保育園における食育の目的やポイントが理解できたら、続いて計画の立て方について見てみましょう。食育計画について、保育所保育指針では以下のように記載しています。

乳幼児期にふさわしい食生活が展開され、適切な援助が行われるよう、食事の提供を含む食育計画を全体的な計画に基づいて作成し、その評価及び改善に努めること。栄養士が配置されている場合は、専門性を生かした対応を図ること。

出典:保育所保育指針(平成29年告示)/厚生労働省

食育には計画と評価、改善のサイクルが必要であると書かれています。保育士と栄養士、それぞれの専門性を生かして連携を図ることが大切です。

また、保育所保育指針解説では以下のように書かれています。

全体的な計画に基づいた食育計画は、指導計画とも関連付けながら、子どもの日々の主体的な生活や遊びの中で食育が展開されていくよう作成する。

出典:保育所保育指針解説/厚生労働省

食育は、保育と切り離して考える事はできません。食事だけでなく、生活や遊びの中で食育が行えるような計画を立てる必要があります。

以上のことから、食育計画の立て方は以下のような流れになります。
  1. 全体的な計画に基づき、園全体の食育目標を決める
  2. 園の食育目標をもとに、発達に応じたねらいをクラスごとに決める
  3. ねらいを達成するために必要な経験を、保育の内容に取り入れる
発達に合わせた取り組みを積み重ねていくことが大切なので、園生活全体を通して段階的に食育活動を行う必要があります。園の目標を共通事項として、年齢や発達過程に応じたねらいと内容をクラスごとに作成しましょう。

進め方・事例

ここからは、子どもが楽しみながら学べる食育活動の実例をご紹介します。

野菜の栽培・収穫

芋ほりをする子どもたちと大人
食育の1つとして、野菜を育てている保育園は多いかと思います。苗植えや水やりを通して野菜の生長を楽しむことで、食材に対する関心を高めるきっかけになります。苦手な野菜でも、自分で育てた野菜なら「食べてみたい」と感じることも。

栽培の意欲を保てるよう、野菜の生長を写真で残したり、収穫した数だけシールを貼ったりする活動もおすすめです。

地域の商店街へ買い物

八百屋の店頭
給食の材料を地域の商店街から仕入れているのであれば、お店への買い物や見学に行ってみてはいかがでしょうか。普段給食で食べている食材を、誰がどのように加工しているのか知ることができます。

お店に行くだけでなく、保育園に招いて、魚の解体ショーなどを開催するのも楽しいですね。地域のお店屋さんと関わりを重ねていくことで、子どもは食への関心を深めていくことが期待できます。

クッキング

バナナを切る子ども
調理の過程に参加することで、食に対する興味を広げたり、意欲を引き出したりすることが可能になります。

1〜2歳児クラスでは、きのこをほぐしたり、袋に入れたトマトを潰したりする活動が人気です。3〜4歳児では、皮むきがおすすめ。春にはそら豆やタケノコ、夏にはトウモロコシなど、季節の食材に触れる機会を設けてみましょう。5歳児では、包丁を使ったカレー作りや豚汁作りもできるように。事前に栄養士と相談をしながら、子どもにできる体験を取り入れてみましょう。

さまざまな人と食べる

いつも同じグループではなく、さまざまな人と食事を共にすることは、子どもの食に対する意欲を育みます。

年下の子と食べる時には、いつもより良い姿勢で食べて見本になろうとする姿が見られることも。他のクラスの保育士や栄養士、園長など、さまざまな大人と食べる機会を設けてみても良いでしょう。「人と一緒に食事をする時間は楽しい」という体験を増やしていきたいですね。

食育で生きる力を育てよう

保育園における食育とは、「食を営む力」を育むことです。まずは「おいしい」「楽しい」と感じられる食事の場を作るところからスタートしましょう。保育士も食に対する関心を深めながら、子どもと一緒に食育活動を楽しんでいきたいですね。他の職員とも連携しながら、子どもが食と関わる体験を増やしていくことで、「生きる力の基礎」を育んでいきましょう。

食育活動を考えている方は、参考にしてみてくださいね。

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佐野きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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