うつ病の原因と症状

うつ病は、精神的や身体的なストレスが重なるなど、さまざまな原因により脳の機能障害が起きて引き起こされる気分障害の一つです。平成29年(2017年)に厚生労働省が実施した調査によると、「うつ病など」に当たる「気分[感情]障害(双極性障害を含む)」の患者数は127.6万人となっています。
「気分が落ち込んでいる」「憂鬱である」といった気分を“抑うつ気分”と言い、さらに、抑うつ気分が強い状態を“抑うつ状態”と言います。そしてこのような状態が重くなると、うつ病と診断されます。今回は、誰でも患う可能性があるうつ病についてのお話をしていきたいと思います。
<うつ状態で見られる症状>
- 抑うつ気分
- 何をしても楽しくない
- 思考力が落ちる
- 悪いことをしたように感じて自分を責める
- 疲れているのに眠れない
- 食欲がない
- 疲れやすく、体がだるい
- 飲酒量が増える
参考:厚生労働省「患者調査」平成29年
参考:知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス「うつ病」/厚生労働省
保育士がうつ病になりやすい原因は?
どんな仕事に就いていても、うつ病を患う可能性があります。もちろん保育士も例外ではありません。また、うつ病を理由に退職や休職をする人もいます。人によって原因はさまざまですが、今回は保育士がうつ病になりやすいと考えられる理由をご紹介します。人間関係の悩みが多い

人間関係をなくすことはできませんが、仕事上での関係だと割り切って深く考えすぎないようにすることも、心の負担を軽減するひとつの手です。
仕事量が多く休めない
保育士の日々の仕事はとても忙しく、園によっては持ち帰り仕事や残業が当たり前のようになっているところもあります。そのため、休日にも仕事をしなければいけない状態に陥り、疲弊してしまうことも。こうした勤務環境が続くことで自分のプライベートの時間が取れず、常に仕事のことで頭がいっぱいになって心身ともに疲れ切ってしまいます。リラックスして息抜きができる環境や、リフレッシュする時間が取れないと、精神的にまいってしまい、悪循環に陥ってしまいます。この場合は、職場環境や働き方を変えることも含めて、現状を改善することを考える必要があります。
仕事内容へのストレスが大きい
保育士は、子どもの命を預かる大切な仕事です。それがやりがいである反面、責任感を感じ過ぎてしまい、知らない間に仕事に対する不安が大きくなっていることもあります。責任を持って仕事をすることは素晴らしいことですが、あまり気負いすぎないように意識することも大切です。ひとりで抱え込まず、周囲と仕事を分担したり、同僚に相談しながら業務を進めるようにしてみてください。理想と現実のギャップが大きい
保育士の中には、仕事に対する理想と現実の差を感じて「リアリティショック」を受ける方も多いようです。夢や希望を持って保育士になったものの、現実では激務や人間関係の悩みが多かったりと、そのギャップについていけず疲れ切ってしまうこともあります。就活に際しては、事前に就職先の園を見学しておくなど、できる範囲での下調べをしておき、ある程度の雰囲気を知っておくと良いでしょう。適応障害との違いは?

適応障害とは、ある特定の状況や原因が強いストレスとなり、気分が落ち込んだりする症状を指します。発症の原因がはっきりしていて、そのストレスを取り除くことで症状が改善されることが多いようです。
またうつ病はどんな状況でも憂鬱な気分で楽しめない症状に対し、適応障害は自分が好きなことなどは楽しめるという違いも見られます。
ただし、適応障害の症状が悪化してうつ病になることもあるようで、「適応障害だから大丈夫」「うつ病だから大変だ」ということはありません。どちらも心身の健康に関わることなので、しっかりと対応をする必要がありますね。
参考:知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス「適応障害」/厚生労働省
「もしかしてうつ病?」と思ったら
自分の状況を振り返り、「もしかして自分はうつ病かも」と不安になってしまう方もいるかもしれません。そんなときに取りたい行動を考えていきましょう。医療機関に相談する

信頼できる人に相談する
「いきなり病院に行くのは気が引ける」という方は、まず周囲の誰かに相談するのも良いでしょう。相談できない方は、きっと「みんな大変なのに自分だけ『うつかもしれない』なんて…」「忙しいのにこんな相談をしたら迷惑に違いない」など、自分の体調よりも周囲のことを配慮して踏みとどまってしまっているのではないでしょうか。しかし、ひとりで抱え込んでいるとさらに気持ちが滅入ってしまうこともありますよね。家族や園長先生、友人、恋人など、信頼できる相手に相談してみましょう。
どうしたいのか考える
仕事が原因でうつ状態や適応障害になっているのであれば、場合によっては今まで通り働き続けるのは難しいかもしれません。今後の働き方に関して、自分がどうしたいのか一度よく考えてみましょう。もちろん、必ずしも「休職しなければいけない」「辞めなければいけない」ということはありません。園によっては短時間勤務にしたり、担任を入れ替えるなどの対策をとってくれることもあります。まずはゆっくり、自分がこの先どうしていきたいのかを考えてみましょう。
どうしても辛いときは退職・転職も
一定期間のお休みや働き方の改善を経て、症状が回復することもあります。しかし人によっては今の職場にいることや、保育の仕事に向き合うこと自体がとても辛くなっている場合もあります。そんなときは、無理をせず退職や転職をすることも視野に入れておきましょう。職場環境が影響している場合は、転職をして別の環境に身を置くことで症状が改善されることもあります。「他の先生に迷惑がかかる」「子どもたちが戸惑ってしまう」と責任を感じてしまうかもしれませんが、一番大切なのは自分自身の健康です。まずは自分を大切にすることを忘れないでくださいね。
ひとりで判断せずに相談を
近年はインターネットでセルフチェックができてしまうので、その結果を見て「自分はうつ病なんだ」と思い込み、さらに不安になってしまう人もいます。セルフチェックはあくまで参考と考えましょう。自分だけで判断をせずにまずは医療機関などの専門家に相談してみることが大切です。辛い状況をひとりで抱え込まず、自分が健康に人生を送るための最善の方法を考えていきましょう。
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