ある日の出来事
年末のある日、年長組のA君に廊下で呼び止められました。 (私は今年度、静岡市の保育園にフリーの保育士としてお手伝いに行っています。)A「あ、ゆっこ先生! ちょっと、ゆっこ先生にお願いしたいことがあるんだよ。 時間のある時でいいんだけどね…」
なんて、謙虚なお願いなんでしょう!
私「なあに?どうしたの?」
A「ぼくのクラスのうさぎちゃんが大変なことになってるんだよ。 ゆっこ先生が作ってくれたうさぎちゃん。 この股の所がビリビリになっちゃって…」
A君の「うさぎちゃん」というのは、こちら。 くまちゃんとセットで幼児組各クラスにプレゼントした私の手作りぬいぐるみです。 (この写真は隣のクラスのもの)
どういうこと?と思いながら保育室へ見に行くと、確かにかなり可哀想なことになっていました。 完全に股の部分の布が裂けてしまっています。
「これは手術が必要だね。ちょっと入院させてね。」と、うさぎちゃんを預かりました。
うさぎちゃんの入院
股の部分が前後合わせて10㎝ほど破けているので、ただ縫い合わせても目立ってしまいます。 力のかかる部分でもあるので、しっかりと補強しないと、すぐにまた破けてしまうかもしれません。その日から、毎日のように年長クラスの子どもたちに会うと
「ゆっこ先生、うさぎちゃん直った?」
「もう入院終わる?」
と聞かれます。うさぎちゃんの退院を心待ちにしてくれているのが伝わってきます。
そうして、ようやくお正月明けに、うさぎちゃんは退院できました。その姿がこちらです。 元の赤い布をお腹のラインでカット。 代わりにデニム生地を使って下半身を作り、足を付け替えました。 赤い柄のシャツにデニムのパンツを合わせた、オシャレなうさぎちゃんに生まれ変わりました。
大手術となりましたが、これならしばらく丈夫に過ごせることでしょう。 (隣のクラスのうさぎちゃんと並んだ写真)
数週間ぶりに我が家で帰ったうさぎちゃん、クラスのお友達みんなに大歓迎されていました。
よかった、よかった。
うさぎちゃんを通じて改めて実感した布おもちゃの良さ
手作り布おもちゃの良いところの一つが「直せる」ということです。大好きなおもちゃ・お気に入りおもちゃは、子どもたちと過ごす時間が長い分、劣化や破損が早くなりがちです。
そんな大切なおもちゃだからこそ、「壊れたら終わり」「ゴミ箱行き」ではなく、直してまた末永く子どもに寄り添って欲しいものです。
うさぎちゃんが、どうしてあんな破け方をしてしまったのか、今回私は尋ねませんでした。
もちろん、壊さず大切に使ってくれればそれが一番です。 でも、何かのきっかけで壊してしまった子も、やっと退院してオシャレになったうさぎちゃんを見て、今はきっとホッとしていると思うんです。
そして「これからは大切にしよう。」って密かに心に留めてくれているんじゃないかな。
今回、A君が私を呼び止めてまで「うさぎちゃんを直してほしい」と言ってくれたことが本当に嬉しかったです。
「うさぎちゃんは、ゆっこ先生が作ったもの。ゆっこ先生ならきっと何とかしてくれる」と思ってもらえたこと。 私が心を込めて作ったうさぎちゃんのことを、クラスみんなで、こんなに大切に思ってくれていること。
保育室に手作りの布おもちゃがあるということは、本当に子どもたちの心を豊かにしてくれるんだなぁとしみじみ感じた出来事でした。
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