乳児のお散歩
0〜1歳児のお散歩はどこへ行って、何をしていますか?ベビーカーやカートに乗せて近隣をぐるっと回ってくる外気浴や、公園の砂場で遊んだり、電車やバスを見に行ったり、ご近所のお庭の花を見に行ったり・・と子どもたちはほとんど歩かず、保育者ばかりが体力を使い、疲れて帰って来るなんてこともあるのではないでしょうか。
これからの季節は、涼しい時間に子どもたちをカートに乗せて、近隣を回るのは気分転換になるので、こうした散歩を取り入れるのも良いと思います。
また午前中に陽の光を浴びると体内時計が整うので、午前寝をしている0歳児もベビーカーに乗せて出かけるのはおすすめです。
ですが、それだけではもったいない。
自然との関わりは、0〜1歳児の子どもたちにとって、とても大切な機会なのです。
小さな自然に気づく子どもたち
先日、ある保育園の乳児のお散歩に一緒に行った時のことです。いつも砂場に道具を出すので、子どもたちも砂場に留まって遊ぶことが多いとのことでした。その日は私の提案で砂場道具を出さずに子どもたちがどう遊ぶかを見守ってみました。
すると、子どもたちは砂場の近くにあった大きな朽ちた切り株に吸い寄せられていき、穴を覗いてみたり、手でカリカリと朽ちた幹を剥がしてみたり・・そのうち「なにかいるよ」と、その中にいた小さな虫を見つけて、しゃがみ込んで観察が始まりました。
今度は、すぐ近くで小さなアリがエサを運んで歩いているのを見つけて、「あ、アリさんなにかもってる」と、アリの行列をじ〜っと見つめていました。
大人からすると「あぁ、アリさんだね」と、すでに知っていることとして、あまり感動もないかもしれません。朽ちた切り株も、“ボロボロの木がある”というだけの認識かもしれません。
でも子どもたちの目には、アリの動きも朽ちた切り株も、全てが新鮮で面白いものとして映っています。そして目の前にあるものに手を伸ばし、触れてみて、その感触一つ一つを味わい・・自ら関わることで心が動いているのです。
研究者のような子どもの姿
別の保育園の1歳児クラスで、初めてせせらぎのある公園へ出掛けました。保育者は、どこまで水に触れさせるかを迷いながらも、暑い日だったので濡れてもいいか・・という様子でした。初めは子どもも保育者も、せせらぎの縁にしゃがんで、水の流れを眺め、葉っぱを流してみたりする程度に留まっていました。そのうち、子どもたちはせせらぎの縁ギリギリの所から頑張って手を伸ばし、水をパシャパシャし始めました。手のひらで水を感じ、その感触を楽しんでいる様子でした。 しばらくすると、低月齢だけど何でも興味津々で活発な女の子の興味が、水しぶきに移りました。だんだん夢中になり、水しぶきが自分の顔に跳ね返ってくると、一瞬驚いて動きが止まりました。
でもすぐにまた水面を叩いていくうちに、どんどん叩く力が強くなり、自分の顔に浴びる水の量も多くなっていきました。
感覚的に力の強弱やそれに伴って大きくなる水しぶきを体験しているその様子は、まるで研究者さながらでした。その子につられて、周りの子も次第に水の触れ方が大胆になっていきました。
このような姿は、水遊びの時にもよく見られる姿です。
全てが初めての”出会い”
自然物に限らず、0〜1歳児は、まだまだ初めて触れるもの・ことが多く、子どもたちにとっては「人生で初めての遊び・活動」で、初めての”出会い”ばかりです。私たち保育者にとっては「いつもの遊び」「例年通りの活動」かもしれません。でも、子どもたちにとっては初めての体験なのです。
その初めての”体験”で、好きになったり、嫌になってしまったりということもあります。
子どもたちが「この世界はおもしろい!」と感じられるような”出会い”ができるかどうかは、私たち保育者の関わりに大きく左右されると思っています。
朽ちた切り株を「汚いから触らないで!」と注意したらどうでしょうか。せせらぎで水しぶきをあげ始めたところで「わ〜!やめて!!」と大きな声を出したらどうでしょうか。
この世界は、”やってはいけないことだらけ”になってしまい、子どもたちの探究心の芽は萎んでしまうのではないでしょうか。
乳幼少期の子どもたちには、自ら世界に関わり、「なんだろう?不思議だな」という探究心をどんどん発揮してほしいと願っています。その探究心が、成長の糧となり学びの芽となるのですから。
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