これまで受けた相談は5,000件以上
はじめまして。言語聴覚士の原哲也です。この度、『発達障害のある子の保育』というテーマで連載をすることになりました。言語聴覚士は、話すこと、聞くこと、食べることに関することを専門とする国家資格です。その中での私の専門は「子ども」。コミュニケーションやことばの発達、食事の課題への支援をおこないます。吃音や場面緘黙(ばめんかんもく)、聴覚障害も専門です。
この仕事を始めて2020年で24年。これまでに5000件以上の相談を受け、さまざまなお子さんと関わってきました。
現在は、児童発達支援事業所『WAKUWAKUすたじお』(2016年に長野県諏訪市に設立)で、就学前の子どもの児童発達支援事業、保育士・教諭対象の専門講座、主に発達障害がある子と保護者を対象とするワークショップなどを運営し、出版もしています(『発達障害のある子と家族が幸せになる方法』(2018年9月学苑社))。また、市町の委託で保育園・幼稚園・小学校の巡回相談も行っています。
保育現場での発達障害のある子の対応
さて、保育園や幼稚園の現場は、日々の保育から教材準備、保護者対応、外部研修と、とにかく毎日忙しいです。このような中で、「保育士の声かけに反応しない」「暴力をふるう」「活動に興味を示さない」「部屋から出て行く」「何回言ってきかせても同じことを繰り返す」「そういう子どもがいると、その対応に大きなエネルギーを使って正直、大変」という話をよく耳にします。
反対に、「部屋の隅で黙々とひとりで遊んでいる」「ことばが出ないなどの子どもがいて、どうしてあげたら良いのかがわからない」ということも聞きます。
これらの行動は、発達障害によるものであることがあります(もちろんそうでない場合もたくさんあります)。
もしこれらの行動が発達障害によるものである場合、定型発達の子どもと同じ対応では大抵の場合うまくいきません。結局大きな声で黙らせてしまったり、「だめよ」「やめて」と禁止の声かけばかりしてしまう。そのうち「〇〇ちゃんはああだから」と、諦めモードに入る…。このような様子は保育現場で本当によく見られます。
発達障害のある子への対応、どうしたらいいのでしょうか。
基本は「その子はなぜその行動をするか」を「正しく」捉え、その上で「その子がその行動をしなくてすむように関わる」ことです。
このコラムでは、よく見られる事例を取り上げながら、「子どもがなぜその行動をするのか?」「その行動に対してどう対応したらいいのか?」を、発達障害のある子についての考え方の基礎理論を交えながら月1回ペースでお話ししていこうと思います。
発達障害のある子の特徴、ことば、関わり方、情緒、友だち関係、運動、生活習慣の課題、生活リズム、保護者との関係の作り方など、よく出会う課題について取り上げ、続けて読んでいただくことで、知識や考え方を理解し、現場で役に立ててもらえる。そういうコラムを目指します。
子どもの行動の理由がわかり、適切な対応がとれるようになると、子どもとの関係が深まったり、好転したりします。結果的に保護者の信頼にも繋がると思います。どうかお付き合いください。
最初に取り上げるケースは
さて、最初のケースです。竜星くん(※)は4歳の男の子です。しょっちゅうお友だちを叩いてしまいます。
今日も紙芝居の時間、注目している竜星君の姿を見届け、紙芝居をめくろうとした時、隣に座る翔太君が泣き出しました。
「竜星君が叩いた~」と翔太君は泣いてます。
竜星君はニコニコしています。この子はなぜ叩くのでしょうか。この子に対してどんな対応が考えられるでしょうか。
次号で考えてみたいと思います。 ※お子さんの名前はすべて仮名です
下記、ホームページよりダウンロードして活用してください。
http://www.waku-project.com/
<著書>