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子どもの『困った行動』への対応を阻むものとは?【 保育者の関わり講座・理論編③】

雪景色と空
言語聴覚士として長年児童発達支援に携わってきた原 哲也さんのコラム。保育士であれば知っておきたい「気になる子」への関わり方について解説していきます。今回は「困った行動」への対応を阻む要因について見ていきましょう。

今回のテーマ

「困った行動」を分析しても解決しないこと、ありませんか?

前回までのコラムでは、子どもの「困った行動」の4つの要素についてお話ししました。しかし、時に4つの要素を分析して対応してみても解決しないことがあります。

「4つの要素以外の要因」が何かあるのです。今回は、「困った行動」への対応を阻む「4つの要素以外の要因」について考えていきます。

「困った行動」が解決しない実際のケース

雪景色
まずは、実例をあげてみましょう。

外あそびの最中、奇声を上げ続けるAくん(5歳)。まだおしゃべりができないAくんは嫌なことがあると奇声をあげることがあるのですが、それにしても今日はかなりの頻度です。

いつもは外あそびが大好きなのに、今日はずっと奇声をあげ続けています。

保育士は考えます。Aくんの奇声の「理由」は何だろう?

要求?注目?何かの活動への拒否?感覚刺激がほしい?奇声をあげることでAくんは何を得ているか?何が奇声のきっかけになっているのか…?

Aくんの望みをいろいろと想像して対処します。しかし、対応する保育士が変わっても、活動を変えてみても奇声を制止せず、好きなだけ声を出させても状況は変わりません。

熱はない。頭から順に身体を触ってチェックしますが、傷などはないし痛がる様子もありません。最後に靴を脱いでもらったところ「あっ…!」靴の爪先に小石が入っていたのです。

これが当たって痛かったのかも? そう思い小石を取ると…大当たり! Aくんはいつもの様子に戻り、奇声はなくなりました。

「困った行動」に影響を及ぼす外的な要因とは?

この例では、Aくんの望みは「小石が当たって痛い。取り除いてほしい」でした。

このような場合には、いくら子どもを観察し、「困った行動」の分析をして対応してみてもうまくいきません。このように、「困った行動」を成り立たせる4つの要素以外で、「困った行動」に影響を及ぼす要因を状況事象」と言います。

「状況事象」は、内容(生理的要因、物理的要因、人的環境要因)と、いつの要因か(過去要因、併存要因、未来要因)によって分類されます。
  生理的要因 物理的要因 人間的環境要因
過去要因     ・朝、母親に叱られた
・1時間前に喧嘩した
・他児から無視された
・意地悪された
・やりたいことを阻止された
併存要因 ・腹痛、頭痛、怪我などの痛み
・のどの渇き、空腹や満腹
・睡眠不足や疲労
・騒音
・高温
・多湿
・部屋の広さ
・気になる物品の存在
・嫌いな人の存在
・好きな人の存在
・適度なスケジュール
・関わり方の違い
・声掛けのタイミング
未来要因   ・天気予報 ・難しい課題の後に好きな課題がある
・夕食に好きなものが用意され
ている
・怖い父親が帰宅する
・プレゼントをもらえる
 
『行動障害の理解と援助』(2000年/長畑正道ら編著 コレール社P107 より引用改変)

「状況事象」に対応する方法

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原 哲也(はら てつや)

この記事を書いた人

原 哲也(はら てつや)

言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」代表。1966年生まれ、千葉県出身。大学卒業後にカナダの障害者グループホーム勤務、東京の障害者施設職員勤務を経て、29歳から小児障害児リハビリテーション専門職として、長野県の病院や市区町で発達相談や障害児の巡回相談業務に携わる。『発達障害児の家族を幸せにする』を志に、全国を駆け回り、乳幼児期から青年期までの発達障害児と家族の応援をおこなっている
<WAKUWAKUすたじおHP>
http://www.waku-project.com/

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