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発達障害の子の「ひとりで繰り返す遊び」にどう向き合う?【保育者の関わり講座】

発達障害の子の「ひとりで繰り返す遊び」にどう向き合う?
言語聴覚士として長年児童発達支援に携わってきた原 哲也さんのコラム。保育士であれば知っておきたい「気になる子」への関わり方について解説していきます。>>連載の記事一覧はこちら

発達障害のある子と「ルールがある遊び」の対応方法

前回は「発達障害のある子のルールがある『遊び』への参加についての考え方」として、まず、「安心できるようにする」というお話をしました。 今月は、「「遊び」の指向性」と「対人指向性」の軸で「遊び」を考える」ということをお話しします。

子どもに、
1、自分から
2、
満足するところまで
3、
楽しむことができる
という3つの要素を充たす「遊び」を補償するにあたって、保育士が子どもに「遊び」を提案したり、集団遊びに誘ったりすることがあります。

適切に働きかけるには、どんな「遊び」がその子にとって3つの要素を満たす「遊び」なのかについて、ある程度見当をつけておく必要があります。

ここで有効なのが、「『遊び』の指向性」と「対人指向性」の軸で「遊び」を考える方法です。
湖の景色

「遊び」の指向性=どういう「遊び」を好むか

定型発達の子は、想像力を働かせる遊び、さらに「遊び」を変化させることを楽しむことが多いです。おままごとなどがその例です。

それに対して発達障害のある子の中には、想像力を働かせて遊ぶことや変化を好まず、例えば、ミニカーを前後に動かしたり、並べたりするなど、一定のパターンを繰り返し楽しむことが好きな子どもがいます

一定のパターンを繰り返すことが楽しいのです。心地よいのです。そのような子どもには、「変化」は楽しいことではないのです。

「同じことを繰り返すことが楽しい」という「『遊び』の指向性」は私たちには理解しにくいかもしれません。

しかし、子どもの「遊び」を補償する、すなわちその子が3つの要素を充たす「遊び」ができるよう支援する、には「同じことを繰り返すことが楽しい」という「『遊び』の指向性」があることは覚えておきたいことです。
木のおもちゃ

「対人指向性」=仲間との「遊び」を好むか、ひとりで遊ぶのを好むか

仲間関係を好み、安定した人間関係を作っている子どもにとって、集団での「遊び」は「楽しみ」であり、「満足」するものです。ですから、仲間で遊ぶことを好みます。

しかし発達障害のある子、特に自閉症スペクトラム障害の子どもの場合は、安定した仲間関係がなかなか作れず関係が流動的で、時には仲間との関係が緊張やストレスを感じるものであることがあります。

そのような子どもにとっては、集団での「遊び」は「楽しくない」、ひとりで遊ぶのが「好き」で「満足」です。だから仲間で遊ぶよりひとりで遊ぶことを好みます。

「遊びの指向性」と「対人指向性」から「遊び」を提案し、子どもを支援する

遊びの指向性を表した図

「『遊び』の指向性」「対人指向性」の組み合わせで、「その子がどんな『遊び』を楽しめるか」の方向性がある程度わかります。

①「創造的、変化に富む遊ぶ」×「仲間との『関係』を好む」の子ども
このタイプの子どもの場合は、自由度の高い創造的な「遊び」やドキドキする「遊び」を仲間と一緒にどんどんやるでしょうから、保育士は、少し引いたところで必要な部分だけ支援をしてあげるだけでいいでしょう。

②「創造的、変化に富む遊ぶ」×「仲間との『関係』が浮動的、対人不安」の子ども
このタイプの子どもは、対人不安があることで「創造的、変化に富む『遊び』」を本当はやりたいのにできないでいることがあります。

保育士が比較的小さなグループでその子と他の子どものとの仲介をして、その子が他の子と一緒に遊べるように支援します。最初はブロックやままごと等の単純な「遊び」を一緒にできるように支援し、徐々により創造的、変化に富むごっこ「遊び」や「砂遊び」などに誘っていくのがいいでしょう。

③「パターン的、繰り返しの『遊び』を好む」×「仲間との「関係」を好む」の子ども
大勢で、パターン的、繰り返しの「遊び」をするのが好きなので、比較的単純なルールで大人数でする「遊び」がいいでしょう。

「玉入れ」や「しっぽとり」や「だるまさん転んだ」、「じゃんけん電車」、「2人一組の玉運び」などです。
中には興奮したり、ふざけたりする子どももいますので、保育士は興奮しすぎる手前でクールダウンするようにアシストしてあげたいです。

④「パターン的、繰り返しの『遊び』を好む」×「仲間との『関係』が浮動的、対人不安」の子ども
最も配慮を要する子どもです。まず、考えなくてはいけないのは、①本当に「パターン的な遊び」だけが好きなのか、②他の遊びの楽しさを知らないから「パターン的な遊び」だけをしようとするのか、ということです。

どちらなのかを知るには、子どもが「パターン的な遊び」ではない「遊び」を経験する必要があります。

子どもが新しい「遊び」を経験して、それでもなおパターン的な「遊び」を好むのならば、それは子どもの好みとして尊重し、その「遊び」を補償してあげる必要があります。

ただ、このタイプの子どもの場合に難しいのは、対人不安の傾向が強いために、「遊び」には興味はあるが、人との関わりへの嫌悪感があるために、結果、その「遊び」を拒否する場合もあることです。


次回は、この点を含め、「パターン的、繰り返しの『遊び』を好む」×「仲間との『関係』が浮動的、対人不安」の子どもへの対応について、もう少し考えてみたいと思います。
 
木
 
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原 哲也(はら てつや)

この記事を書いた人

原 哲也(はら てつや)

言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」代表。1966年生まれ、千葉県出身。大学卒業後にカナダの障害者グループホーム勤務、東京の障害者施設職員勤務を経て、29歳から小児障害児リハビリテーション専門職として、長野県の病院や市区町で発達相談や障害児の巡回相談業務に携わる。『発達障害児の家族を幸せにする』を志に、全国を駆け回り、乳幼児期から青年期までの発達障害児と家族の応援をおこなっている
<WAKUWAKUすたじおHP>
http://www.waku-project.com/

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