ブラジルの「母の日」
「母の日」は、世界の多くの国で日本と同じ「5月の第2日曜日」に祝われています。ブラジルでも日本と同じ、「5月の第2日曜日」が母の日です。遡ること1932年、ブラジルで「母の日」が国の正式な法令として定められました。もともとキリスト教徒の多いブラジルでは、5月が「聖母マリアの月」として祝われていることもあり、5月に「母の日」が制定されたことは、必然だったとも言えます。こうして、ブラジルでも「母の日」が1年の中でも特別な日として、祝われ続けてきました。それは私たちが住む、カノア・ケブラーダでも同じことでした。
「母の日」を祝っていたカノア保育園
カノア保育園では、設立してから長い間、5月に母の日を祝ってきました。子どもたちと一緒に母の日に向けてプレゼントを作ったり、一緒にケーキを焼いたり。そして当日には、朝食を準備して母親を招待するのです。ただし、母の日は日曜日なので、金曜日にお祝いするのですが。ある年、いつもと同じように母の日の準備を進めていると、ある家族が放課後に私たちの元にやってきました。園児の祖母でした。
「私の家では、祖母である私が孫の母親代わりです。母の日にいつも招待してくれるけど、なんだか悪くて」
「そんなことありません。あなたは、彼にとって母親なのですから」
その時は何の違和感もなく、いつものように母の日のお祝いをしました。それから数年後、ブラジル国内で、「母の日や父の日を学校で祝う必要があるのか?」という議論がされるようになりました。
「家族の形はさまざまであり、子どもにとって両親がそろっているとは限らない。そんな中で、公の場である学校において祝うことは、子どもたちの精神を脅かすものとなるのではないか?」
賛成、反対意見が飛び交い、地域やその学校によって、母の日や父の日の祝い方が分かれていきました。この議論は未だに続いています。
カノア保育園でも、話し合いを重ねました。祖父母に育てられている子ども、親せきに預けられている子ども、シングルマザーやファザーの子ども。子どもたちには、家族というものに決まった形はないということを伝えています。それでも、「母の日」「父の日」として祝うことは、子どもたちにどんな影響を与えるのだろうか?
そして私たちは2018年に、「母の日」のお祝いを、「家族の日」のお祝いへと変えたのです。家族の日となって、母親たちから何か言われるかもしれないと思っていた私たちでしたが、それよりも、
「家族の日ってことは、俺が朝食を食べに行ってもいいんだな?」
と、お父さんや祖父母、兄弟などが嬉しそうに保育園にやってきました。私たちのように「家族の日」とすることが正しいのかどうかは分かりません。それでも、今、目の前にいる子どもたちと接する中で、考え続けていかなければと感じています。