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先生見習いは園児のお姉さん⁉みんなで作るカノア保育園<11>

子どもを抱っこする女性
2000年、ブラジル北東部にある人口300人の小さな漁村“カノア・ケブラーダ”に保育園を作った鈴木真由美さんのストーリーの11回目。今回は、助手として園の手伝いをしてくれるようになった子・ゼリーニャのお話です。

保育園を開園した当初、子どもたちが毎日通ってくる姿が当たり前になるとは、想像もしていませんでした。特に、子どもたちの兄弟、姉妹がこれほどまでに保育園に興味を持ってくれるとは!!

妹や弟を連れて保育園にやってくる子どもたち。ブラジルの小学校は3部制のため、午後の部の学校に通っている子どもたちは午前中、主に家の手伝いをしています。しかし、保育園が開園してからは、家に戻らず、妹や弟と一緒に保育園に残る子もでてきました。

「何をしているのだろう?」

その子たちは興味津々で眺めています。

始めは窓の外から眺めていた子どもたちでしたが、外遊びになると一緒に遊び、お散歩に行くときにも一緒に行くようになりました。

「家の手伝いをしてもらいたいんだから、早く帰るように言ってくれよ!」

と、文句を言いにくるお母さんもいたほどです。それでも、名残惜しそうに部屋の中を見つめる子どもたち。

私とエヴァさんは、この村の人ではありません。いつ、この村を去る時が来るか分かりません。そのため、保育園の先生として一緒に働いてくれる人を村の中で探していました。




ある日、エヴァさんはアンジェリーナのお姉さん、ゼリーニャを連れてきて、私に言いました。

「彼女は今、16歳。高校に通うように言っているし、子どものことが好きだといっているから、少し私たちと一緒に働かせてみたいんだけど、どうかな?」

少し照れたようなゼリーニャは、とても嬉しそうでした。彼女がいつも弟や妹のお世話をしている姿を見ていた私はすぐにOKを出しました。

一緒に働くようになったゼリーニャ。話を聞いてみると、彼女の夢は助産師だそうです。エヴァさんの友人でもあり、この村にエヴァさんを導いた助産師のアンジェラさんの意志を継ぎたいと考えているようでした。
 
子どもを抱っこするゼリーニャ

それから毎日、ゼリーニャはアンジェリーナと一緒に登園してきます。アンジェリーナには、

「お部屋に入ったら、ゼリーニャはあなたのお姉さんではなくて、みんなのお姉さん、Tia(おばさんという意味ですが、保育園の先生のことをこう呼びます)と呼ぶんだよ」

と伝えていました。

どうなることかと思っていましたが、アンジェリーナはゼリーニャにまとわりつくこともなく、今までと変わらず過ごしています。私たちは、まずは第一段階突破と胸をなでおろしていました。

しかしその数か月後、ゼリーニャは私たちと働くことをあきらめてしまいました。その理由は、彼氏ができたから…。

「彼と一緒にいたい」と、保育園に来ない日が続きました。エヴァさんと私、ゼリーニャの3人で話し合った結果でした。残念ではありますが、仕方がありません。

そしてその頃、私たちにはもう1人の助手がいました。彼女の名前はエリアーナ。高校を卒業したばかりの19歳でした。彼女の話はまた今度。


>>甘えん坊のアンジェリーナ。カノア保育園の子どもたち
>>“砂丘が動く”強風を待ちわびる子どもたち。カノア保育園8月の風物詩とは?

 
『ブラジル 天使が舞い降りる村のカノア保育園』
鈴木真由美(著)
発刊:2020年8月20日
「ブラジル 天使が舞い降りる村のカノア保育園」の書影
ブラジル北東部、世界的観光地のカノア・ケブラーダに隣接する貧しい漁村エステーヴァン村。
麻薬と売春の渦巻く環境の中で暮らす子どもたち。
親たちから託された願い。
それは“村に保育園を作る”ことだった。
「子どもたちに、これからの社会で生きていけるだけの力を」

サンパウロのファベーラ(スラム街)の保育園を経てエステーヴァン村にやってきた著者。
親たちの願いを受け村人たちと共に保育園作りに奮闘し、村が「未来に夢を持てるようになった」と言えるまでの道のり20年を、子どもたちのエピソードとフルカラー写真で鮮やかに描く。

>>本の紹介はこちら
鈴木真由美

この記事を書いた人

鈴木真由美

保育士。ブラジル・カノア保育園 園長。2000年にブラジル北東部にある漁村カノアに渡り保育園の運営を始める。2006年にカノアでの支援を目的にした「光の子どもたちの会」を設立(2015年にNPO法人となる)。現地の地域力向上を目指して活動中。2児の母。
<光の子どもたちの会HP>
http://criancasdeluz.org/quem_somos_nos/quem_somos_jp.html

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