新型コロナ禍で迎える新学期
未だ収束の気配が見えない、新型コロナウイルス。日本では新たに感染者数が増加し始めています。ブラジルでは、ボルソナーロ大統領の新型コロナウイルス感染により、政治的判断にも影響を与えるのではないかと考えられていましたが、経済活動優先という政策に変更はありませんでした。そんな中、ブラジルは8月3日から新学期を迎えます。前期は2020年1月27日に始まりましたが、カノア保育園は3月17日から休園となりました。約1ヶ月間。2020年度、子どもたちと過ごしたのはたったそれだけです。
頭を悩ませる現地スタッフ
7月の長期休暇中、いつもなら、「仕事のことは連絡してくるな!!」という現地のスタッフですが、今回は違いました。8月から本当に学校再開となるのか? もしそうなるのであれば、私たちはどのような対策をしなければならないのか? みんな頭を悩ませていました。新しい日常を保育園や学童教室でも実現していくために、どんなことに気を付けなければならないのか。7月の間、ずっとシミュレーションをしてきました。ブラジル人は仕事とプライベートをはっきりと分ける人がほとんどです。家には仕事を持ち込まない。休日は思い切り羽を伸ばし、仕事のことは忘れる(…私には未だできないのですが)。しかし、そんな姿を今年は見ることがありませんでした。
新月期はすべてオンライン授業に
カノア保育園の休園中も、現地のスタッフは動画の撮影や、保護者との連絡などに努めました。夜遅い時間であっても、保護者からの連絡には答えます(いつもなら、「今は家にいるので、明日保育園に着いたらお話しします」と言っていたのに…)。これまでよりもずっと精神的につらかっただろうと思います。そして8月が目前に迫ったある日、アラカチ市教育局より正式に話がありました。分かっていたこととはいえ、「やっぱり…」と思わざるを得ませんでした。
「8月3日から新学期が始まりますが、すべてオンラインでの授業となります」
4歳から義務教育のブラジルでは、休園であったところもすべて再開することが決まりました。ただし、オンラインで。小・中学校と、幼児クラスのオンライン授業が同じようにできるとは思えません。「どのように行っていくのだろうか?」率直な疑問でした。
カノア保育園では
私たちはカノア・ケブラーダ地区の公立学校校長と話し合いを持ちました。公立学校の幼児クラスでは、担任が1日1回ライブ配信をすることが決まったそうです。4、5歳の子どもが1日1回、1時間スマホの画面を見て授業を受ける。それは、私たちにとって受け入れ難い内容でした。私たちはどうしたらよいのだろうか?カノア保育園の先生たちは、まず保護者と話し合いたいと言いました。それぞれの家庭の事情、子どもと接する時間や可能なこと。それをすべて把握したうえで、8月からの環境を整えたいと。
私たちは、他と同じようなライブ配信を実施することはないでしょう。その代わりにどのような対応をしていくのか。またそれについては次回ご報告させていただきますね。
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鈴木真由美(著)
発刊:2020年8月20日 ブラジル北東部、世界的観光地のカノア・ケブラーダに隣接する貧しい漁村エステーヴァン村。
麻薬と売春の渦巻く環境の中で暮らす子どもたち。
親たちから託された願い。
それは“村に保育園を作る”ことだった。
「子どもたちに、これからの社会で生きていけるだけの力を」
サンパウロのファベーラ(スラム街)の保育園を経てエステーヴァン村にやってきた著者。
親たちの願いを受け村人たちと共に保育園作りに奮闘し、村が「未来に夢を持てるようになった」と言えるまでの道のり20年を、子どもたちのエピソードとフルカラー写真で鮮やかに描く。
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