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保育士がマスターしておきたい離乳食の基本とは?プロから学ぶ進め方のポイント【Part1】

手を伸ばしている赤ちゃん
生後5ヶ月頃から始まる離乳食。保育士にとっては学校や保育士試験でも学ぶことではありますが、現場に立つと意外と忘れていることがたくさんありますよね。今回お話を伺ったのは、一般社団法人離乳食インストラクター協会代表理事であり、保育施設の施設長でもある中田馨さん。保育士に知っておいてほしい離乳食の基本知識や与え方のコツ、園で挙がりやすい子どもの食に関する悩みの解決方法などを教えていただきました。

離乳食インストラクターとは

今回教えてくれるのは、離乳食インストラクターとしてご活躍中の中田馨(かおり)さん。保護者を始め、保育士・栄養士・歯科医など、子どもの食に関わるさまざまな人を対象に講座を開き、時には実際に保育園で調理実習を行うなど、精力的に活動しています。
離乳食インストラクターの中田馨さん
(写真:離乳食インストラクター 中田馨さん)

最近は新型コロナウイルスの影響があり、直接出向いての講座を行う代わりに、オンライン講座や通信講座などを開講しています。

初めは保護者向けで活動をされていた中田さんの講座も、今では受講者の半分以上が保育士さんや栄養士さんとのこと。そのことからも分かるように、離乳食には保育士さんにこそ知っておいて欲しいポイントがたくさんあります。まずは基本知識から教えていただきましょう。


 

知っておきたい離乳食の基本

離乳食は、子どもの月齢や食の進み具合に合わせて段階を踏んで行きます。今回は、初期・中期・後期・完了期に分けて、それぞれの時期のポイントや注意点をお聞きしました。

初期(生後5、6ヶ月頃):まずは食事に慣れることから

かぼちゃを裏ごししているところ

まずは、離乳食初期について教えてください。
 

初期は1日1回の食事から始まり、その後1ヶ月過ぎて順調であれば2回食に進んでいきます。この時期は離乳食:ミルク=1:9~2:8で、メインの栄養はミルクになっています。
  • 1日1~2回食
  • 形状はトロトロ(ヨーグルト状、ポタージュ状)
  • 食材は裏ごしする
  • 最初の1ヶ月はつぶし粥、1ヶ月後から徐々に10倍粥へ
  • 舌は前後にしか動かない
赤ちゃんの体がまだ安定しないので、食べさせるときは抱っこした先生の体をやや後ろに倒してあげると良いですよ。食べさせ方のコツは、スプーンで下唇をやさしくつついてあげることです。口が開いたら中に入れるのではなく、下唇にスプーンを置いて赤ちゃんが自分で口を閉じるまで待ちましょう。

やりがちな失敗としてあるのが、スプーンを丸ごと口の中に入れて上顎に擦りつけて食材を与えることです。上顎に食材をくっつけてしまうと丸呑みするか吐き出すかしかできない可能性があります。最初は唇を使って食べる練習をするので、スプーンは上に引き抜くのではなくまっすぐ水平に引いてあげてくださいね。

また赤ちゃんが母乳育児の場合、生後6ヶ月の時点で鉄欠乏を生じることがあるという報告が挙がっています。これを防ぐためにも、離乳食で鉄分を取り入れていきましょう。同じようにビタミンDが欠乏することもあります。ビタミンDは日に当たることも大切なので、食事での摂取だけでなくお散歩などと合わせて対策してくださいね。

中期(生後7、8ヶ月頃):素材の味を経験する

生後7、8ヶ月頃の離乳食

次に、中期について教えてください。
 

離乳食中期になると、舌が上下にも動くようになり、食べ物を上顎に押し付けてすりつぶして食べるようになってきます。
  • 1日2回食
  • 形状はみじん切り
  • 舌でつぶせる固さ(絹ごし豆腐くらい)
  • 7倍粥から徐々に5倍粥へ
  • 舌は前後、上下に動く
お座りが安定してくるので、椅子に座って食べられる子も増えますね。心配な場合は体にバスタオルを巻いて補強するとお座りが安定します。このとき、椅子は出来るだけ足の裏が床につくものを選ぶと、重心が安定して食べやすくなりますよ。もし合ったものがない場合は牛乳パックや菓子箱を使って足置きを作ることをおすすめします。

食べさせるときは、口の直前でスプーンをとめて赤ちゃんからパクっと食べに来てくれるのを待ちましょう。最初は難しいので、初期のように唇をつつくところから少しずつ移行していけばOKです。

また園では、このくらいの時期からおやつをあげているところも多いですが、基本的におやつはなしで問題ありません。子どもにとってのおやつは“補食"と言い、食事で足りなかった栄養を補うもの。市販のおやつは甘みや塩味があるので、もし与える場合は園で作った蒸しかぼちゃやじゃがいもなどにしましょう。この時期は素材の味を経験するときです。

後期(9~11ヶ月頃):手づかみ食べが始まる

手づかみ食べの様子

後期になると、自分で食べる子も増えてくる時期でしょうか。
 

そうですね、この頃から手づかみ食べが始まります。ただし、手づかみ食べが“上手になる"時期ではないので、まずは掴んで食べる経験を積んでいきましょう。

1日3回食、引き続きおやつはなくても問題ないです。もし与える場合は1日1回くらいにしておきましょう。この時期に、離乳食:ミルクの栄養がちょうど半分ずつになります。また舌の動きが活発になり、食べ物を奥の方に送り込むことができるようになっていきます。
  • 1日3回食
  • 歯茎でつぶせる固さ(熟したバナナくらい)
  • 手づかみ食べが開始
  • 5倍粥から徐々に軟飯へ
  • 舌は前後、上下、左右に動く
先ほどもお伝えしたように、自分で食べるようになるこの時期は特に足の裏がつく椅子をおすすめします。そうすることで踏ん張れるようになり、食べる力がついていきます。

そして後期になると、今まで赤ちゃんがお母さんのお腹の中からもらっていた「貯蔵鉄」が底を尽きてしまいます。6ヶ月時点でも鉄欠乏が言われていますが、ここでも意識して摂取することが大切ですね」

完了期(12ヶ月~18ヶ月):食べる喜びを感じられるように

離乳食を食べている子ども

最後に、完了期について教えてください。


保護者向け講座で聞いてみると8~9割の方が勘違いしているのですが、完了期は『離乳食が終わり、大人と同じご飯を食べても良い時期』ではありません。まだ離乳食は続くので、時期に合った食事の提供をしてくださいね。
  • 1日3回食+おやつ1日1~2回(食間)
  • 少し力を入れてつぶせる固さ(バナナ、肉団子程度)
  • 食材は1センチ角程度
  • 軟飯から普通飯へ
  • 手づかみ食べ、スプーンで食べる
  • 舌の動きが自由になる
栄養は離乳食:ミルク=7:3~8:2となり、ほぼ離乳食から摂るようになっていきます。スプーンを使えるようになってきますが、まずは手づかみ食べを十分にしたあとに移行しましょう。

食具については、保育士さんからよく『フォークでも良いですか』と聞かれることがあります。フォークがダメというわけではありませんが、実はスプーンの方が使うのが難しいので慣れるまではスプーンを推奨しています。
スプーンの上に乗せたものを食べるには、手首をうまく返さないといけません。自分で試行錯誤して学びながら使えるようになっていくので、ぜひ使ってくださいね。

またこの時期は、自分で食べる喜びを感じられるように先生はむやみに手助けをしないことも大切です。ぐちゃぐちゃにしてしまう子もいますが、それも経験のひとつとして見守っていきましょう。

時期に合わせた内容で進めよう

保育園で離乳食を提供していると、中には「ちょっと進みが遅いかな」という子もいますが、これは問題ないのでしょうか。
 

離乳食初期はだいたい5、6ヶ月、中期は7、8ヶ月と言っていますが、これはあくまでも目安のひとつです。1、2ヶ月のズレであれば問題ないので、その子に合わせて進めていってください。

ただ、大幅に遅すぎるという場合は気にかける必要があるかもしれません。離乳食はその時期に必要な栄養や舌の動き、食べ方など、子どもの体の発達に合わせながら進めていきます。その必要なものを摂取・取得できないことになってしまうので、そのような場合は栄養士や、場合によってはお医者さんに相談しましょう。

まずは個々のペースに合わせて、食に慣れていくことが大切ですね。


第2回では、離乳食を作るとき・与えるときの注意点や食を楽しむコツ、保育士さんから挙がりやすい悩みについてお答えいただきます。


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中田馨(なかた かおり)
1978年生まれ。中田家庭保育所施設長、一般社団法人 離乳食インストラクター協会代表理事。保育士、離乳食インストラクターとして企業の育児コラム執筆。関東・関西を中心に食育の講演会などを行う。二児の母。
<著書>
『いっぺんに作る あかちゃんと大人のごはん』
<コラム連載>
『AERA dot.』『AERA with baby』『小学館 Hagukum』『ベビーカレンダー』など
<離乳食講座>
離乳食インストラクター協会2級講座
<協会HP> 
https://babyfood-instructor.com/


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