子どもの「困りごと」の背景を理解して支援する
2022年(令和4年)の文部科学省の調査では、全国の公立小中学校(通常学級)の約8.8%の生徒に発達障害の可能性があるとされています。保育においても、児童発達支援施設や障がい児の入所施設など、障がい児を専門とした施設だけでなく、一般の保育園や認定こども園でも、支援を必要とする子どもがいる場合があります。 参考:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査|文部科学省発達支援においては、子どもを変えようとするのではなく、環境を子どもの特性に合わせて設定し、支援することも大切です。子どもの行動から「何がその子にとって障害となっているのか」を考えることで、必要な支援が見えてくるのではないでしょうか。
今回は、「発達支援」に関するセミナーや記事をまとめてご紹介。さまざまな事例を挙げて解説していますんで、保育のヒントとしてぜひ参考にしてみてください。
発達支援について学べる無料セミナー
「ほいくisオンライン研修」で公開している、発達支援に関するセミナーを紹介します。全ての動画が無料で視聴できますので、気になった動画があればぜひチェックしてみてください。>>ほいくisオンライン研修はこちら
藤原里美先生「多様な子どもたちの発達支援」
セミナー内容(全5回)
①『発達支援のマインドセット』
②『感覚の支援と環境の整え方』
③『記憶の支援とエンパワメントの使い方』
④『切り替えの支援と子どもとの関係づくり』
⑤『社会性の支援と遊び』
藤原里美(ふじわらさとみ)先生は、一般社団法人「チャイルドフッド・ラボ」の代表理事として活動されています。臨床発達心理士・保育士の資格を持ち、数多くの研修や講演へ登壇されると共に、YouTubeチャンネル「藤原里美の発達支援ルーム」では、発達支援や子育てに役立つ情報を発信しています。
今回のセミナーでは「多様な子どもたちの発達支援」をテーマに、障害や生きにくさを感じている子どものサポートについて、全5回でご紹介しています。
「子どもを変えるのではなく、社会を変える」という視点から、保育園で実践できる支援方法について具体的に解説しています。
この動画では、じっと座れない子が座れるようになる魔法のクッションや、多動が落ち着くリュック、気持ちの切り替えを行うための安心ボックスなど、子どもの気持ちに寄り添う支援グッズを写真と共に紹介しています。「あの子にこの方法を試してみようかな」と、明日の保育が楽しみになるセミナーです。
井上綾乃先生「社会性の発達支援」
原哲也先生「発達障害のある子どもとの関わり方」
セミナー内容(全6回)
①『基礎編1〜発達障害とは?〜』
②『基礎編2〜発達障害の子どもの感じている世界~』
③『基礎編3〜「安心」と「わかる」を保障するポイント〜』
④『お悩みアドバイス編1「場面の切り替えが上手くできない子」への対応』
⑤『お悩みアドバイス編2「注目行動・試し行動が多い子」への対応』
⑥『お悩みアドバイス編3「3文字以上の言葉が喋れない子」への対応』
言語聴覚士・社会福祉士として活動し、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPANの代表理事を務める原哲也(はらてつや)先生が登壇。長野県にて児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」の代表を勤めると共に、「発達障害児の家族を幸せにする」を志に全国で講演を行っています。
このセミナーでは「発達障害のある子どもとの関わり方」をテーマに、発達支援について全6回でご紹介しています。「発達障害とは、その子らしさが出にくくなっている状態」と捉え、子どもが生き生きと集団生活を送るためのポイントを解説しています。
前半では、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)など、発達障害の基礎的な知識を学ぶことができます。後半では、「注目行動・試し行動が多い子」や「3文字以上の言葉が喋れない子」への対応など、具体的な事例を通して保育者の支援の在り方を考える内容となっています。
高畑脩平先生「子ども理解からはじめる感覚統合遊び」
セミナー内容(全4回)①『感覚統合のトラブルとは?』
②『感覚の過敏・鈍感』
③『感覚と脳(低反応・感覚探求)』
④『感覚と脳(感覚過敏・感覚回避)』
「感覚統合」とは、音や振動、においや痛みといった、さまざまな感覚を整理するための脳の機能。アメリカの作業療法士、 A・ジーン・エアーズ博士によって生み出された理論で、脳に入力された感覚が適切に整理されることで、運動や製作といった活動にも楽しく取り組むことができます。
しかし、感覚に過敏さ、鈍感さのある子どもの場合、刺激を強く感じてストレスを感じたり、刺激を受けとりにくく、脳が活発に働かずにボーっとしてしまったりするケースがあります。保育の活動では、その子の感覚タイプを理解し、楽しく活動に参加できるよう感覚の入力を調整していくことが大切です。
講師は、藍野大学医療保健学部で講師を務める高畑脩平先生。セミナー本編では、感覚統合遊びについて、脳の機能から見た行動の背景と、感覚のタイプにあわせた支援方法を解説。作業療法士による発達への理解と、保育者が持つ遊びのアイデアによって生まれる支援についてお話しいただきました。
※ご利用には「ほいくisメンバー」または「園会員」へのログイン・会員登録(無料)が必要です
寺島理映子先生「ことばの発達」
セミナー内容(全4回)①『ことばの発達段階』
②『ことばの遅れ』
③『ことばを育てる関わり方』
④『保護者からよくある質問』
ことばの発達は、乳幼児期における大人からの声かけや、視線やふれあいといったコミュニケーションによって徐々に育まれていきます。また、ことばを発せるようになるまでには、ことばに触れる機会を多く持つことで「伝えたい」という気持ちを育むことも大切です。
しかし、なかにはことばの遅れが気になる子がいたり、保護者から「なかなかことばを話してくれない」といった相談を受けたりする場合もあるのではないでしょうか。
そうした場合には、その子の行動を観察し、ゆっくりと発達しているのか、発達に何らかの要因となる背景があるのかをきちんと理解することが重要です。支援が必要な場合には、保育者が保護者とも連携して、その家庭にとって最適な支援先へとつなげていくことで、次のステップへと進んでいくことができます。
講師は、「認定NPO法人 発達わんぱく会」で言語聴覚士として個別療育を実施し、療育者・保育者向けの研修講師も務める寺島理映子先生。セミナー本編では、ことばの発達について、ことばを発するようになるまでの発達段階や、ことばの遅れが気になる子の支援のつなげ方について解説。保護者と連携して支援を行うための保育者の役割についてもお話しいただきました。
※ご利用には「ほいくisメンバー」または「園会員」へのログイン・会員登録(無料)が必要です
原田まどか先生「保護者に寄り添う保護者支援」
セミナー内容(全4回)①『保育者の役割』
②『保護者からの相談』
③『気になる子をもつ保護者への伝え方』
④『気になる子の支援先とつなげ方』
保育者として、子どもとの関わりとあわせて大切なのが、保護者との関わり。「うちの子は大丈夫?」「周りの子とどこか違うのでは」といった相談を受けたことがある方もいるのではないでしょうか。
保護者にとっては、大切な自分の子どもだからこそ、さまざまな不安や心配が生まれてきます。その気持ちを相談してくれたことは、保育者に信頼を寄せてくれているからでもあります。保育者として、保護者の気持ちに寄り添いながら、一緒に子どもを見守っていくことが大切です。
講師は、認定NPO法人「発達わんぱく会」で公認心理士として保護者からの相談支援に取り組んでいる、原田まどか先生。セミナー本編では、保護者支援について、保育者の役割や保護者からの相談への対応方法、適切な支援へのつなげ方について解説。悩みを抱える保護者に対して、気持ちに寄り添った関わり方のポイントについてもお話しいただきました。
ケース別|一人ひとりにあわせた支援方法を解説
発達支援について、「どんな時はどうしたらいい?」といった事例ごとの対応方法や、発達を促す活動アイデアをまとめて紹介します。行動別の支援方法
児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上綾乃先生が、現場の保育士さんから多く寄せられるお悩みに回答しています。発達を促す遊び
子どもたちは、障害のあるなしに関わらず、それぞれ持っている感覚に違いがあります。感覚に偏りのある子どもも一緒に楽しめるおすすめの遊びを紹介します。園での生活で使える絵カード
園で生活する子どもの中には集団で行動することが苦手な子もいます。そんな子どもたちが集団生活を送るときのサポートとして利用できる絵カードを無料配布しています。子どもの行動をよく見るところから始めよう
今回は、発達支援に活用できる内容をまとめてご紹介しました。子どもの発達理解や支援のヒントがたくさん紹介されていますので、参考にしてみてくださいね。【関連記事】