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「保護者向けワークショップ」に挑戦!家庭での変化とは【カノア保育園の生活】

線の上に豆を置いていくカノア保育園の子ども
ブラジル・カノア保育園の設立ストーリーと並行して、地元の文化や地元の生活をお伝えする続編です。ロックダウンが続くなか、リモート授業となってしまったカノア保育園。「保育園児にリモート授業は難しすぎる」そんな壁を乗り越えるために考案した「保護者向けワークショップ」と、その後のエピソードをご紹介します。
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園のある地域のオンライン事情

カノア保育園のあるセノア州では、4月からようやく幼児部・小学校・中学校の授業が再開され、ジムや海の家の再開ができるようになりました(※ブラジルでは4歳以上から義務教育が始まります)。

しかし、週末は引き続きロックダウンを実施されるため、再開された事業に関しても週末は引き続き休業となります。

2021年度に入り、カノア保育園のあるアラカチ市は独自にアプリを開発し、市内の公立小中学校(幼児部も含む)はリモートによる授業を実施しています。さらに各学校に配置されている情報処理担当の教員が一括して、1週間ごとの教材や動画の配信を行っているなど、リモート授業の対策が徹底されています。




カノア保育園での試み

しかしカノア保育園では、アラカチ市独自のアプリを使用した授業の実施は当初からしておらず、個々人に対応できるよう、試行錯誤しながらオンライン授業を続けてきました。

なかでも、さっそく手応えがあったのが「保護者向けのワークショップ」。今年度初めて実施したことで、各家庭に変化がみられるようになってきました。
ワークショップをするカノア保育園の保護者

保護者向けワークショップの内容

カノア保育園が大切にしているのは、“年齢ではなく、その子にあった課題”。

「保護者向けのワークショップ」では、家庭で行ってもらいたい課題(授業)について、約1か月分の内容を保護者一人ひとりに対して具体的にレクチャーしました。
  • その月の目当て(ねらい)
  • 一人ひとりに合わせた課題
  • どのような活動を何のために実施するのか
こういった説明から始め、実際に子どもが行う課題(絵や手仕事、料理まで)をプレ授業として一緒に行う、というサポートをしてみたのです。

すると、さっそく実践した保護者の方から、さまざまなエピソードが挙がってきました。

例えば、「バランス感覚を養う」という課題に対して、庭先にサンダルを並べ、その上を歩く子ども。「形や色と親しむ」という課題では、段ボールを使ってパズルを作り、形や色を当てはめる姿が見られたといいます。

子どもたちが自宅にあるものを使用して、その週の課題に取り組む姿を見ることができるようになったのです。

さらに保護者は、教職員と相談をして、さらに子どもと話をしながら、どんな風に取り組んでいくのか考えているのです。

一人の女の子は、渦巻きを描いた後、母親にこう言いました。

「この上にフェジョン(豆)を載せたら面白いよね」
「そうだね。じゃあ、載せてみる?」

女の子は1粒ずつ豆を線の上に載せていきます。あまりの集中力に、母親は驚いてしまったそうです。
線の上に豆を乗せていくカノア保育園の子ども
保育園児が動画を見て、学ぶ。動画を見て、課題をこなす。こうした学びの方法では、子どもにとっての学びの定着を想像することは困難でした。

しかし今、保護者が課題を理解し教職員と共に子どもへの学びにつなげていることで、子ども自身が楽しみ、活動に取り組むことができています。

もちろん今はロックダウンが続いているため、休職や失業中である保護者も多く、こうした対応ができています。しかし今後、リモート授業が続き、仕事が再開される…となった時、今の体制を続けていくことは難しいでしょう。

そうなった時には、また新たな方法を探していかなければならないのです。探求は続いていきます…。
 
「カノア保育園」があるセアラ州アラカチ市の状況は?
カノア保育園のあるセアラ州では、2021年4月23日現在の新型コロナウイルス感染症による陽性者は、645,660人となっており、1日の死者数は31人と減少傾向にあります。
そのため、4月24日にセアラ州知事は26日付での緊急事態宣言の解除を宣言し、ロックダウンの一部解除が伝えられたのです。そして、幼児部・小学校・中学校の授業が再開され、ジムや海の家の再開も認められました。
この宣言を受け、アラカチ市政府もラジオの公開番組をライブ配信し、アラカチ市としての対応を説明しました。アラカチ市教育局長は、2021年度のアラカチ市内の公立小中学校(幼児部も含む)はリモートによる授業を実施しており、独自に開発したアプリを使用し、各学校に配置されている情報処理担当の教員が一括して、1週間ごとの教材並びに動画の配信を行っています。

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鈴木真由美(すずき まゆみ)

この記事を書いた人

鈴木真由美(すずき まゆみ)

保育士。ブラジル・カノア保育園 園長。2000年にブラジル北東部にある漁村カノアに渡り保育園の運営を始める。2006年にカノアでの支援を目的にした「光の子どもたちの会」を設立(2015年にNPO法人となる)。現地の地域力向上を目指して活動中。2児の母。

<光の子どもたちの会HP>
http://criancasdeluz.org/quem_somos_nos/quem_somos_jp.html

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