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保育所児童保育要録の書き方を分かりやすく解説

ノートパソコンを見ながらメモを取る保育士
5歳児の担任最後の大仕事とも言える「保育所児童保育要録」。文章を書くことが苦手な人にとっては、なかなか終わりが見えない大変な事務仕事ですよね。今回は、要録作成のポイントを解説します。書き方のパターンを覚えて、手際よく書き上げましょう。

「保育所児童保育要録」とは

書類を受け渡ししている手
保育所児童保育要録とは、子どもの基本情報や保育の記録をまとめた書類です。要録を通して子どもの育ちを小学校と共有し、切れ目のない支援が行えるよう連携します。

保育所児童保育要録には「入所に関する記録」と「保育に関する記録」の二つがあります。
「入所に関する記録」の内容は以下の通りです。
  1. 児童の氏名、性別、生年月日及び現住所
  2. 保護者の氏名及び現住所
  3. 児童の保育期間(入所及び卒所年月日)
  4. 児童の就学先(小学校名)
  5. 保育所名及び所在地
  6. 施設長及び担当保育士氏名
出典:​​​​​​別添1 保育所児童保育要録に記載する事項/厚生労働省
こちらは調べれば書ける内容なので、難しくはないですね。

苦戦しがちなのは「保育に関する記録」です。内容は以下の通りです。
  1. 最終年度の重点
  2. 個人の重点
  3. 保育の展開と子どもの育ち
  4. 特に配慮すべき事項
  5. 最終年度に至るまでの育ちに関する事項
まずはそれぞれの項目を理解することが大切です。一つひとつ見ていきましょう。
 

「保育に関する記録」の書き方

ファイルを持っている保育士
「保育に関する記録」の各項目を、分かりやすく書き換えると以下のようになります。
  1. 最終年度の重点 → 年間のねらい
  2. 個人の重点 → 大切にしてきた子どもの姿
  3. 保育の展開と子どもの育ち → 1年間の保育と子どもの姿
  4. 特に配慮すべき事項 → 特別な配慮(健康状態・発達など)
  5. 最終年度に至るまでの育ちに関する事項 → 入園から年中までの保育と子どもの姿
「最終年度の重点」は、年間指導計画で立てたねらいを記入します。クラスの子は全員同じになります。

「個人の重点」とは、「保育の展開と子どもの育ち」をまとめたものです。そのため「保育の展開と子どもの育ち」→「個人の重点」の順で記入した方がスムーズに書けます。

「最終年度に至るまでの育ちに関する事項」は、年長の担任だけで書くのは難しいですね。各年齢で担当してきた保育士の話や記録を参考にする必要があります。できれば毎年少しずつ書き溜めておけると、年長担任の負担が減ります。

「保育の展開と子どもの育ち」を書くときのポイント

「保育に関する記録」の中で1番書く内容が多い項目は、「保育の展開と子どもの育ち」です。ポイントを押さえて、書いていきましょう。

現在の子どもの姿から考える

ひまわり畑の前で笑う男の子
子どもの育ちは、以下の順番で書きます。
  1. 過去の子どもの姿
  2. 保育士の援助
  3. 現在の子どもの姿
いきなり書き始めるのではなく、まずは子どものどんな姿を書くのかイメージしましょう。過去の子どもの姿を振り返るより、現在の子どもの姿から思い出した方がスムーズです。以下の順番で考えてみましょう。
  1. 現在の子どもの姿
  2. 過去の子どもの姿
  3. 保育士の援助
現在・過去の子どもの姿と、保育士が行ってきた援助を思い出しながら、箇条書きにします。

例えば・・・
①現在→友だちに自分の気持ちを伝えられるようになった。
②過去→友だちとケンカになると、泣いて自分の気持ちが言えずにいた。
③援助→気持ちを言葉にして表現できるよう、保育士は本児の気持ちを汲み取ったり、一緒に伝える経験を重ねたりした。

②→③→①の順で並び替えて書けば、読み手にもイメージしやすい文章が完成です。
小学校でも配慮してほしいことがあれば、文章を加えましょう。
【例文】
年度始めには、友だちとケンカになると泣いて自分の気持ちが言えずにいた。気持ちを言葉にして表現できるよう、保育士は本児の気持ちを汲み取ったり、一緒に伝える経験を重ねたりしてきた。3月現在では、友だちに自分の気持ちを伝えられるようになってきている。強い口調の友だちが相手だと困っている様子があるので、引き続き様子を見守ってほしい。

五領域や10の姿と結びつける

笑っている2人の子ども
「保育の展開と子どもの育ち」を書くときは、五領域や10の姿の視点で書きます。しかし「言葉の領域と結びつく姿は、何を書いたらいいんだろう・・・」と考えていると、なかなか思いつきません。それよりは、子どもの育ちつつある姿を先に書いてしまい、後から五領域や10の姿を結びつけていきましょう。

例えば「友だちに自分の気持ちを伝えられるようになった」という姿は、五領域の「言葉」や「人間関係」、10の姿の「言葉による伝え合い」と結びつけられます。

表現に迷ったら、保育所保育指針の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」や「保育に関するねらい及び内容」を見てみましょう。部分的に引用できる言葉や、表現を見つけることができます。

子どもの行動を「課題」として書く

床に倒れ込んで泣いている男の子
子どもの行動は、「問題」ではなく「課題」として記入しましょう。書き方によっては、子どもの存在や行動を否定しているように感じてしまいます。

例えば・・・
× 乱暴な姿がある
〇 手が出る姿がある

× 〜できない
〇  〜することが難しい

× 〜してしまう姿がある
〇 〜する姿がある

「×」の方は、否定的な主観で書かれた表現です。一方「○」の方は、子どもの姿を客観的に捉え「問題行動」ではなく「現在の課題」として書かれています。

保育所児童保育要録はほとんどの場合、保育園と小学校の職員しか見ません。しかし保護者から請求された場合は開示する必要があります。誰が見ても客観的事実として捉えられる表現で書くことが望ましいです。

参考:別紙資料1(様式の参考例)「保育所児童保育要録(入所に関する記録・保育に関する記録)/厚生労働省
保育所児童保育要録(保育に関する記録) /厚生労働省の書類フォーマット


ほかの保育士さんの視点も借りてみよう

いかがでしたか? 保育所児童保育要録は、保育園での子どもの育ちをまとめたものです。もし行き詰まってしまったら、ほかの保育士さんの視点を借りるのもおすすめです。話している間にいろいろ思い出してくるので、付箋に子どもの姿や保育をどんどん書き溜めていってみましょう。並べ替えれば要録の完成です。1年を振り返りながら、子どもの育ちを肯定的に記録していってみてくださいね。

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佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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