「保育所児童保育要録」とは
保育所児童保育要録とは、子どもの基本情報や保育の記録をまとめた書類です。要録を通して子どもの育ちを小学校と共有し、切れ目のない支援が行えるよう連携します。保育所児童保育要録には「入所に関する記録」と「保育に関する記録」の二つがあります。
「入所に関する記録」の内容は以下の通りです。
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苦戦しがちなのは「保育に関する記録」です。内容は以下の通りです。
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「保育に関する記録」の書き方
「保育に関する記録」の各項目を、分かりやすく書き換えると以下のようになります。
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「個人の重点」とは、「保育の展開と子どもの育ち」をまとめたものです。そのため「保育の展開と子どもの育ち」→「個人の重点」の順で記入した方がスムーズに書けます。
「最終年度に至るまでの育ちに関する事項」は、年長の担任だけで書くのは難しいですね。各年齢で担当してきた保育士の話や記録を参考にする必要があります。できれば毎年少しずつ書き溜めておけると、年長担任の負担が減ります。
「保育の展開と子どもの育ち」を書くときのポイント
「保育に関する記録」の中で1番書く内容が多い項目は、「保育の展開と子どもの育ち」です。ポイントを押さえて、書いていきましょう。現在の子どもの姿から考える
子どもの育ちは、以下の順番で書きます。- 過去の子どもの姿
- 保育士の援助
- 現在の子どもの姿
- 現在の子どもの姿
- 過去の子どもの姿
- 保育士の援助
例えば・・・
①現在→友だちに自分の気持ちを伝えられるようになった。
②過去→友だちとケンカになると、泣いて自分の気持ちが言えずにいた。
③援助→気持ちを言葉にして表現できるよう、保育士は本児の気持ちを汲み取ったり、一緒に伝える経験を重ねたりした。
②→③→①の順で並び替えて書けば、読み手にもイメージしやすい文章が完成です。
小学校でも配慮してほしいことがあれば、文章を加えましょう。
【例文】 年度始めには、友だちとケンカになると泣いて自分の気持ちが言えずにいた。気持ちを言葉にして表現できるよう、保育士は本児の気持ちを汲み取ったり、一緒に伝える経験を重ねたりしてきた。3月現在では、友だちに自分の気持ちを伝えられるようになってきている。強い口調の友だちが相手だと困っている様子があるので、引き続き様子を見守ってほしい。 |
五領域や10の姿と結びつける
「保育の展開と子どもの育ち」を書くときは、五領域や10の姿の視点で書きます。しかし「言葉の領域と結びつく姿は、何を書いたらいいんだろう・・・」と考えていると、なかなか思いつきません。それよりは、子どもの育ちつつある姿を先に書いてしまい、後から五領域や10の姿を結びつけていきましょう。例えば「友だちに自分の気持ちを伝えられるようになった」という姿は、五領域の「言葉」や「人間関係」、10の姿の「言葉による伝え合い」と結びつけられます。
表現に迷ったら、保育所保育指針の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」や「保育に関するねらい及び内容」を見てみましょう。部分的に引用できる言葉や、表現を見つけることができます。
子どもの行動を「課題」として書く
子どもの行動は、「問題」ではなく「課題」として記入しましょう。書き方によっては、子どもの存在や行動を否定しているように感じてしまいます。例えば・・・
× 乱暴な姿がある
〇 手が出る姿がある
× 〜できない
〇 〜することが難しい
× 〜してしまう姿がある
〇 〜する姿がある
「×」の方は、否定的な主観で書かれた表現です。一方「○」の方は、子どもの姿を客観的に捉え「問題行動」ではなく「現在の課題」として書かれています。
保育所児童保育要録はほとんどの場合、保育園と小学校の職員しか見ません。しかし保護者から請求された場合は開示する必要があります。誰が見ても客観的事実として捉えられる表現で書くことが望ましいです。
参考:別紙資料1(様式の参考例)「保育所児童保育要録(入所に関する記録・保育に関する記録)/厚生労働省
ほかの保育士さんの視点も借りてみよう
いかがでしたか? 保育所児童保育要録は、保育園での子どもの育ちをまとめたものです。もし行き詰まってしまったら、ほかの保育士さんの視点を借りるのもおすすめです。話している間にいろいろ思い出してくるので、付箋に子どもの姿や保育をどんどん書き溜めていってみましょう。並べ替えれば要録の完成です。1年を振り返りながら、子どもの育ちを肯定的に記録していってみてくださいね。▼関連記事はこちら