「ジェノグラム」「エコマップ」とは
「ジェノグラム(Genogram)」や「エコマップ(Eco-map)」は、支援が必要な人を取り巻く環境を図式化したものを指します。それぞれの内容と違いは以下の通り。
《ジェノグラム》 家族構成を図式化したもの。家族の性別や生死、婚姻関係などを表す。 《エコマップ》 支援環境を図式化したもの。家族や親族だけでなく、施設など社会資源との関係性も表す。 |
近年では、子どもたちの家庭環境が複雑になってきていることを受け、保育園でもこれらが活用されるようになってきました。
保育所保育指針の第4章にも明記されているように、保育士は「子育て支援」における大きな役割を担っています。ジェノグラムやエコマップの活用も専門性の一つとして捉え、身につけておきたいですね。
ジェノグラムの書き方
まずは、ジェノグラムの書き方を解説します。一般的には、子ども(本児)を中心として3世代以上を目安に記載をしていきます。個人の表記
人物とその属性を表す一般的な表記ルールは以下の通りです。- 〈男性〉は四角を書く(□)
- 〈女性〉は丸を書く(○)
- 〈性別不明〉は三角を書く(△)
- 〈支援が必要な人〉は二重で描く(◎など)
- 〈年齢〉は記号の中に数字を記入する(⑤など)※記号の下に記載する場合もある
- 〈亡くなっている人〉は記号を黒く塗る、もしくはバツを書き入れる
- 〈妊娠〉している場合は丸の中に三角を書き入れる
家族関係の表記
人物同士の関係性を表す一般的な表記ルールは以下の通りです。- 〈婚姻関係〉は横線でつなぐ
- 〈子ども〉は横線から縦線を書いてつなぐ
- 〈別居〉は横線に斜め線を1本引く
- 〈離婚〉は横線に斜め線を2本引く
- 〈同居家族〉は曲線で囲む
- 〈同棲〉は波線でつなぐ
ジェノグラムの例
それでは、これらの表記ルールを踏まえた事例を見てみましょう。 【上記のジェノグラムからわかること】- 母は父と別居している
- 母には17歳の妹か弟がいる
- 祖母は祖父と離婚している
- 曽祖父は亡くなっている
- 本児は母と母の兄弟、母方の祖母、曽祖母と同居している
エコマップの書き方
続いて、エコマップの書き方を解説します。関係性の表記
エコマップでは、園児の家庭と関係のある人物や機関・施設などを記載し、その関係性の強さを線で表します。- 〈普通の関係〉は普通の線
- 〈強い関係〉は太い線
- 〈弱い関係〉は点線
- 〈対立する関係〉は横線に縦線を複数ひく
エコマップの例
それでは、これらの表記ルールを踏まえた事例を見てみましょう。 【上記のエコマップからわかること】- 本児は母と二人で暮らしている
- 父とは関係が良くない
- 母方祖母とは関係性が弱い
- 本児の家庭には保健師が関わっている
- 本児の家庭は保育園とファミリーサポートを利用している
- 保健師と保育園、保育園とファミリーサポートは連携を図っている
保育園での活かし方
ここからは、保育園におけるジェノグラムやエコマップの活かし方を解説します。子どもの家庭状況を知る
ジェノグラムを作成することで、子どもの家族構成を把握することができます。特に家族関係が複雑な場合は、図式化して分かりやすくしておきましょう。例えば「別居中の父親に子どもを渡さないでほしい」という依頼があった場合には、ジェノグラムに書き込み、何度も確認できるようにしておきます。他機関との繋がりを明確にする
ファミリーサポートや病児保育、療育施設など、保育園以外の機関を併用している保護者も増えてきています。子どもの受け渡しを行う際に間違いがないよう、エコマップで確認しましょう。直接やりとりがない場合でも、子どもを理解するために、どのような機関と関わりがあるのか把握しておきたいですね。
保育士や他機関との情報共有に使用する
保育園では担任だけでなく、他の保育士が子どもの対応を行うこともあるため、必要な情報は事前に共有しておきたいですね。また、他機関との連携が必要になった場合にも、すぐに子どもの状況を説明できるよう準備しておきたいものです。その点、エコマップやジェノグラムにまとめておけば、関係者との情報共有がスムーズになります。
作成の注意点
最後に、ジェノグラムやエコマップを作成する上での注意点について解説します。信頼関係を構築した上で情報収集を行う
「離婚」や「別居」は、保護者にとって口にしづらい内容です。また、入園前に「再婚」している場合は、聞く機会がなければ知ることもありません。ジェノグラムやエコマップを作成するためには家庭環境について聞く必要がありますが、唐突な質問は失礼にあたります。普段から会話を積み重ね、保護者との信頼関係を築いた上で情報収集を行っていきたいですね。
情報の取り扱いに気を付ける
子どもの家庭状況や支援環境は、個人情報の中でも特に注意が必要な「機微な個人情報」にあたります。情報の取り扱いには十分気をつけましょう。「送迎時に確認するから」と置きっぱなしにしておくと、他の保護者の目に触れる可能性もあります。また、誤って紛失する可能性も。
確認したらファイルに入れて特定の保管場所にしまっておくなど、管理の方法を決めておきましょう。
過去の資料を保管しておく
子どもの環境が変化したら、エコマップを新しく作成し直します。この場合、過去に作成した資料も処分せずに保管しておきましょう。支援を行う過程で、過去の状況を振り返ることも。必要な時にすぐに確認ができるよう、新たなエコマップと一緒に保管しておくことが望ましいでしょう。
子どもを取り巻く環境を把握しよう
保育士として、子どもを取り巻く環境はしっかりと把握しておきたいですね。ジェノグラムとエコマップを使って分かりやすく図式化しておけば、スムーズに状況を理解でき、他者との情報共有もしやすくなります。作成を考えている方は、参考にしてみてください。【関連記事】