キッズラボ南流山園

今回取材をさせていただいたキッズラボ南流山園は、先進的な取り組みで注目を集めるクリエイター集団「チームラボ」の建築部門であるチームラボアーキテクツが設計・監修を行ったということで話題となりました。ほいくis編集部でも、どのような保育環境が構成されているのか注目していた園です。
案内をしてくれたのは、園長の山本美里さん。大人でも思わずワクワクしてしまう園環境の中にどんな保育の工夫があるのか、お話を伺いながら見学させていただきました。

保育園の「当たり前」をくつがえす環境設定の数々
居場所は子ども自らが選ぶ多角形の保育室
乳児さんの保育室からレポート開始です。
当たり前を覆す保育室中央の手洗い場

使い勝手や子どもたちの姿をお聞きしたところ、「この場所ならこの場所で、子どもたちは馴染んでいきます。もちろん入園当初はいろいろあります(笑)。湖みたいに水浸しになってしまっても、その都度保育士が『あらあら』と言って拭いているのを見て、子どもたちも一緒に拭くのを手伝ってくれるようになります。自然と使い方を覚えていきますよ」とのこと。
何事においても子どもたちの「やってみたい」を否定せず、まずは受け止めること。保育士の余裕を持った関わりの中で、子どもたちが自然と環境から学んでいく。「子どもの力はすごいですよね」と笑顔で語る山本園長から、園が大切にしている保育理念が伺えました。
同じ形の物が一つもない園内
次に幼児さんたちが生活する2階へお邪魔しました。


食への興味関心を育む充実した食育活動
食育活動に力を入れているキッズラボ。自分たちで野菜を育てたり、クッキングを楽しんだり、四季折々の行事食を味わったりと、乳幼児期から食べることを楽しみ、食への興味関心を育んでいます。
遊び方は無限大!2階中央スペースのアスレチックネット


恐る恐るネットの上に立ってみると、下の砂場で遊んでいた子どもたちから、「危ないからゆっくり降りてね!」「寝っ転がると楽しいよ!」と、遊び方のアドバイスをもらいました。実際には、大人が乗っても耐荷重としてはぜんぜん問題ないそうです。

まるで秘密基地!大人も子どももワクワクする絵本部屋

段差に座ってひとりじっくり絵本を読んだり、段差を机にして友だちと一緒に図鑑で調べたりと、子どもたちは思い思いにこの空間を楽しんでいるようです。
どうやら自然と子どもたちが集まってくる空間のようで、「この絵本面白いよ」と自分たちのお気に入りの一冊を紹介してくれる微笑ましい姿も。
一つひとつの保育環境に、驚きと興奮がどんどん高まる中、その様子を見た山本園長がこう話してくれました。「大人がワクワクする場所は、きっと子どもたちはそれ以上に楽しいんだろうなと思います。普通の保育園さんとは違った設計を活かして、私たち大人がどう関わっていくか。子どもたち自らが、環境の使い方を学んでいけることを大切にしています」。子どもたちの姿をしっかりと観察しながら保育をしている様子が伺える話でした。
さまざまな体験を生み出す園庭
続いて、子どもたちが元気に遊ぶ園庭にお邪魔しました。「決まり」のない自由な環境

園庭にニワトリが!

「開園時にひよこから育てたんです。毎日子どもたちに追いかけまわされながら、こんなにたくましく育ちました」という山本園長。子どもたちが畑に植えた苗をニワトリがつついてしまう対策を考えたり、産んだ卵を最初はうまく持てず割ってしまった経験から丁寧な扱い方を学んだり、ニワトリの体調を気遣ったりと、ニワトリと子どもたちのさまざまなエピソードが日々生まれているそうです。
生き物の飼育という「体験」を通じて、命の大切さや尊さ、思いやりの気持ちや責任感などが自然に育つ環境。大切なことは全て体験から生まれることを、こちらの園独自の環境作りから教えられました。
乳幼児期にたくさんの原体験を

熱烈アプローチでチームラボとのコラボが実現
チームラボアーキテクツが園の設計・監修をすることになった経緯を教えてください
今の子どもたちが大きくなる20年後の世界を考えた時、子どもたちはどんどん減っていき、そして価値観は多様化していきます。その中で、僕らが考える価値観じゃない世界を今の子どもたちは生きていきます。その時どういう世界になっているかなんて分からないですよね。でも、僕たちがやっている保育って、10年後、20年後を作っていく仕事です。だから、どういう世界になっていくのかを想像しながら園を考えなきゃいけない。
僕は元々チームラボさんに個人的にすごく共感していて、彼らが考える何かデザイン的な要素を取り入れた保育施設ができないかと本気で思い始めました。そして足しげく通ってラブコールを送り続けた結果、日本で初となるチームラボの設計、監修が実現した訳です。
コラボを通して何か新しい発見はありましたか?
都内で保育園を運営していると、真四角の部屋でいかに効率よく配置するかが大事で、その方が保育士が働きやすく、子どもたちも過ごしやすいんじゃないかと思っていました。しかし、チームラボからの提案は、遠回りしないといけないU字型の園舎や、保育室の中央に設置された手洗い場、でこぼこな園庭など。「一見すると非効率な環境の中にこそ、学びが溢れる」というコンセプトでした。これは、自分が当たり前だと思ったものを全部壊される経験でした。それと同時に、「子どもも大人もワクワクできるような園舎にしたい」という、こちらの思いを見事に実現してくれたと感じました。やはり任せて良かったなと思いましたね。
キッズラボが大切にしている「原体験」
園の環境作りで大切にしていることは何ですか?
僕は田舎で育って、小学校の裏山で放課後ずっと遊んでいて遭難しかけたりとか、本当にいろいろな冒険を経験したことを今でも覚えています。その体験が、自分の中で何か礎を作っているんだなと感じています。そんな経験もあるので、子どもたちにも何かいろいろな体験をさせてあげたいと思うんです。例えば、人工的に作られた遊具って大人の価値観がどこか入ってしまうから、それは園庭に設置せず、自然の中で遊べる環境を作るようにしています。遊び方は無限にあって、子どもたちは自然の中から学んでいきます。それは別に都会でもできるんですよ。散歩の途中でナメクジを見つけて飼って見ようと思ったり、見付けたイモムシが図鑑でどんな蝶になるのか調べたり。そういった毎日の「原体験」の中で、大人が想像もできないようないろいろな発見をしてほしいと考えています。
今年は農家さんと提携して味噌作りをしたり、田植えとか稲刈りにも子どもたちを連れて行こうと計画しています。
これからの時代を生きる子どもたちへのメッセージ
小学校までの数年間で、どれだけの体験ができるのか。子どもも大人もワクワクする環境作りに込められた「生きる力」を育む土台作り。今回の取材を通して、これからの時代を生きていく子どもたちへの深く熱いメッセージをひしひしと感じました。これからのキッズラボ保育園の取り組みにも注目です。
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キッズラボ南流山認定こども園【認可保育所】 https://kids-lab.co.jp/minaminagareyamaninteikodomoen/ 設置主体:キッズラボ株式会社 https://kids-lab.co.jp/
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