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<後編>発達障害の子がパニックに!その瞬間どうする?【保育者の関わり講座】

どうする?パニックの瞬間(後編)
言語聴覚士として長年児童発達支援に携わってきた原 哲也さんのコラムです。保育士であれば知っておきたい「気になる子」への関わり方について解説していきます。>>連載の記事一覧はこちら

今回のテーマ 

「パニックの予防を心がけていたけれど、それでも子どもがパニックを起こしてしまった!」
そのときどうするか? 前回に引き続きお話ししていきます。   前回お伝えした基本姿勢は、静かに見守る(クールダウン)でした。今回はそのコツについてお話しします。 

静かに見守るコツ①1人が関わる 

 
保育士と子どもが話しているイラスト
子どもがパニックになったとき、

周りにいる複数の保育士が思い思いの言葉を子どもにかける、それぞれのやり方で子どもにアプローチする…。 
 
よくあり得ることです。 
 
経験的に知っている方もいらっしゃるかと思いますが、それは子どものパニック状態を悪化させてしまいます。 
 
提案・励まし・慰めなど…さまざまな言葉が投げかけられ、多くの大人に囲まれる状況は、子どもにとって大きなストレスになるからです。 ですから、子どもがパニックを起こしたときは、関わる保育士を一人に決めましょう。 

関わる保育士を一人に決める意味とは? 

「関わる保育士を一人にする」といっても、全部をその一人に任せるという意味ではありません。 
 
まず、先月お話したことを参考に、パニックを起こしたあと落ち着いて他の活動に向かうことができるようになるために、その子に合った見守り方・保育士がどう関わるか・どういう言葉かけをするか…などの具体的方針を検討します。 
発達障害の子がパニックに!その瞬間どうする?(後編)【保育者の関わり講座】
これは、その子に関わる複数の保育士で検討します。その基本方針に沿って、実際にその子に「対応」するのを「一人の」保育士がするということです。 
 
他の保育士は、他の子どもやおもちゃをパニックになった子どもから離すなどの形で支援します。 
 
 

静かに見守るコツ②穏やかに淡々と関わる 

パニックを起こした子に対応するときは、とにかく、ストレスが更に加わるような関わりをしない。子どものパニック状態を悪化させない関わり方をすることを目指します。いくつかポイントをご紹介しましょう。 

1、言葉のかけ方 

かける言葉の数を極力少なくします。無理に話しかける必要はありません。 また、興奮した声、大きな声を出さないことに気をつけます。 
 
「何があったの?」や「大丈夫よ」などの言葉も、パニックになっている子どもにはパニックの原因を強く意識させることになるので避けましょう。 

2、子どもとの物理的位置関係 

 
安心した顔をする子どもと保育士のイラスト
人は自分より大きな人が正面から向かってきたら恐怖を感じるものです。 
 
ですから、パニック時の子どもと関わるときは、正面からの関わりは避けます。 
 
横から関わる、時には後ろから関わる等、子どもに恐怖を感じさせない、安心できる位置関係を探してみて下さい。 

3、表情と視線 

 
笑顔の保育士と子どものイラスト
口角を少しあげた穏やかな表情で、落ち着いて関わることを意識します。 
 
保育士が、パニックの子どもと同じような「パニック」的な顔をしていては、子どもも混乱します。 
 
子どものパニックはときにすさまじいので平静でいるのは大変なことですが、できるだけ、穏やかな表情で関わりましょう。 
 
視線は子どもに真正面から向けないようにします。強い視線は子どもに強い緊張感を与えるので、顔は子どもの方を向くが視線は少し外すように心がけます。 

「穏やかに淡々と」のポイント 

1~3は、全て子どものストレスをできる限り小さくするための工夫=要は「穏やかに淡々と関わる」ということです。 
 
「穏やかに淡々と関わる」ことは、パニックになってしまった子どもと関わるときにとても大事なことです。「穏やかに淡々と関わってくれること」は子どもが落ち着くことを助けますし、そうでない場合、子どもが落ち着くことを邪魔することになりかねません。 
 
最初は、頭でわかっていてもいざその場になるとできないものですが、「穏やかに淡々と関わる」ことがとても大事だということを念頭において、少しずつ「穏やかに淡々と関わる」ことができるようにしてほしいと思います。 

【別の方法】落ち着ける場や活動・アイテムを用意する  

 
積み木のイラスト
配慮をしながら「静かに見守る(クールダウン)」をしても、パニックから落ち着くことが難しい子どももいます。 
 
そのような場合は、子どもが安心できる場所、落ち着くことができる活動、アイテムを用意しておくことが考えられます。 
 
日頃の観察や保護者からの情報収集などをもとに、適切なものを選びます。 
 
一般的には、場所であれば、様々な刺激から遮断された狭い空間が落ち着く子どもが多いです。タオルを触ったり、お気に入りに虫が載っている図鑑などを手に取ると落ち着く子どももいます。 
 
既製の本ではなく、自分の好きなものや家族の写真を貼ったオリジナルアルバムを作っておくことも考えられます。 
 
考える顔をする子どものイラスト
その子にとって見ているととても幸せな気分になるものがたくさん載っているアルバムです。子どもによっては、「ストン」と気持ちが落ち着くこともありますので、興味を持たれた方は作ってみて下さい。 

今回のまとめ 

さて、ここまで5回に渡って「パニックへの対応方法」についてお話してきました。 
 
パニックは、パニックによって子どもが心身ともに疲れる、子どもの発達を妨げる・他児や周囲との関係が損なわれる可能性があるものです。 
 
ですから、是非、できる限りの観察と考察を繰り返し、パニックを予防したいのです。 子どもは、パニックを起こさずに、安心して日々を過ごしたいと願っています。 
 
ハートを抱きしめる子どものイラスト

パニックを起こさないですむ環境を整えてくれる、パニックから早く立ち直れるような関わりをしてくれる保育士は、子どもの願いをかなえてくれる人です。 
 
子どもはそのような保育士を信頼するようになります。 是非これまでの5回のコラムを踏まえて、子どもたちの願いを叶えてあげてください。 
 
次回からは「いつも眠そうにしている美空ちゃん」のケースについて、お話ししていきます。(次回は2022年4月下旬配信予定です) 
 
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原 哲也(はら てつや)

この記事を書いた人

原 哲也(はら てつや)

言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」代表。1966年生まれ、千葉県出身。大学卒業後にカナダの障害者グループホーム勤務、東京の障害者施設職員勤務を経て、29歳から小児障害児リハビリテーション専門職として、長野県の病院や市区町で発達相談や障害児の巡回相談業務に携わる。『発達障害児の家族を幸せにする』を志に、全国を駆け回り、乳幼児期から青年期までの発達障害児と家族の応援をおこなっている
<WAKUWAKUすたじおHP>
http://www.waku-project.com/

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