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<前編>「いつも眠そうな子」の理由とは?【発達支援/保育者の関わり講座】

なぜ?いつも眠そうな子-前編-
言語聴覚士として長年児童発達支援に携わってきた原 哲也さんのコラムです。保育士であれば知っておきたい「気になる子」への関わり方について解説していきます。>>連載の記事一覧はこちら

【今回のケース】いつも眠そうな子、いませんか? 

<ケース1> 
4歳の美空ちゃんは、登園時のお母さんとのお別れがとても大変で、30分は大泣きをします。30分を過ぎるとおままごとなどで遊び始めるのですが、しばらくすると、うとうとすることがよくあります。大好きな給食の時間になると目をさましますが、食事中もうとうとし始めることも。保育園にいる間はとにかく眠そうです。 
上のケース、保育園でいつも眠そうにしている美空ちゃん。皆さんの園にも「なんだかいつも眠そうだなあ」と感じるお子さんはいないでしょうか? 
 
このようなお子さんに保育士はどのように関わっていけばよいのでしょうか。今回から数回にわたって「子どもの睡眠」についてお話します。 

日本の子どもは睡眠不足 

眠っている男の子
美空ちゃんの「うとうと」の原因は何なのでしょうか? まっさきに思い浮かぶのは「睡眠不足」です。3歳以下の乳幼児の平均睡眠時間のデータを見てみましょう。 
日本         11時間37分 
他のアジアの国々   12時間16分 
アメリカ・ヨーロッパ 13時間 
ニュージーランド   13時間17分 


※出典:『こどもとねむり』三池輝久(メディアイランド) 
 このように、実は日本の子どもの睡眠時間は、世界の中でも短い方なのです。 
 
ここ数十年の間で、日本の家庭ではテレビに加えて、インターネット、ゲーム、動画などの娯楽が増え、人々の就寝時間は総じて遅くなってきています。 
 
共働き家庭の親が、小さい子どもを連れて夜中のコンビニに遅い夕食を買いに来るという光景もめずらしくありません。 
 
遅い時間に就寝しても朝遅くまで寝ていられるなら睡眠時間が確保できますが、共働き家庭はたいてい朝も早いのです。子どもも大人も、夜遅く寝て朝早く起きるという生活が普通になっているのです。 
 
ある調査によると乳幼児の就寝時間は3歳児の70%が夜10時以降、18%が0時以降だといいます。※出典:2004年の熊本県による調査『こどもとねむり』三池輝久(メディアイランド)。 

「理想の睡眠」とは?  

 
ベッドで眠っている女の子のイラスト
ところで、子どもにとってはどれくらい眠るのがいいのでしょうか。

小児科のテキストは、子どもの「理想の睡眠時間」を次のように示しています。 
●1歳 13時間45分 
●2歳 13時間 
●3歳 12時間 
●4歳 11時間30分 
●5歳 11時間 
●6歳 10時間45分 
●小学生 10時間 
   

  ※出典:子どもが幸せになる「正しい睡眠」P53/成田奈緒子(産業編集センター) 
この理想の睡眠時間を確保するには…さて、何時に寝て何時に起きたらいいのでしょうか。 

睡眠時間の理想は? 

例えば、4歳の美空ちゃんなら理想の睡眠時間は12時間です。夜7時に寝て朝7時に起きる、夜8時に寝て朝8時に起きる、という生活リズムであれば、理想の睡眠時間を確保できます。 
時計
5歳なら理想の睡眠時間は11時間なので、例えば夜8時に寝て朝7時に起きるということです。 
 
保護者(養育者)にとって、毎日このような生活リズムで子どもを寝かせるのは、とても大変なことです。 
 
しかし、これからお話しするように「良質な睡眠」は人間にとって、特に、子どもの成長、発達にとっては、非常に大切なものです。人間は大人でも、1日の約3分の1という長時間を睡眠に充てていますが、これはなぜなのでしょうか。 

睡眠の効果って? 

これまで睡眠は、身体の疲れを取るために必要と言われていましたが、実はそれだけでなく、脳の働きを守る、脳の発達を促すなどのさまざまな役割を果たしていることがわかってきました。 
 
これからお話することで、「睡眠の大切さ」をわかっていただいて、子どもが「良質な睡眠」を十分にとれるようにしてあげてほしいと思います。 
 
ところで「良質な睡眠」とはどういう睡眠のことをいうのでしょうか。この話をする前に、ノンレム睡眠とレム睡眠について説明しておきましょう。 
 
 

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」とは?  

睡眠には、2種類の睡眠状態があります。それがノンレム睡眠とレム睡眠です。 
  • ノンレム睡眠…脳の深い部分が休息している睡眠状態です眠りの深さによって4つの段階があります。 
  • レム睡眠…脳が活発に働いている睡眠状態です。レム睡眠中は目がぴくぴく活発に動きますし、夢を見るのもレム睡眠時と考えられています。 
女の子と脳みそのイラスト

睡眠中はノンレム睡眠⇔レム睡眠の繰り返し 

ひと晩眠る間に、ノンレム睡眠とレム睡眠は何回か切り替わります。 
 
まず、眠りに入ると眠りはだんだん深くなり、入眠後30分くらいでレベル4の一番深いノンレム睡眠の状態になります。 
 
その後、1時間くらいすると、徐々に眠りが浅くなってレム睡眠に移行します。そして、またノンレム睡眠に移行して徐々に深い眠りに入り、また、眠りが浅くなってレム睡眠に移行する。 
 
このノンレム睡眠→レム睡眠の周期がひと晩に4回~5回繰り返されます。 
 
入眠してすぐからの3時間は、睡眠段階3~4の深い眠りが多く、その後はレム睡眠が増えてきます。割合としては80%がノンレム睡眠、20%がレム睡眠と言われています。 

良質な睡眠とは? 

眠っている女の子と脳みそのイラスト

そして「良質な睡眠」だとされているのが、ノンレム睡眠とレム睡眠が次のような状態にある睡眠です。 
  1. 睡眠前半に深睡眠 (ノンレム睡眠の中の睡眠段階4の深い睡眠) が確保されること 
  2. ノンレム睡眠とレム睡眠の訪れるサイクルが安定していること 
  3. 睡眠中盤から後半にかけてレム睡眠の量が確保されること 
  4. レム睡眠が覚醒などで途切れないこと 
(出典:厚生労働省の資料等に基づいて作成) 
 
では、このような睡眠が「良質」とされるのはなぜでしょうか? レム睡眠とノンレム睡眠のときにはそれぞれどういうことが起きているのでしょうか。 
 
次回は、ノンレム睡眠とレム睡眠の最中に起きていること、そして睡眠が子どもの成長や発達にどう関わってくるのか?についてお話します。(次回は2022年5月下旬配信予定です) 
桜の花


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原 哲也(はら てつや)

この記事を書いた人

原 哲也(はら てつや)

言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」代表。1966年生まれ、千葉県出身。大学卒業後にカナダの障害者グループホーム勤務、東京の障害者施設職員勤務を経て、29歳から小児障害児リハビリテーション専門職として、長野県の病院や市区町で発達相談や障害児の巡回相談業務に携わる。『発達障害児の家族を幸せにする』を志に、全国を駆け回り、乳幼児期から青年期までの発達障害児と家族の応援をおこなっている
<WAKUWAKUすたじおHP>
http://www.waku-project.com/

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