感覚統合とは、私たちが感じる感覚をスムーズ処理し統合する能力のことを指します。この力がアンバランスだと感覚情報を適切に処理できず不快であったり日常生活に支障をきたしたりします。
今回は、感覚統合について理解を深め、感覚統合を助ける遊びを児童発達支援管理責任者としての立場から総合的にお伝えしていきます。
感覚統合とは
感覚には五感プラス二覚がある
感覚と聞くと、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という5つの感覚はすぐに思い浮かぶと思いますが、人間にはそれ以外にも身体の内側に感じる前庭感覚と固有受容覚という2つの感覚を無意識に感じて生活しています。前庭感覚とは
耳の中にある三半規管等で重力や加速、回転等を感じとり身体のバランスをとることや姿勢の調整に等も行っています。固有受容覚とは
筋肉や関節の中で感じるセンサーを通じて、自分の身体がどのように動いているのか、どのように物を扱えば良いのか、自分の身体を見なくても運動をコントロールすることができることに加え情動の安定にも繋がる感覚です。感覚の統合とは
日常生活の中で無限に感じるたくさんの感覚を状況に合わせて整理し、必要な時に必要な量だけ感覚を取り入れ、適切に使うことができるよう交通整理される状態です。「ほいくisオンライン研修」では、感覚統合と活動への取り入れ方について、作業療法士の視点から解説したセミナーも公開中。
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感覚統合を助けるためにできることは
誰にでも、感覚の凸凹は多少なりとももっていますが、生活に支障をきたすほどのことはありません。例えば、温泉地の硫黄の匂いが臭ければ鼻息を止めるなど、自ら工夫をしながら生きています。また、感覚は生理的現象(眠い、おなかが空いた、トイレに行きたい等)と同レベルといわれていることから、我慢させることは出来ません。このことから、無理に嫌がる感覚を経験させるのではなく、遊びの中で楽しそうだからやってみたいという子どもの意欲に合わせて、経験することができるよう支援していきましょう。
感覚統合の遊び5選
感覚統合を高める遊びをご紹介します。遊びは作業療法士や理学療法士が専門分野となりますが、私の立場から総合的に見ておすすめのものを5つご紹介します。水たまり渡り
雨の翌日や水遊びの後など、園庭に水たまりが出来たら、水たまりの中にタイヤやジョイントマットを浮島の様に浮かべます。子どもたちはその上を歩いて渡り、浮島の不安定さを感じながら、落ちないようにバランスをとることや、そっと島を渡るということが前庭感覚や固有受容覚の遊びになります。いろはに金平糖
2本のゴムを使用します。大人の人数がいるときには、二人がゴムを持ち合い交差等の枠作りを行う。ゴムには、鈴を付けておくことで、自分からは見えない部分が当たった際に、気がつくことが出来ます。
ゴムに当たらないよう意識しながら通り抜けることで、視覚と固有受容覚を合わせた感覚統合の遊びです。
泡あわ遊び
たらい等にたくさんの泡を作っておきます。(色つきの泡もあるとよいです) 見立てやすいように、おままごとのおもちゃもだしておきながら、泡の感触をたのしみます。そっと触れないと泡が崩れてしまうことから先生側は「そーっとね」や「ふわふわしてるね」等の声かけを行うことで、力の調節が難しい子たちは「そーっと」の意味がわかり、触覚のアンバランスさをもっている子たちにフワフワを実体験してもらえます。
この音なーんだ
あらかじめ日常生活にある、様々な音を準備しておきます。(コンビニの入店時の音や、お風呂が沸いたときの音楽、ファーストフード店のポテトの揚がる音など)子どもたちには、よく聞いてねという声をかけて、一つずつ音を流してクイズ形式で答えてもらうという聴覚の遊びです。よく聞くとはどういうことなのかを体験することができます。
ゆらゆらキャッチ
大判タオルの上にうつ伏せで寝ます。寝たままエビぞりの状態で、パン食い競争の要領で紐で結ばれた風船をタッチする遊びです。このとき、敷いてあるタオルは大人が揺らしてアンバランスな状態を作ります。抗重力姿勢(重力に反して姿勢を保つ力) を育て、着席し続けられる力に繋がります。井上さんからアドバイス
過去にこのコラムでもお伝えしていますが、子どもは遊びで発達します。楽しそうと思えないと子どもたちはその活動に意欲的に参加することは難しいです。この「楽しそう」をいかに先生方がデザイン出来るかが、全てのポイントです。感覚、運動面の発達は全ての基礎です。子どもの行動の理由には感覚が関係していることが多くあります。普段おこなわれている保育の中でも、感覚統合遊びはたくさん行われているはずです。この遊びには一体どんな意味があるのかを考えてみるのも良いでしょう。
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