保育士試験とは
大学や短大、専門学校の保育学科を卒業すると同時に取得可能な国家資格である保育士資格。しかし、それ以外に「保育学科以外に通っているけど、保育士資格が欲しい」「今から保育士資格を取得したいけれど…」というニーズもあります。そんな目標を持つ方々が保育士になるための手段として用意されているのが「保育士試験」です。受験を考えている人、迷っている人、もうすでに申し込み済みの人も、今一度概要をチェックしておきましょう。
受験の申し込み方法
保育士試験を受験するには、試験の実施・運営を行う「一般社団法人全国保育士養成協議会」の公式サイトから受験申請を行う必要があります。申請方法は以下の2種類です。
- オンライン申請 ※2023年(令和5年度)の試験からスタート
- 郵送申請
受験申請方法 | オンライン | 郵送 |
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「受験申請の手引き(※)」の請求 (※)受験申請書や払込取扱票等の書類一式が同封されたもの |
不要 | 郵送で請求が必要 (請求から5~10日程度で到着) |
受験申請期間 | 【前期試験】2024年1月10日(水)~2024年1月30日(火) ※オンライン申請は開始日の午前10時~最終日の午後5時 ※郵送による申請は最終日の当日消印有効 【後期試験】詳細が決まり次第公式サイトに掲載 |
|
申請に要する時間 |
最短5分 ※24時間いつでもOK |
1週間~2週間程度 |
顔写真や証明書 | スマホで撮影してアップロード | 郵送 |
受験費用 | ▪12,975円 ※コンビニ決済の場合 ▪13,050円 ※クレジットカード決済の場合 【内訳】 ・受験料 12,700円 ・支払手数料 コンビニ 275円 クレジットカード350円 |
13,853円 【内訳】 ・受験料 12,700円 ・支払手数料 313円 ・手引き請求手数料 370円 ・簡易書留郵送料470円 |
支払い方法 | ・クレジットカード ・コンビニエンスストア |
・郵便局の窓口 ※ATM不可 |
その他にもオンライン申請には以下のようなメリットがあります。
- マイページにて、申請受付状況や受験票発送等の状況が確認できる
- 平成28年以降に受験申請した方は過去合格した科目の免除期間が確認できる
- 試験結果の確認ができる
- 「結果通知書」「合格通知書」のダウンロードができる
>>オンライン受験申請方法/全国保育士養成協議会
一方、郵送で申請する場合は余裕を持った手続きが必要です。筆記試験のだいたい3ヵ月前には受験申請の締め切りがありますので、早めに「受験申請の手引き」を取り寄せて手続きしましょう。
詳細はホームページで確認できます。
>>受験申請方法/全国保育士養成協議会
受験資格と試験科目・試験日程
まずは2024年度(令和6年)の日程と、保育士試験を受けるための資格や出題される科目を見てみましょう。2024年の試験日程と受験の流れ
保育士試験のチャンスは年に2回。4月~6月にかけて行われる前期試験と、10月~12月にかけて行われる後期試験です。それぞれの試験は筆記試験と実技試験のセットとなっていて、筆記試験に合格すると実技試験の受験資格が得られます。筆記試験は全科目に合格することが必要ですが、合格した科目は持ち越しが可能です。1度合格した科目は3年間有効となるため、例えば「最初の年で5科目に合格したら、次の年は不合格だった4科目のみ再受験」ということもできます。
2024年(令和6年)の試験日程は以下の通りとなっています。
【前期試験】
- 筆記試験:4月20日(土)、4月21日(日)
- 実技試験:6月30日(日)
【後期試験】
- 筆記試験:10月19日(土)、10月20日(日)
- 実技試験:12月8日(日)
受験資格
一般社団法人全国保育士養成協議会のホームページには、受験資格の詳細が細かく書かれています。平成3年4月1日から受験資格が「短期大学卒業程度」に引き上げられているため、原則的にはその基準に準じています。しかし、例えば「大学に2年以上在学して62単位以上修得していること」や、「高等専門学校や短期大学の最終学年で卒業が見込まれること」など、さまざまなパターンがあるため条件は細分化されています。
また、保育科以外の高等学校を卒業した場合でも、幼稚園や家庭的保育事業など「児童等の保護または援護」に関する仕事に2年以上かつ2,880時間以上従事した場合は、都道府県知事の認定を受けて受験資格が得られる場合もあります。
自分がどの条件に該当するかなど、詳しくは協議会のホームページで確認してみてください。
>>受験資格/全国保育士養成協議会
筆記試験の科目と合格基準(ボーダーライン)
筆記試験は全部で9科目。そのうち2科目(教育原理と社会的養護)は、両方合格しないと合格判定となりません。筆記試験の科目すべてに合格すると実技試験の受験資格が得られます。- 保育原理(100点満点)
- 教育原理(50点満点)及び社会的養護(50点満点)※2科目ともに合格しないと合格判定にならない
- 子ども家庭福祉(100点満点)
- 社会福祉(100点満点)
- 保育の心理学(100点満点)
- 子どもの保健(100点満点)
- 子どもの食と栄養(100点満点)
- 保育実習理論(100点満点)
筆記科目にある「教育原理」と「社会的養護」は、「毎年必ずどちらかがとてもむずかしい」とも言われており、受験者が苦戦する科目のひとつです。また、「子どもの食と栄養」には、細かいデータなど数字に関する出題がされることもあり、こちらも合格の壁となっているようです。
実技試験の科目と注意点
実技試験は、3科目の中から2科目を選択して受験します。何を選ぶのかが重要な鍵となりますので、それぞれの内容を見てみましょう。- 音楽に関する技術(50点満点) ※ピアノ・アコースティックギター・アコーディオンのいずれかで演奏
- 造形に関する技術(50点満点) ※当日出題されるテーマに沿って絵を描く
- 言語に関する技術(50点満点) ※素話を行う
【音楽に関する技術】
「幼児に歌って聴かせることを想定して、課題曲の両方を弾き歌いする」という試験内容となります。試験案内によると、試験でチェックされるポイントとして、「保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、総合的に豊かな表現ができること」とされています。
2024年(令和6年)の課題曲は前年度から変わり、以下の2曲となります。
- 『夕焼け小焼け』(作詞:中村雨紅 作曲:草川信)
- 『いるかはザンブラコ』(作詞:東龍男 作曲:若松正司)
- ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかで演奏すること。楽譜(紙のみ)の持ち込みは可能 。
- ピアノの伴奏には市販の楽譜を用いるか、添付楽譜のコードネームを参照して編曲したものを用いる。
- ギター、アコーディオンで伴奏する場合には、添付楽譜のコードネームを尊重して演奏すること。
- いずれの楽器とも、前奏・後奏を付けてもよい。歌詞は1番のみとする。移調してもよい。
- ピアノ以外の楽器は持参すること。持参楽器の不具合(弦切れなど)がないよう注意すること。
- ピアノは会場に設置された楽器(グランドピアノ、アップライトピアノ、電子ピアノのいずれか)を使用する。
- ギターはアンプの使用を認めないのでアコースティックギターを用いること。カポタストの使用は可能。
- アコーディオンは独奏用を用いること(合奏用は使用不可)。
- 全体を通して伴奏しないで歌だけを歌った。
- 全体を通して歌を歌わないで伴奏だけを弾いた。
- 歌と同じ単旋律のみを弾きながら歌を歌った。
>>試験本番で使える無料のピアノ楽譜ダウンロードはこちら
【造形に関する技術】
「保育の一場面を絵画で表現する」という試験内容となりますが、こちらは当日に「問題文と条件」が発表されます。場面についてはこれまで、「雨の外遊び(令和5年・前期)」「クレヨン遊び(令和5年・後期)」といったテーマが出題されています。
その他、試験案内に書かれている注意点などをまとめると以下の通り。しっかりと確認して練習をしてみてくださいね。
- 当日示される問題文で設定された一場面を、条件を満たして表現すること。
- 試験時間は45分。
- 当日の持ち物として机上に置けるものは以下の4つ
- 鉛筆またはシャープペンシル(HB~2B)
- 色鉛筆(12~24色程度)
- 消しゴム
- 腕時計
【言語に関する技術】
『3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定し、下記の1~4のお話のうち一つを選択し、子どもが集中して聴けるようなお話を行う』という試験内容となります。課題は「おむすびころりん」の1つだけ前年度から入れ替わったのみで、他の3つは変わっていません。2024年(令和6年)は以下の4つの中から1つ課題を選択します。
- 「ももたろう」(日本の昔話)
- 「おむすびころりん」(日本の昔話)
- 「3びきのこぶた」(イギリスの昔話)
- 「3びきのやぎのがらがらどん」(ノルウェーの昔話)
- 子どもは15人程度が自分の前にいることを想定する。
- 一般的なあらすじを通して、3歳の子どもがお話の世界を楽しめるように、3分にまとめる。
- お話の内容をイメージできるよう、適切な身振り・手振りを加える。
- 絵本などを持つことを想定しない。
- お話をする際は立ってでも座ってでも構わない。
- 題名は開始合図のあと、一番最初に子どもに向けて言うこと。
- 絵本・道具(台本・人形)などの使用は一切禁止。
- 3分間は退出できない。時間は係がタイマーで計る。
- 子どもに見立てた椅子などが前方に用意される。
ほいくisでは、セリフ台本付きの言語表現対策講座の動画を、お話のテーマ別で公開しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
試験会場
筆記試験および実技試験の試験会場は、47都道府県に1か所~複数の会場が設定されます。各会場の概要はホームページで公開されますが、アクセス方法については受験票に記載されますので、そちらを参照して行くようにしましょう。>>試験会場/全国保育士養成協議会
受験科目の免除について
実は、既に持っている資格などで受験科目が免除される場合があります。どんなときに免除されるのか、見てみましょう。幼稚園教諭免許所持者
申請をすれば、「保育の心理学」「教育原理」「実技試験」が免除になります。1種、2種、専修どれも違いはありません。【令和6年度末(2025年3月末)までの特例制度について】
幼稚園教諭免許状(臨時免許を除く)を取得後、対象となる幼稚園等の施設で「実務経験が3年以上かつ4,320時間以上であること」が証明できる場合、「保育の心理学」「教育原理」「実技試験」に加えて「保育実習理論」も免除される制度です。
また、指定保育士養成施設における「学び(単位取得)」を行うことでも、該当する試験科目が免除されます。幼稚園等における実務経験と、指定保育士養成施設における学び(単位取得)の順番は問われません。
詳しくはホームページで確認しましょう。
>>特例制度について(幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例)
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士
申請をすれば、「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」が免除になります。3年以内に合格した科目がある
以前にも保育士試験の受験経験があり、合格した科目がある場合は3年間有効となります。また、対象期間内に対象施設で勤務をした場合、免除期間が最長5年まで延長できる制度もあります。詳しくはホームページで確認してみてください。
>>筆記試験合格科目における合格科目免除期間延長制度について
保育士試験の合格率
受験者にとって気になるのが、保育士試験の合格率。国家資格なので簡単でないことは想像がつきますが、どれくらいなのでしょうか。直近5年間の推移は以下の通りです。実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成30年度 | 68,388 | 13,500 | 19.7% |
令和元年度 | 77,076 | 18,330 | 23.8% |
令和2年度 | 44,914 | 10,890 | 24.2% |
令和3年度 | 83,175 | 16,600 | 20.0% |
令和4年度 | 79,378 | 23,758 | 29.9% |
また、「試験日程と受験の流れ」でお伝えした通り、筆記試験は3年間の合格科目の持ち越しが可能です。2年や3年かけてようやく合格という受験者も含まれているため、実際には受験した1回の試験で合格する「一発合格」の割合はもっと少ないと考えていいでしょう。一説には、5%程度とも言われています。
受験のチャンスが増える「地域限定保育士試験」
保育士試験は1年で2回チャンスがあると言いましたが、地域によってはもう1回受験機会が増えることも。それが、地域限定保育士試験です。地域限定保育士とは?
地域限定保育士試験とは、合格した地域でのみ働くことができる保育士資格です。例えば、神奈川県で地域限定保育士試験に合格した場合は、神奈川県でのみ保育士として働くことができます。「それだと引越したら大変…」と不安になるかもしれませんが、安心してください。地域が限定されるのは資格取得後3年間で、そのあとは全国で保育士として働くことができるようになります。
実技のみ保育士試験受験もOK
地域限定保育士試験に合格したけれどその後の実技試験を受験せず、次の年の通常保育士試験で実技試験に合格した場合は、全国で働くことができるようになります。その年中に資格を取得することはできませんが、どうしても「通常の保育士資格が欲しい」という場合は、このような受験の仕方も視野に入れておくといいかもしれません。通常試験と並行して受験可能
地域限定保育士試験で合格した科目は、通常の保育士試験でも免除可能になります。その場合、最後に合格した試験の種類によって、付与される資格が「通常」「地域限定」に決められます。つまり、地域限定保育士試験を含めればチャンスは3回ということになりますね。毎年必ずあるものではない
注意したいのは、実施は毎年必ずあるものではなく、また実施される地域も限定されているということです。現時点では、2024年(令和6年)の前期試験での地域限定保育士試験の実施予定はありません。後期試験での実施はまだ決定しておらず、確定したら公式サイトに掲載される予定です。
第1回目の地域限定保育士試験は2015年(平成27年)に神奈川県・大阪府・沖縄県・千葉県(成田市)の4自治体で実施されました。2016年(平成28年)は大阪府・宮城県(仙台市)、2017(平成29年)~2021年(令和3年)は大阪府・神奈川県、2022年(令和4年)は大阪府・神奈川県・沖縄県と、まだまだ数が少ない状況です。
また現在、国の方では、これまで一部地域(特区)で限定的に実施されてきた地域限定保育士試験制度を全国展開に変更することが検討されています。これからの動向が注目されますね。
保育士試験に挑戦しよう!
保育士試験は、合格率が毎年20%前後と簡単ではありません。しかし、しっかり勉強を積み重ねて臨めば合格は可能。「保育士になりたい!」という方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。参考:一般社団法人全国保育士養成協議会ホームページ
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