今回のテーマ「眠そうな子」睡眠障害のサポート方法
前回お話した「子どもの睡眠障害の原因」を前提に、どう対応するか具体的に考えていきます。 まずは、今回のケースの振り返りです。
美空ちゃんのケース 4歳の美空ちゃんは、登園時のお母さんとのお別れがとても大変で、30分は大泣きをします。30分を過ぎるとおままごとなどで遊び始めるのですが、しばらくすると、うとうとすることがよくあります。大好きな給食の時間になると目をさましますが、食事中もうとうとし始めることも。保育園にいる間はとにかく眠そうです。 |
担任の先生はどう対応する?

そこで担任の先生は、お母さんへ協力をお願いしました。
【保護者】睡眠の記録をつけてもらう

2週間の間、入眠時間・起床時間・夜中に目が覚めるかを記録してもらいました。
すると、次のようなことがわかりました。
① 入眠時間
毎日、午後9時半に布団に入るが、そこから1時間くらいは起きている。実際寝つくのは午後10時半~午後11時が多い②起床時間
平日は午前7時、登園しない週末は午前8時30分頃が多い③睡眠時間
8時間~8時間半程度。夜中も時々起きる。4歳児としては就寝時間が遅く、睡眠時間も明らかに短いことがわかりました(4歳の理想的睡眠時間は昼寝を含めて11時間30分)です。
【保育者】早寝早起きが困難な原因を考える

美空ちゃんの睡眠記録・ヒアリング結果
保護者の話と睡眠記録表からは、次のようなことがわかりました。● 休日は遅くまで寝ているので起床時間は一定していない 。
● 入浴時間は午後8時。父親と入浴する。
● 美空ちゃんには中学生の姉がいて年の離れた美空ちゃんのことをとてもかわいがっており、8時半ころに美空ちゃんが風呂からあがると美空ちゃんをくすぐってじゃれつき遊びをする。30分くらい続くことが多い。
● 午後9時になると、お母さんが遊びをやめさせて美空ちゃんを寝室に連れて行くが、美空ちゃんは姉が気になって仕方がない。
● 姉は美空ちゃんと遊んだ後は午後10時過ぎまでリビングでテレビや動画を見る。姉の声やテレビの音が聞こえるので、美空ちゃんはそれが気になる。
そして下の「睡眠障害の基準」リストを参考にして、睡眠障害の原因を検討することにしました。
- 起床時間が一定しない
- 太陽の光を浴びる日中の活動(元気に身体を動かす)が少ない
- 日中のストレス
- 就寝直前の入浴による体温上昇
- 入眠前の興奮状態(スマホ、DVD、遊び)
- 他の家族と一緒に深夜まで起きている
- 疾患等
【保育者】担任の先生が提案したこと
そこで、担任の先生は次のような対応を提案することにしました。① 朝の起床時間は週末も平日と同じ6時半にする
② 夕方は公園で遊ぶなどしてできるだけ身体を動かす
③ 姉と美空ちゃんで夕食前に入浴する
④ 姉に夕食後、リビングでテレビを見るのは午後9時までにしてもらう

先生の提案を聞いて、最初は戸惑った様子の保護者でしたが、「私もいつかどうにかしなくてはいけないと思っていたので、やってみます」と言ってくれました。
【保護者】家での取り組み

するとお父さんは、美空ちゃんとの触れ合いの時間である入浴タイムがなくなることに、姉は夕食前の入浴と9時までしかテレビを見られないことに、はじめはとても不満げでした。
しかし、お母さんは美空ちゃんの園での様子を伝え、美空ちゃんが園で楽しく過ごすために協力してほしいと話しました。
そして家族で話し合って、
- 休日は父親が夕食前に美空ちゃんと入浴すること 。
- 姉は9時になったらリビングでテレビを見るのはやめて、その後は動画などを見るなら自室でパソコンでイヤホンをして見ること 。
姉ははじめは夕食前の入浴を嫌がっていましたが、始めてみると、その時間が美空ちゃんとの楽しい時間になったので、やがて不満を言うこともなくなりました。
お母さんにとっても、休日も6時半に起きることは正直つらいことではありましたが、そのうち慣れてきました。またお母さんは、時間的なやりくりをして夕方、美空ちゃんと公園で思いっきり身体を動かす時間を作るようにしました。
生活リズムを変えてからの変化

10日ほどすると、美空ちゃんは午後9時半には眠り、午前6時半には起きるという睡眠リズムを作ることができました。
そして登園時の不機嫌も、日中の活動時に眠くなることもなくなり、ご機嫌で園生活を送ることができるようになりました。
睡眠障害のサポートで大事なこと

もちろん、家族が協力的ではなかったり、協力したくても難しかったり…という家庭もあるでしょう。その場合は、小さなことでいいので何かできることを探しましょう。
夕食の時間を遅くして夕食前にお母さんと入浴する、子どもの寝室を移動する、音や光を少しでも遮断できるよう衝立を置く、兄弟が見たい深夜のテレビ番組は録画する…。
睡眠リズムの確立は大切であることを伝えながら、それぞれの家庭の事情の中で「その家庭でできること」が何かないか、それを探して家族に地道に働きかけを続けることが必要なのではないかと思います。
早寝早起きの睡眠リズムを確立することは、子どもが生き生きと生活するための土台となる大切なことがらです。是非、関心をもって取り組んでいただきたいと思います。
次回のテーマ
次回からは「赤ちゃんにこだわりがある5歳の自閉スペクトラム症の潤太郎くん」について考えます。道を歩いていても、保育園ですれ違ったときも、赤ちゃんを見ると頬を触りたがります。頭を叩くこともあります。人への関心の現れだと思っても、「危ない」と感じることもあり、どういう対応をすればいいのか先生は悩んでいます。
皆さんはどのように考え、どう対応されるでしょうか? 是非次回もご覧いただけたら嬉しいです。(次回は2022年8月下旬公開予定です)
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