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<後編>「いつも眠そうな子」に保育者ができるサポートとは?【発達支援/保育者の関わり講座】

言語聴覚士として長年児童発達支援に携わってきた原 哲也さんのコラムです。保育士であれば知っておきたい「気になる子」への関わり方について解説していきます。>>連載の記事一覧はこちら

今回のテーマ「眠そうな子」睡眠障害のサポート方法 

前回お話した「子どもの睡眠障害の原因」を前提に、どう対応するか具体的に考えていきます。  まずは、今回のケースの振り返りです。 
美空ちゃんのケース 
4歳の美空ちゃんは、登園時のお母さんとのお別れがとても大変で、30分は大泣きをします。30分を過ぎるとおままごとなどで遊び始めるのですが、しばらくすると、うとうとすることがよくあります。大好きな給食の時間になると目をさましますが、食事中もうとうとし始めることも。保育園にいる間はとにかく眠そうです。 

担任の先生はどう対応する? 

 
悩む保育士のイラスト
美空ちゃんの担任の先生は、美空ちゃんのお母さんに園での様子を伝え「睡眠に問題があるのではないか?」と考えていることをお話ししました。するとお母さんも美空ちゃんが「夜寝ない、朝も寝起きが悪い」ことを心配していることがわかりました。 
 
そこで担任の先生は、お母さんへ協力をお願いしました。 

【保護者】睡眠の記録をつけてもらう  

ノートと鉛筆
担任の先生は、前回ご紹介した「日本眠育推進協議会」の睡眠記録表https://www.min-iku-suishin.org/miniku_log/)をプリントアウトして、保護者に渡しました。 
 
2週間の間、入眠時間・起床時間・夜中に目が覚めるかを記録してもらいました。 
すると、次のようなことがわかりました。 

① 入眠時間  

毎日、午後9時半に布団に入るが、そこから1時間くらいは起きている。実際寝つくのは午後10時半~午後11時が多い 

②起床時間  

平日は午前7時、登園しない週末は午前8時30分頃が多い 

③睡眠時間 

8時間~8時間半程度。夜中も時々起きる。 
 
4歳児としては就寝時間が遅く、睡眠時間も明らかに短いことがわかりました(4歳の理想的睡眠時間は昼寝を含めて11時間30分)です。 

【保育者】早寝早起きが困難な原因を考える 

悩む保育士と閃く保育士のイラスト
次に、先生は保護者から“美空ちゃんの家庭の毎日の様子”をヒアリングしました。 

美空ちゃんの睡眠記録・ヒアリング結果 

保護者の話と睡眠記録表からは、次のようなことがわかりました。 

● 休日は遅くまで寝ているので起床時間は一定していない 。

● 入浴時間は午後8時。父親と入浴する。 

● 美空ちゃんには中学生の姉がいて年の離れた美空ちゃんのことをとてもかわいがっており、8時半ころに美空ちゃんが風呂からあがると美空ちゃんをくすぐってじゃれつき遊びをする。30分くらい続くことが多い。 

● 午後9時になると、お母さんが遊びをやめさせて美空ちゃんを寝室に連れて行くが、美空ちゃんは姉が気になって仕方がない。 

● 姉は美空ちゃんと遊んだ後は午後10時過ぎまでリビングでテレビや動画を見る。姉の声やテレビの音が聞こえるので、美空ちゃんはそれが気になる。 
 
そして下の「睡眠障害の基準」リストを参考にして、睡眠障害の原因を検討することにしました。 
  1. 起床時間が一定しない 
  2. 太陽の光を浴びる日中の活動(元気に身体を動かす)が少ない 
  3. 日中のストレス 
  4. 就寝直前の入浴による体温上昇 
  5. 入眠前の興奮状態(スマホ、DVD、遊び) 
  6. 他の家族と一緒に深夜まで起きている 
  7. 疾患等 
 →担任の先生は「睡眠障害の基準」リストの1・4・5・6の項目に睡眠障害の原因があるのではないかと考えました。 
 

【保育者】担任の先生が提案したこと 

そこで、担任の先生は次のような対応を提案することにしました。 
 
① 朝の起床時間は週末も平日と同じ6時半にする 
② 夕方は公園で遊ぶなどしてできるだけ身体を動かす 
③ 姉と美空ちゃんで夕食前に入浴する 
④ 姉に夕食後、リビングでテレビを見るのは午後9時までにしてもらう
青空と原っぱの景色
先生はお母さんに、園での美空ちゃんの日中の不機嫌で眠そうな様子をもう一度伝え、美空ちゃんがご機嫌で園生活を送るには早寝早起きの睡眠リズム確立が必要であること、そのための取り組みをお願いしたいことを伝えました。 
 
先生の提案を聞いて、最初は戸惑った様子の保護者でしたが、「私もいつかどうにかしなくてはいけないと思っていたので、やってみます」と言ってくれました。 

【保護者】家での取り組み 

閃く女性のイラスト美空ちゃんのお母さんは、家に帰ってからお父さん・お姉ちゃんに先生からの提案を話したそうです。 

するとお父さんは、美空ちゃんとの触れ合いの時間である入浴タイムがなくなることに、姉は夕食前の入浴と9時までしかテレビを見られないことに、はじめはとても不満げでした。 

しかし、お母さんは美空ちゃんの園での様子を伝え、美空ちゃんが園で楽しく過ごすために協力してほしいと話しました。 

そして家族で話し合って、 
  • 休日は父親が夕食前に美空ちゃんと入浴すること 。
  • 姉は9時になったらリビングでテレビを見るのはやめて、その後は動画などを見るなら自室でパソコンでイヤホンをして見ること 。
これをルールにしました。 
 
姉ははじめは夕食前の入浴を嫌がっていましたが、始めてみると、その時間が美空ちゃんとの楽しい時間になったので、やがて不満を言うこともなくなりました。 
 
お母さんにとっても、休日も6時半に起きることは正直つらいことではありましたが、そのうち慣れてきました。またお母さんは、時間的なやりくりをして夕方、美空ちゃんと公園で思いっきり身体を動かす時間を作るようにしました。 

生活リズムを変えてからの変化 

時計
このように生活を変えてから、午後9時前になると、テレビを見て笑う姉の声も耳に入らなくなるくらい、美空ちゃんは眠くなるようになりました。 
 
10日ほどすると、美空ちゃんは午後9時半には眠り、午前6時半には起きるという睡眠リズムを作ることができました。 
 
そして登園時の不機嫌も、日中の活動時に眠くなることもなくなり、ご機嫌で園生活を送ることができるようになりました。 

睡眠障害のサポートで大事なこと 

扉から顔をのぞかせる男女
美空ちゃんのケースでは、お母さん、父親、そして、姉の協力で、美空ちゃんは睡眠障害の状態を脱し、早寝早起きの睡眠リズムを作ることができました。 
 
もちろん、家族が協力的ではなかったり、協力したくても難しかったり…という家庭もあるでしょう。その場合は、小さなことでいいので何かできることを探しましょう。
 
夕食の時間を遅くして夕食前にお母さんと入浴する、子どもの寝室を移動する、音や光を少しでも遮断できるよう衝立を置く、兄弟が見たい深夜のテレビ番組は録画する…。 
 
睡眠リズムの確立は大切であることを伝えながら、それぞれの家庭の事情の中で「その家庭でできること」が何かないか、それを探して家族に地道に働きかけを続けることが必要なのではないかと思います。 

早寝早起きの睡眠リズムを確立することは、子どもが生き生きと生活するための土台となる大切なことがらです。是非、関心をもって取り組んでいただきたいと思います。 

次回のテーマ 

次回からは「赤ちゃんにこだわりがある5歳の自閉スペクトラム症の潤太郎くん」について考えます。 

道を歩いていても、保育園ですれ違ったときも、赤ちゃんを見ると頬を触りたがります。頭を叩くこともあります。人への関心の現れだと思っても、「危ない」と感じることもあり、どういう対応をすればいいのか先生は悩んでいます。 
 
皆さんはどのように考え、どう対応されるでしょうか? 是非次回もご覧いただけたら嬉しいです。(次回は2022年8月下旬公開予定です) 

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原 哲也(はら てつや)

この記事を書いた人

原 哲也(はら てつや)

言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」代表。1966年生まれ、千葉県出身。大学卒業後にカナダの障害者グループホーム勤務、東京の障害者施設職員勤務を経て、29歳から小児障害児リハビリテーション専門職として、長野県の病院や市区町で発達相談や障害児の巡回相談業務に携わる。『発達障害児の家族を幸せにする』を志に、全国を駆け回り、乳幼児期から青年期までの発達障害児と家族の応援をおこなっている
<WAKUWAKUすたじおHP>
http://www.waku-project.com/

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